臨床検査(読み)リンショウケンサ(英語表記)clinical laboratory tests

デジタル大辞泉 「臨床検査」の意味・読み・例文・類語

りんしょう‐けんさ〔リンシヤウ‐〕【臨床検査】

病気の診断、治療方針の選択、予後の判定などの資料とするために、患者の血液・尿・便などを採取したり、脳波・心電図などを測定したりして行う検査。

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精選版 日本国語大辞典 「臨床検査」の意味・読み・例文・類語

りんしょう‐けんさリンシャウ‥【臨床検査】

  1. 〘 名詞 〙 病気を診断し、治療経過を正しく判断するための検査。血液、尿、便などを材料とするものから、X線を用いたもの、心電図、脳波検査など範囲が広い。

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改訂新版 世界大百科事典 「臨床検査」の意味・わかりやすい解説

臨床検査 (りんしょうけんさ)
clinical laboratory tests

病気の診断や治療に際して行われる検査をいう。医師を訪ねる患者は,まず医師に自己の身体的異常の状況を訴え,苦痛の軽減と除去を求める。医師は患者の訴えを聞き,病気があるのかどうか,病気があるとすればどの臓器が侵されたか,なにが原因で,現在どの程度に悪いのかを知るために,診察をし,尿をとり,血液をとって分析したり,X線写真撮影を行う。そして,ほぼ病気の全体を推定できたと考えたとき,適切な治療方法を選択し実行に移すわけである。さらに経過を追って行っている治療方法が適切かどうか,薬剤を与えているがその副作用は現れていないか,悪化しつつあるのか軽快しつつあるのかなどを監視するために,ときどき検査をくりかえすであろう。このように診療に際して,(1)病気の原因を探し,(2)罹患部位を明らかにし,(3)病気の性質と程度を知り,(4)病気の経過と予後を知るために行う行為,処置を臨床検査と呼んでいる。すなわち臨床検査は,診断を決定し,疾病の重症度を推定し,治療方法を決め,かつ治療をコントロールし,副作用や合併症を発見し,予後を推定するために必要な手段である。換言すると臨床検査とは,診療に際して患者の病態を的確に知り,客観的な判断資料,情報を求めて行う手段である。さらに補足すると,患者の訴え,医師の診察所見のみでは客観性に欠けることが臨床検査の発展を促したのである。

 患者の訴えは患者によって異常の感じ方,表現法に差があり,言葉を介する医師の理解にも差がある。また診察所見は,医師の注意力,感覚の優劣,受けた訓練と経験による個人差が表れ,客観的資料とはいいがたい。それで,身長,体重測定のように患者病態の判断に外的基準を導入して健康人と比較したり,特定の病気だけを選別しようと考えたのが臨床検査である。その外的基準にしたものはなにかといえば,18世紀末以来の科学的合理主義にほかならない。医学が自然科学を基礎とする人間の生物学的研究の学問となり,医療(診療)が医学の社会的適応であることから,医療に科学的合理性を求めるのは医師,患者を問わない。そこで人間は病気の理解に自然科学的論理の適用を求め,自然科学技術の発達にともなって臨床検査が発達し,現在の疾病観をつくりあげたのである。臨床検査は,現在あらゆる自然科学的知識と技術を駆使して病気を理解し,医療行為に科学的根拠を与え,かつ科学的合理性にもとづくことを立証しようとするものである。臨床検査は医療のなかで非常に大きな地位を占めており,現在では臨床検査抜きの診療は成立しない。

臨床検査の歴史は,近代科学技術の進歩発展にきびすを接してきている。現象の精密な観察,記録と整理分析の上に考察を重ねる自然科学的方法論を基盤において,新しい技術を医学に,そして医療に応用し発達してきた。観察の歴史はたいへん古く,ヒッポクラテスも病気の診断に尿の観察所見がたいせつなことをしばしば述べたという。もちろんこれは肉眼的観察であり,1700年代のA.vonレーウェンフックの顕微鏡の発明は細菌検査に始まり,血液細胞の形態観察,臓器組織の拡大観察と進み,現代の病理組織形態学による病気の系統的分類へと発展した。また電子顕微鏡の出現はウイルス疾患の検査,細胞内物質の構造,同定を可能とし,日常臨床検査技術に導入される時期となっている。一方,生体成分の分析も化学技術の進歩に従って1800年代初期には尿中化学成分の分析とその結果の疾病診断への応用が行われはじめたが,方法論こそ近代化されてはいないものの,臨床検査としての基礎はこの段階でほとんど完成されていたといっても過言ではない。1895年のW.C.レントゲンによる放射線の発見と診断学への利用,その後の放射性同位体ラジオアイソトープ)利用検査法など,現在では放射線医学,核医学と独立の分野を占めているが,広い意味ではこれも臨床検査である。また19世紀末に発見された生体電流計測技術の進歩は心電計,脳波計,筋電計などとして,利用頻度の高い臨床検査法となっている。すなわち,臨床検査の範囲は広義にとれば,微生物学,生化学,生理学など基礎医学領域の応用技術すべてを含み,放射線医学や超音波利用によるいわゆる画像診断まで入る。臨床検査は学問領域としては基礎医学と臨床医学との境界領域を占める分野であり,臨床病理学clinical pathology,臨床検査医学laboratory medicine,病態検査学などと称する部門である。

