産業競争力強化法(読み)サンギョウキョウソウリョクキョウカホウ

デジタル大辞泉 「産業競争力強化法」の意味・読み・例文・類語

さんぎょうきょうそうりょくきょうか‐ほう〔サンゲフキヤウサウリヨクキヤウクワハフ〕【産業競争力強化法】

低迷が長引く日本の産業を持続的発展軌道に乗せるため、競争力の強化に関する施策を総合的かつ一体的に進める目的で定められた法律。平成25年(2013)12月成立。
[補説]第二次安倍内閣が掲げるアベノミクスで「第3の矢」とされる日本再興戦略を実行するためのもので、企業単位での特例的な規制緩和や、ベンチャー投資・事業再編・先端設備投資等の促進を図るための制度創設などが盛り込まれている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「産業競争力強化法」の意味・わかりやすい解説

産業競争力強化法
さんぎょうきょうそうりょくきょうかほう

政府がその時々の重点経済政策を総合的、一体的に進めるための法律。平成25年法律第98号。第二次安倍晋三(あべしんぞう)政権の発足以降、産業再生法を受け継ぐ法律として2013年(平成25)に成立、2014年施行。安倍政権下では成長戦略「アベノミクス」を具体化するため、成長を妨げているとされる三つの「過」(過小投資、過当競争、過剰規制)を解消し、設備投資の活性化、産業の新陳代謝、規制緩和を進める施策を実施。菅義偉(すがよしひで)政権下では、脱炭素化(カーボン・ニュートラル)とデジタル化のための諸政策を導入したほか、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行拡大に対応したオンラインのみでの株主総会の開催を容認した。低迷が長引く日本経済を持続的な成長軌道にのせるため、競争力強化政策を総合的、一体的に進めるねらいがある。

 2018年(平成30)と2021年(令和3)に改正されており、同法の重点政策がアベノミクスの集中実施期(2014~2018)、修正期(2018~2021)、菅政権期(2021)で変遷している。当初の集中実施期には、設備投資の活性化策として、官民ファンド産業革新機構(現、産業革新投資機構)を通じた投資を拡大、新規設備投資の最大10%を法人納税額から控除する仕組みも導入した。産業の新陳代謝では、生産過剰の業界を調査・公表し、税優遇で企業再編を促した。規制緩和では、法改正を待たずに規制免除される「企業実証特例制度」や、新事業が規制に抵触するかどうかを事前確認できる「グレーゾーン解消制度」などを導入した。修正期には、官民ファンドの産業革新機構を産業革新投資機構に改組し、乱立した官民ファンドの集約の受け皿機関にするとともに、イノベーションを支える次世代産業の創出・育成に重点投資する仕組みを整えた。手元資金に余裕のない新興企業が大型買収をしやすくする自社株対価の手法や、資本関係のない別会社へ特定事業を円滑にスピンオフ(分離・独立)する手法も、会社法の特例措置として導入した。菅政権期では、燃料電池など脱炭素化につながる設備投資額の最大10%、デジタル化投資の最大5%を法人税額から控除する優遇策を導入。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で業績が悪化した企業対策として、税務上の赤字を翌期以降の黒字と相殺する繰越欠損金控除制度について、控除上限を所得金額の100%へ引き上げた。

[矢野 武 2021年11月17日]

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