私的整理(読み)シテキセイリ

デジタル大辞泉 「私的整理」の意味・読み・例文・類語

してき‐せいり【私的整理】

破産法民事再生法会社更生法などの法的手続きによらずに、債権者債務者合意によって債権債務処理する手続き。裁判所は介在せず、弁護士司法書士などを通じて交渉する。法人の場合、事業継続を図る再建型の手続きと会社を解体する清算型の手続きがある。任意整理。→法的整理

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「私的整理」の解説

私的整理

過大な債務を負った企業が裁判所を通さず、金融機関と直接交渉して債務の減免や再生計画を決める手続き。不採算事業からの撤退などを通じ会社再建の見込みがある場合に実施される。民事再生法や会社更生法といった法的整理と比べて、信用力の低下が抑えられ、迅速で柔軟な処理ができるのが特長。一方、複数の債権者間の公平性確保や、手続きの透明性課題となる。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「私的整理」の意味・わかりやすい解説

私的整理
してきせいり

裁判所などの司法の関与なしに、債権者と債務者の自主的話し合いで負債や財産を整理する手続き。会社更生法、民事再生法、破産法などに従って処理する法的整理と対をなす用語である。内整理(ないせいり)、任意整理ともよばれる。債務者が個人の場合は生活再建を目ざすが、法人の場合は事業継続を目ざす再建型と法人を解体する清算型に分かれる。一般に私的整理は法的整理に比べ迅速、柔軟、低コストで手続きを進めることができ、「倒産」というレッテルを貼られずにすむ利点もある。しかし裁判所などが関与しないため、手続きが不透明となり、金融機関など利害関係者にとって不公平な処理策ができた場合、処理の障害となるおそれもある。このため学識経験者らで構成する「私的整理に関するガイドライン研究会」は2001年(平成13)、法人向け私的整理の雛型(ひながた)となる「私的整理指針(ガイドライン)」を公表した。法人が債権放棄を受けて再建を目ざす条件として、原則「3年以内の実質債務超過解消や経常利益の黒字化」「経営者の退任」などをあげた。この指針に法的拘束力はないが、その後、同指針に沿った企業の私的整理が増えている。

 2011年の東日本大震災後、住宅ローンなどを抱えた被災者がさらに住宅建設のために借金する二重ローンが大きな社会問題となった。このため政府・民主党は私的整理を使った借金削減で個人負担を軽減する対策を打ち出した。全国銀行協会の研究会が同年7月に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」を公表し、これに沿って被災者の負担軽減の取り組みが進められている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「私的整理」の意味・わかりやすい解説

私的整理 (してきせいり)

裁判所手続によらず関係人の話合いによって倒産処理を行うこと。内整理(ないせいり),任意整理ともいう。実際には,破産,和議,会社更生等の裁判所手続によるよりも私的整理による倒産処理が圧倒的多数を占める。成功すれば安価・迅速の点で優れているが,悪質な整理屋が介入する危険も大きい。私的整理について特別の立法はなく,民法など一般私法の規律に服する。倒産企業を清算する場合と再建を目ざす場合があるが,いずれにせよ整理計画の成立のため全債権者の同意が必要であるため,債権者間に対立の激しいときや倒産者に対する信頼がまったく失われているときは成功の可能性は少ない。逸失した財産を否認によって回復する必要があるときは破産宣告を求めねばならない。

 私的整理の手続については決まったものはないが,一般には債権者集会が開かれて数名の債権者委員と委員長が選ばれ,債権者委員長が帳簿類や印鑑等を保管して倒産者の財産を管理しつつ整理案を策定する。倒産経営者の私財提供や,担保権者に権利放棄を要請したりもするが,強制力はないからすべて納得ずくで進められなければならない。少額債権者には他の債権者の同意のもとに全額支払って債権者数を減らすこともよく行われる。整理案は債権の一部免除と延払いを主要な内容とするが,これについて全債権者の同意をとりつけると私的整理は成功する。裁判所の関与はないが,弁護士がなんらかの資格で関与することが多い。
倒産
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の私的整理の言及

【倒産】より

…日本には前者にあたるものとして破産法による破産と商法による特別清算(〈清算〉の項参照)があり,後者にあたるものとして,破産法による強制和議,和議法による和議,商法による会社整理,および会社更生法による会社更生がある。なお,このほかこのような裁判的手続によらないで,利害関係人の話合いで倒産処理をすることもでき,これを私的整理(内整理,任意整理ともいう)と称する。実際には大部分の倒産事件は私的整理によって処理されており,これにも清算型と再建型がある。…

※「私的整理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android