狭義には放射線医学関連の検査は除外される。もっとも,核医学関連検査は除外されていない場合もある。その他の検査はすべて臨床検査に含まれ,日常利用頻度の高い検査種目数は約350種にのぼり,まれに実施する必要のある検査を加えると,おそらく1000種類を超える。この狭義の臨床検査は,(1)直接患者を扱う検査と,(2)患者から採取した材料(試料)を扱う検査(検体検査)とに分類でき,前者は法律上,医師または臨床検査技師の有資格者のみが実施できることになっている。この点は,放射線医学検査が放射線取扱者の有資格者でなければ行えないのと同様である。そして,狭義の臨床検査は,医療の経済的合理性と正確さ,精密さの向上を目標として,病院内では独立した部門として設置されるようになった。また病院組織をもたない診療所,市中開業医師のための臨床検査施設として検査センターcommercial clinical laboratoryが設立され利用され,現在では大学,診療所の間で狭義の臨床検査実施に関する限り医療内容の質的差異はほぼ解消した。現在の病院検査室,検査センターにおける臨床検査作業の進め方は,ほとんどが最新電子機器の導入による工場生産的な方式であり,19世紀に始まった手工業生産的な検査は非常にわずかな部分にとどまる。この臨床検査の歴史的な変革は1920年代に始まったアメリカでの臨床病理学の独立,50年代に始まった臨床検査の自動化が時代を画し,現在のコンピューター化時代への基盤を形成した。

(1)直接患者を扱う検査 日本ではこれを生理機能検査と習慣的に呼んでいる。臓器の活動電流を皮膚,皮下に装着した導子の電位差から図形に描く心電図,脳波,筋電図検査などに,呼気のガス分析を加えて総称している。これらは,それぞれ心臓,脳,運動器(骨格筋),肺や気管など呼吸器の動的状態を知るための臓器機能検査の一つとして行われる。これらの検査は,ほとんど患者に肉体的負担を与えることなく,経時的に変化する情報を収集でき,有効な非破壊検査である。患者を扱う検査の別な形のものとして,負荷(機能)試験がある。特定の臓器機能を知るための臨床検査法で,簡単なものは運動,食餌の負荷,複雑なものでは固有の薬物,ホルモン,ビタミンなどを被検者に与え,経時的に観察したり試料をとって分析したりする検査である。負荷試験は,肝臓,腎臓などの予備能力をみる目的でしばしば行われ,副腎-脳下垂体系,甲状腺など内分泌臓器では診断確定のために不可欠の検査となっている。消化管機能,膵機能検査としても負荷試験は,診断の決定,疾患の程度を知るよい方法である。最も普及している負荷機能検査の一例が糖尿病診断のための糖負荷試験である。一定量の糖質を含む食餌またはブドウ糖そのものを与え,3時間後まで経時的に血中,尿中ブドウ糖濃度を測定し,血中インシュリン分泌量,尿中C-ペプチド(プロインシュリンからインシュリンが生じるときにできるポリペプチド)排出量を求め,診断資料にすると同時に,治療方針をきめる指標とする。負荷試験は,病名を確定すること,あるいは病気の原因を検索するという点で決定的なものではない。しかし,臓器の予備能力を知る意味では有力な情報源となる。したがって慢性に進行する疾患では,しばしば実施される検査である。

(2)検体検査 検体となりうるものを列挙すると以下のとおりである。(a)排出物 糞便,尿,汗,(b)分泌物 涙液,鼻汁,喀痰,唾液,精液,腟分泌物,(c)消化液 胃液,十二指腸液,胆汁,膵液,(d)体腔貯留液 胸水,腹水,心囊液,(e)穿刺(せんし)液 脊髄液,関節液,リンパ液,(f)血液,(g)手術材料,試験切除組織片,(h)膿汁,耳漏,眼脂。これらの検査材料について,形態学的観察,物理的性状の観察と物理量,化学的組成の分析,微生物学的検索,免疫学的反応による分析を行う。

 形態検査は,汗,唾液,膵液を除く全検体に必要に応じて実施される。たとえば癌細胞を探すのは,検体の種類によって前処理法は多少違うが,一つずつ顕微鏡で確認する形態検査法である。ただ,形態検査のうち,主要なものは組織検査,細胞診,血液細胞形態の分類,尿中有形成分の顕微鏡観察などである。

