総会屋(読み)ソウカイヤ

デジタル大辞泉 「総会屋」の意味・読み・例文・類語

そうかい‐や〔ソウクワイ‐〕【総会屋】

少数の株式を所有して株主総会に出席し、金品を目当て嫌がらせを行ったり、議事進行の誘導をしたりする者。会社法による規制の対象になっている。特殊株主

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精選版 日本国語大辞典 「総会屋」の意味・読み・例文・類語

そうかい‐やソウクヮイ‥【総会屋】

  1. 〘 名詞 〙 いくつかの会社の株を少しずつ持って、それぞれの株主総会に出席し、その席でいやがらせをしたり、または議事進行に協力して、会社から金をとったりすることを常習としている者。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「総会屋」の意味・わかりやすい解説

総会屋 (そうかいや)

株主の権利を濫用して会社から不当な利益を得る者。株主総会に出席して議事進行の妨害あるいは協力するために会社に金銭の要求をしたりすることからこの名がついた。競争のはげしい資本主義社会では,企業は最大の利潤獲得を至上命題としている。したがって,企業が経営をうまくやっていくためには,あらゆる術策を必要とし,ときには表には出したくないような陰の部分さえももつようになる。またその競争のはげしさは,内部的にも,主要な地位をめぐっての権謀術数的な抗争等を生じがちである。総会屋は,たえず触手を伸ばしてこのような情報を巧みに入手し,その弱点を利用して企業へ寄生しようとする。彼らの活躍の場は,株主総会での議事介入であった。一般株主は分散して存在し,会社の方針や経理状態についても詳しい情報はもたず,複雑な諸手続にも通じていない。したがって,株主総会の議決過程は形骸化しており,総会屋はこれを逆手に利用して利得の機会としていた。しかし1981年,その規制が強まるに及び,株主総会以外の場に新たな寄生手段を求める傾向を顕著に示し出している。
執筆者:

従前にも罰則を設けて(商法494条)総会屋の活動を規制しようとしていたが,この規定は,財産上の利益の収受,要求または約束が,不正の請託の下に行われることを要件としているため,あまり効果をあげることはできなかった。そこで1981年の商法改正で,この規定はそのまま維持し,総会屋の根絶を図るため新たに,会社は何人に対しても,株主の権利行使に関して財産上の利益を供与してはならない旨の規定が設けられた(294条ノ2-1項)。この規定に違反して,会社が財産上の利益を供与したときは,その利益を受けた者は,これを会社に返還しなければならない(294条ノ2-3項)。この返還については代表訴訟が認められている(294条ノ2-4項)。また違法に利益を供与した取締役は,供与した利益の価格を会社に対して連帯して弁済する責任を負うし(266条1項2号),任務懈怠(けたい)により違法な利益供与の事実を見のがした監査役も,取締役と連帯して責任を負う(277,278条)。さらに,違法に利益を供与した取締役,監査役,使用人には罰則の規定がある(497条1項)。利益供与を受けた者も同様である(497条2項)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「総会屋」の意味・わかりやすい解説

総会屋
そうかいや

株主総会における株主の権利を濫用して、不当な財産上の利益を得ようとする者。総会屋には2種類あり、わずかの株式をもって株主総会に出席し、不当に会社にとって不利益な発言をして総会の正常な運営に支障をきたす者(野党的総会屋・総会荒らし)と、会社が進んで報酬を支払い、他の株主を威迫してその発言を抑制するなどして、株主総会の円滑な進行に加担する者(与党的総会屋)である。いずれにしても、会社経営の健全性が害され、かつ、会社財産の濫費である。そこで、会社法はその防止策として、株主権の行使に関する財産上の利益供与(当該株式会社またはその子会社の計算においてするものに限る)の禁止規定を置いている(会社法120条)。利益供与を受けた者は会社に返還しなければならない(同法120条3項)。利益供与に関与した取締役・執行役には連帯して支払いを行う義務がある(同法120条4項本文)。ただし、利益供与をした取締役・執行役は無過失責任であるが、それ以外の取締役・執行役は、自らの無過失を立証したときには責任を免れる(同法120条4項但書)。これを受けた罰則(同法970条)も存在する。

[戸田修三・福原紀彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「総会屋」の意味・わかりやすい解説

総会屋
そうかいや

株主総会において,株主の権利を濫用し,企業から不当な利益を得ようとする者。その手段の一つは株主総会で不穏当な発言をするなどの議事の妨害である。これを避けるために企業が金を支払うようにしむける。またあらかじめ企業からなんらかの名目で利益を得て,逆に総会を滞りなく進行させるため企業側に協力することもある。1981年の改正商法により利益供与の禁止の規定が導入され,株式会社は,なんぴとに対しても株主の権利の行使に関し,会社またはその子会社の計算において財産上の利益を供与することが禁止された(会社法120条1項)。利益供与を行なった取締役などに対しては罰則が適用され(970条),関与した取締役などは,会社に対して供与した利益の価額に相当する額を連帯して支払う義務を負う(120条4項)。

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百科事典マイペディア 「総会屋」の意味・わかりやすい解説

総会屋【そうかいや】

株主の権利を乱用して不当な利益を得ようとする者。株主総会の発言権を利用することが多い。この防止のため,一定の共益権(社員権参照)の行使に一定割合または一定期間以上の株式の保有を要求,会社法上の訴えにつき担保提供を求め,各種の権利行使につき贈収賄罪を規定(会社法968条)。また,会社は何人に対しても株主権の行使に関して,財産上の利益を供与することは禁止され(会社法120条),これに違反した場合には,利益を受けた者及び利益供与に関与した取締役に返還を請求できる。

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世界大百科事典(旧版)内の総会屋の言及

【株主総会】より

…定款変更,資本減少などの重要事項についてはこの方法による。なお,総会の形骸化の原因の一つとなっている総会屋に対処するため,新たに,株主の権利の行使に関し会社は何人に対しても財産上の利益を供与してはならない旨の規定が設けられ(294条ノ2),これに違反した場合の責任・罰則も定めている(266条1項2号,497条)。 総会の成立手続または決議の内容に瑕疵(かし)があって,決議の効力を争う場合,決議を前提として多数人との間に各種の行為がなされるため,一般原則にゆだねることは妥当でない。…

※「総会屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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