環境の保全について、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者および国民の責務を明らかにするとともに、環境保全に関する施策の基本となる事項を定めるため1993年11月19日に公布、施行された法律(同法の施行によって公害対策基本法は廃止された)。平成5年法律91号。地球環境保全を含めて、わが国の環境政策の基本的方向を示す新たな基本法である。
同法は、まず、基本理念として、現在および将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢(けいたく)を享受できるようにすること(3条)、環境への負荷の少ない持続的発展の可能な社会が構築されることを旨とすること(4条)、および国際的協調の下に地球環境保全を積極的に推進すること(5条)を掲げ、ついで、国の責務、地方公共団体の責務、事業者の責務および国民の責務を規定(6条から9条)したのちに、環境保全のための基本的施策として次のような施策を定めるべきものとした。
すなわち、第一は、環境基本計画である(15条)。これは、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画であって、閣議決定によって決められる。同計画は1994年(平成6)に策定された。
第二は、国の施策にあたっての環境配慮(19条)および環境影響評価制度(環境アセスメント)である(20条)。環境アセスメント制度は、1997年6月に法制化され、99年6月に施行された。ただし、同法によるアセスメント制度は事業アセスメントにとどまっており、計画アセスメントあるいは戦略的アセスメント制度の法制化(19条に基礎づけられる)が次の課題となっている。
第三は、環境保全上の支障を防止するための経済的措置(環境税などの負担や補助金などの経済的支援)である(22条)が、経済的支援にはいろいろあるものの、経済的負担をかけることによって環境に大きな負荷をもたらす行為を減らしていこうとする環境税のほうは、いまだ導入の見込みがたっていない。このほか、同法は公害対策に関する施策については、公害対策基本法で定められた施策(環境基準、公害防止計画、公害紛争の処理および被害の救済など)を受け継いでいる。
[淡路剛久]
『増原義剛著『図でみる環境基本法』(1994・中央法規出版)』▽『環境庁企画調整局編著『環境基本法の解説』(1994・ぎょうせい)』▽『地球環境問題懇談会編『環境基本法ってなあに――なくせ公害・守ろう地球環境!』(1993・合同出版)』▽『水俣病被害者・弁護団全国連絡会議編『水俣病裁判全史』第1巻総論編、第2巻責任編(1998、99・日本評論社)』
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1992年の地球サミット開催を受け,地球環境の保全を確保するとともに,国民の健康と文化的な生活の確保を目的として,1993年に施行された法律である.条文は第1章から第3章および附則からなり,全46条からなる.第1章では,基本理念とともに,国および地方公共団体,事業所および国民の責務を定め,第2章において,環境の保全に関する基本的施策が定められている.さらに第3章において,環境審議会などについて定められている.この環境基本法の施行により,公害対策と自然保護対策が一本化されるとともに,地球温暖化やオゾン層の破壊,海洋の汚染,野生生物の種の減少など,地球規模の環境に影響を及ぼす事態にかかわる環境の保全についても定められた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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