潮汐に伴う流れを潮流といい,黒潮などの海流と区別される。潮汐により水位が時間とともに変化するのにつれて,潮流も変化する。水位の記録を調和解析して,半日,1日,およびそれより長い周期をもつ多くの分潮に分けるように,潮流記録についても,その東西成分,南北成分などを調和解析して,多くの分潮流に分ける。各分潮の東西および南北成分を合成した流速ベクトルは,時間とともに変化し,その基点を1点にそろえたときにその先端が描く曲線,すなわちホドグラフは楕円となる。これを潮流楕円という。外洋深海では一般にこれは細長くなり,直線に近づき,流れがある一定方向上で変化することを示す。各点での各分潮流は,深さによってはあまり変わらない。しかし内部潮汐が起こっている場合には,それによる流れも加わり,各分潮流は深さに対し複雑に変化する。各地の湾に設けられた定置網漁場などで,上層・下層間で反対向きの潮流が生じ網に損傷を与えたりする二重潮は,内部潮汐による。内部潮汐は外洋でも起こり,それに伴う潮流は海水の混合に大きな役割を果たしているとみられる。潮汐は河口から河床に沿って河川をはい上がる(感潮河川)。この場合,上層は河川水の流れであり,下層は海水の流れであって,海水がくさび状に遡上する(塩水くさび)。海峡や内海の潮流の発生には,海峡や内海の出入口の両側に位置する外洋の潮汐に伴う水位差が大きな役割を果たすことが多い。その潮流の速さが10ノット(毎秒約5m)にも達する所がある。潮流の速い所として,日本では,関門海峡,鳴門海峡,来島海峡などがある。
潮流は潮汐に伴うものであり,潮汐が規則的な現象であり,その予報ができるように,潮流も割合に規則的であって,その予報ができる。ただし,潮流は潮位に比べ,その場所およびその周辺の陸岸や海底の地形および内部潮汐,慣性流などの影響をより大きく受けるので,地理的にも時間的にもより不規則に変化する。したがって予報の精度は落ちる。
→潮汐
執筆者:寺本 俊彦
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地球と月・太陽の間の引力と遠心力によって海水に起潮力が働き、海水は水平方向に引っ張られて動く。この動きが潮流である。海水はある場所には集まって海面を高め(上げ潮)、別の場所では流れ去って海面を下げる(下げ潮)。海水が起潮力によって上に引っ張られて海面を高めるのではない。海面の高さの変化が潮汐(ちょうせき)であり、それを引き起こす海水の水平方向の動きが潮流だから、潮流も潮汐ももとは同じ現象である。潮流の速さは、外洋では毎秒10センチメートル程度であるが、陸の近くでは地形の影響を受けて毎秒1メートル以上になる所もある。海流と違って、潮流は速さも向きも決まった周期で変わる。また、基本としては、海面から海底まで同じ速さで同じ向きに流れる。
[高野健三]
字通「潮」の項目を見る。
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