産業革新機構(読み)サンギョウカクシンキコウ

デジタル大辞泉 「産業革新機構」の意味・読み・例文・類語

さんぎょうかくしん‐きこう〔サンゲフカクシン‐〕【産業革新機構】

大学企業が保有する革新的な技術資金を供給して実用化を支援し、日本経済の持続的な成長を促進するため、官民共同出資により設立された投資ファンド株式会社産業活力再生法に基づいて15年間の時限組織として平成21年(2009)設立。平成30年(2018)施行の改正産業競争力強化法により設置期限が延長され、産業革新投資機構改称INCJ(Innovation Network Corporation of Japan)。

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共同通信ニュース用語解説 「産業革新機構」の解説

産業革新機構

次世代産業の育成のため、2009年7月に設置された官民ファンド。業界再編やベンチャー支援を担う。政府のほかトヨタ自動車など大手企業も出資し、約2兆円の投資能力を持つ。これまで半導体大手ルネサスエレクトロニクスや液晶大手ジャパンディスプレイなど124件で計1兆398億円の出資を決めた。東芝の経営問題では半導体子会社への将来の出資が固まっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「産業革新機構」の意味・わかりやすい解説

産業革新機構
さんぎょうかくしんきこう

公的資金を使って民間企業を支援する官民ファンド。2009年(平成21)7月から国内産業の再編、先端技術の事業化、企業の海外展開などを支援したが、2018年秋に改組され、新たな投融資を停止。産業革新投資機構の傘下に入り、既存の投融資の管理・回収業務にあたる。

 リーマン・ショック後にリスク分野へ投資マネーが回らない状況を改善するため、産業再生法(正式名称「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」平成11年法律第131号)に基づいて発足。2013年に根拠法が産業競争力強化法に変わった。英語名はInnovation Network Corporation of Japan、略称はINCJ。本社は東京都千代田区丸の内。存続期間15年の時限措置つき株式会社であった。2018年3月末時点で資本金は3000億1000万円。政府が9割以上を出資し、残りをトヨタ自動車や日立製作所など民間企業26社・2個人が出資。最大で約2兆円の投資能力があり、日本初の知的財産ファンドを設立したほか、半導体大手ルネサスエレクトロニクスへの共同出資、日立製作所・東芝・ソニーの液晶パネル事業を分離・統合したジャパンディスプレイ(JDI)への出資、洋上風力発電やアルツハイマー治療薬ベンチャーへの出資、オーストラリアなどの水事業会社買収など、2017年末までに349件、計1兆0479億円を投融資した。会計検査院の投資損益調査(2017年3月末)では、投資回収額と保有株評価額の合計が投融資額を上回り、約1兆2483億円の利益をあげている。ただルネサスエレクトロニクスの含み益が大きく、企業救済・再編への投資が過半を占め、ユニコーン(企業価値10億ドル以上)とよばれる大型ベンチャー企業向け投資は不足している。産業の新陳代謝を遅らせ、民業を圧迫しているとの批判もあり、イノベーションに集中投資する産業革新投資機構に改組することになった。

[矢野 武 2018年12月13日]

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知恵蔵 「産業革新機構」の解説

産業革新機構

先端技術の事業化や国内企業の再編などを、公的資金を使って支援する官民出資の投資ファンド。「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(産活法)」に基づき、2009年、15年の時限組織として設立された(13年、根拠法を産業競争力強化法に変更)。14年3月末時点での資本金は3000億1000万円で、政府が2860億円、民間企業(26社、2個人)が140億1000万円を出資している。加えて、最大1兆8000億円を政府保証で借り入れできるため、約2兆1000億円の投資能力がある。英語名はInnovation Network Corporation of Japanで、INCJと略す。
リーマン・ショック後に景気が低迷し、先端技術分野などへの資金が回らなくなったことから、将来性のある産業を育成しようと設立された。初代社長には、元あおぞら銀行会長の能見公一(のうみきみかず)が就任、15年からは、元モバイル・インターネットキャピタル社長で、産業革新機構の専務執行役員だった勝又幹英(かつまたみきひで)が社長を務めている。投資対象は、(1)知的財産ファンド、(2)ベンチャー企業、(3)大企業などの事業切り離し、と幅広い。投資先は、最終的に、機構内の産業革新委員会が評価し、投資を決定する。
17年3月までに、114件(うちベンチャー投資は89件)に9846億円を投じた。日立製作所や東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を分離・統合したジャパンディスプレイ(JDI)への投資や、格安航空ピーチ・アビエーション株の一部売却などでは利益を得た。だが、ベンチャー投資の中には、損失が発生したケースもある。11年に設立し、17年6月に売却した海外向け映画の企画・開発会社、オールニッポン・エンターテインメントワークスは出資した計22億円のうち、ほぼ全額が損失となった。

(南 文枝 ライター/2017年)

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