経営権(読み)ケイエイケン

デジタル大辞泉 「経営権」の意味・読み・例文・類語

けいえい‐けん【経営権】

経営者が自らその企業を経営・管理する権利。法的に規定された権利ではなく、労働者経営参加の要求に対して、使用者から主張されるもの。

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精選版 日本国語大辞典 「経営権」の意味・読み・例文・類語

けいえい‐けん【経営権】

  1. 〘 名詞 〙 企業の経営者が自己の企業を経営・管理する権利。法律に規定された権利ではないが、財産権一種として扱われることがある。
    1. [初出の実例]「身許の確かな、三人の戦争未亡人を選んだ館長が、ここの経営権を全部任したのだ」(出典:小美術館で(1954)〈永井龍男〉B)

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改訂新版 世界大百科事典 「経営権」の意味・わかりやすい解説

経営権 (けいえいけん)

第2次大戦後の労働協約において,使用者に固有の権利・権限の行使を,労働組合の団結力によって抑止しようとする協議約款が普及するにつれて,この概念は登場してきた。労働者側には労働権があるのに対応して,使用者側には労働組合の拘束を受けずに独自に行使できる経営権がある,という主張が使用者側によってなされた。経営権の内容として主張されたおもな事項(専権事項)として,経営上の諸施策(企業の分合,生産計画等),人事権の行使(採用,異動,解雇等),企業施設の管理(労働組合の生産管理の排除等),団体交渉権の範囲の制限(生産計画,人事などは団体交渉事項とはなりえないなどの主張),などがみられる。しかし,現行実定法上はもとより,現在の判例・学説によっても,経営権は法律上の権利概念としては承認されていない。それは,いわば社会的経済的概念にとどまる。経営権は,法的には,使用者の所有権と労使の契約をめぐる法的諸機能に包含される。具体的には,使用者の所有権に基づく物的支配権(施設管理権),営業の自由,労働契約に基づく人事権(指揮命令権)などに分解して把握すべきものである。また,団体交渉の範囲を法律上一般的に限界づける法規定は存在せず,上記諸権利が使用者に認められる場合でも,その権利行使が〈労働関係に関連し,労働者の経済・生活条件の維持向上に関連する〉ときには団体交渉の対象とされ,使用者は交渉に応じなければならない。経営方針に関する協議約款も,経営権侵害であるがゆえに無効であるとはいえない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「経営権」の意味・わかりやすい解説

経営権
けいえいけん

法律上、経営権という独立した権利は存在しない。第二次世界大戦後、労働組合が経営に介入を要求したとき、使用者側が労働者側の労働権に対照させて使い始めた用語で、その内容は、労働者側が団体交渉や争議行為によっても関与しえない経営の専権的決定領域といえる。経営学上では、経営権は経営者の対内的・対外的権限である。対内的経営権とは、経営内部の従業員を機能的に指揮、統率しうる権限であり、その典型は人事権である。対外的経営権とは、経営と相互作用する株主、労働組合、金融機関、政府、顧客、地域社会などの環境主体に対し、自己の経営の利害と自主性を主張し、経営の維持、発展を図る権限である。権限一般がそうであるように、権限の反面には責任が付随する。対外的経営権の責任は、社会的責任であり、経営権、とくに対外的経営権は、経営の社会性、公共性、公益性と不可分のものとなる。

[森本三男]

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百科事典マイペディア 「経営権」の意味・わかりやすい解説

経営権【けいえいけん】

労働組合の介入を許さない経営者の決定職能の範囲をさす。製品政策,生産政策,財務政策,販売政策,管理組織,人事などが経営権とされる。しかし労働権が法的に保障されているのに対して,経営権は法律で定められたものではない。経営学的には,経営者が経営機能を遂行して職務を全うできる権限のことであるとする。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「経営権」の意味・わかりやすい解説

経営権
けいえいけん
right of management

会社の経営担当者がもつ固有の権利をいう。ただし法律上の経営権の概念は必ずしも明確なものではない。一般に考えられるものは,従業員に対する雇用契約に基づく指揮命令権,生産手段の管理権に基づく諸規律などである。また労使の団体交渉の対象とならない使用者の専権事項をさすこともあり,この場合は生産方法,生産計画,経営幹部の人事,財務などに関する決定権が含まれる。

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M&A用語集 「経営権」の解説

経営権

議決権の一定以上を取得し、企業経営に携わる権利のこと。

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