神祭りにおいて、神に供えたものと同様の御膳(おぜん)(斎食(さいしょく))、あるいは、神に供えた神酒(みき)や神饌(しんせん)のお下がりをちょうだいする行事をいう。一般には神祭りの最後に行われることから、これは神祭りに仕えるために、斎戒(さいかい)して清浄なる状態になったのを、祭りが終わって平常に戻ること、すなわち解斎(げさい)と説かれるが、もともとは祭りのなかで斎食を頂くことであった。宮中の新嘗(にいなめ)祭では、祭儀の中心において、神々との共食を直会と称し、京都の賀茂別雷(かもわけいかずち)(上賀茂)神社の御阿礼(みあれ)神事(神迎えの祭祀(さいし))では、祭場にて、神迎えに先だち、神酒と「掴(つか)みの御料(ごりょう)」(混ぜご飯のようなもの)を頂くことを直会と称しているなど、本来の直会の形式が今日もなお継承されている。直会を解斎と説いたのは本居宣長(もとおりのりなが)である。すなわち、「奈保理阿比(なほりあひ)の切(つづま)れる也(なり)、直(なほ)るとは、斎(ものいみ)をゆるべて、平常(つね)に復(かへ)る意也」(『続紀歴朝詔詞解(しょっきれきちょうしょうしかい)』)と。以来、直会と解斎とが混同されてきたのである。
[沼部春友]
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…相饗(あいにえ)ともいう。嘗はなめる,ねぶる,味わうの意で,《日本書紀》などの新嘗(にいなめ)や大嘗祭の記事ではナフライとよまれており,転じて直会(なおらい)となる。したがって相嘗は直会と同じ意であり,神祭にさいして,神に神饌をささげ,それを司祭者・参加者がいただく神人共食の儀礼である。…
…共食には神と人との共食,人と人との共食がある。神と人との共食は,神に捧げた御食(みけ)(神饌)そのもの,もしくは同じものを調製し,祭りの司祭者・氏子が神前で相嘗(あいなめ)すなわち直会(なおらい)をする。神と人とが同じ食物を味わうことによって,両者の親密を強め,生活安泰の保証を得ようとするものである。…
…宗教行事において,神前にささげた食物や神酒を行事に参加した者どうしで共同飲食をして,神人共食をすることにより,神とのコミュニケーションをはかることも,原始宗教ではよくおこなわれた。日本の祭りにおける直会(なおらい)はその例であるし,カトリックのミサにおいてキリストの肉を象徴するパンと,血を象徴するブドウ酒がもちいられるのも,人類の罪をあがなうための犠牲獣にキリストをなぞらえたものである。 精神状態に強く作用するアルコール性飲料は,宗教行事と深いかかわりをもっている。…
…人々は神に対する願いを祝詞(のりと)や歌などで伝え,神は託宣やさまざまな卜占によって神意を示す。その後,神々と人々とがともに酒を飲み,御饌を食べる直会(なおらい)によって,神と人とのつながりをたしかめて,神々が祭りの場を去ると,禁忌が解かれて祭りは終わる。祭りの多くは農耕儀礼と結びついており,年頭の豊作祈願,春の農耕開始,夏の病害虫駆除,秋の収穫感謝の四つの祭りが最も主要なものであった。…
※「直会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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