 物理的性状,化学的組成の分析検査には,色調,比重,粘度,導電率,屈折率,浸透圧などの測定および無機,有機化合物の定性,定量検査がある。おもな対象となる検体は血液(血清)と尿である。無機物ではナトリウム,塩素,カリウム,鉄,銅,カルシウム,マグネシウム,リン酸,有機物では糖質,脂質,タンパク質,アミノ酸のほか非タンパク質性窒素化合物,生体色素,酵素活性などを定量測定し,病気による代謝異常の状態を推定,診断に利用する。化学成分の分析で,最近ではドラッグ・モニタリングdrug monitoringと呼ぶ血中,尿中薬剤濃度の測定も臨床検査に加わってきた。投薬しても,体内,血中の薬剤濃度が一定水準以上でないと薬効は現れない。また,あるレベル以上になると,薬効よりも中毒症状,つまり副作用が出現する薬剤がある。この薬剤を使用するときには,血中の薬剤濃度を監視しながら投薬量や投薬時間を決め,最大効果を期待する。そのための臨床検査で,抗てんかん薬,強心剤の一部,アミノグリコシド系抗生物質の使用時に必要な検査である。

 微生物学的検査は,前記すべての検体について各由来臓器の感染症が疑われるとき実施される。微生物も細菌,真菌,マイコプラズマ,原虫,リケッチア,ウイルスと検索対象が多岐にわたり,すべて臨床各科医師の経験にもとづく疑い診断から各検体からの検査目的病原体が指示される。同じ糞便であっても,腸チフス菌を探すこともあれば,ポリオウイルスコクサッキーウイルスの分離を目的とすることもある。また微生物学的検査には,患者から分離した病原体と考えられる細菌に対する薬剤感受性を測定することも一般に行われている。分離菌に対してどの抗生物質が最も効果があるか,つまり感受性が高いか低いかを測定して臨床医師に報告するという検査法である。ただしウイルスの分離同定は,臨床検査ではあるが細胞培養,組織培養などかなり大がかりな設備と技術を要し,日常臨床検査として普及していないのが現状である。したがってウイルス病の診断は,次に述べる免疫学的検査法が一般的である。感染症も日本では法定伝染病のほとんどが姿を消し,健康人にとっては問題にならない平素無害菌による重症患者への感染が問題となっている。そのため臨床検査としての細菌検索も,常在菌を含めて判断対象となり,それだけ臨床医師の解釈も複雑になった。

 次の免疫学的検査に属する臨床検査とは,種目でみると血液型検査,輸血のための交叉(こうさ)適合試験,感染症患者血中抗体価の測定,抗体産生細胞に関係のある細胞性免疫検査,アレルギー反応検査などである。この免疫学的検査を必要とする疾患の応用範囲は広く,感染症,自己免疫疾患,過敏症,臓器移植,輸血時の適合性からタンパク質の代謝異常症の診断にまで及んでいる。1960年代に妊娠診断法に免疫学的検査手技が導入されるようになったため,妊娠診断でも従来の生物学的妊娠診断法を採用している病院検査室は少ない。また,この免疫学的検査の技術は,ラジオアイソトープ測定法あるいは酵素活性測定法と結びつき,放射免疫測定法(ラジオイムノアッセー),酵素免疫測定法などの新測定技術を生み出し,超微量生体成分の定量検査に役立っている。脳下垂体ホルモンとか性ホルモンの臨床検査には欠かせない技術として発達した。

(3)臓器別の分類法 臨床検査は多種多様なので前述のように単純に方法論と扱う試料とで区分した。いま一つの見方は臓器別に関連の深い項目をまとめる方法である。この見方をすると,(a)循環器,(b)消化管,(c)肝臓,(d)膵臓,(e)腎臓,(f)肺・呼吸器,(g)中枢神経系,(h)自律神経系,(i)運動器,(j)内分泌臓器,(k)物質代謝(水,電解質,糖質,タンパク質,脂質)などの各機能検査となる。そして,たとえば肝機能検査のうちには,生理機能検査のうち肝超音波診断法,肝シンチグラム,肝胆道X線造影検査,腹腔鏡検査が含まれ,検体検査では血色素量,白血球数と白血球分類など形態検査,肝炎ウイルス検査,胆汁細菌検査など微生物検査のほか,血液化学成分の分析でタンパク質,酵素活性,脂質定量が診療上利用される。すなわち,生理機能検査,検体検査のうちから当該臓器の機能に関連のある検査項目を拾い出してまとめ,臓器機能検査とする分類法である。

ほかにスクリーニング試験と精密検査と臨床検査を二分してみる考え方もある。スクリーニングとは,疾病の有無だけをみるとか,部分的に検査のふるいにかけ異常者だけを拾い出す検査法である。項目は,臓器特異性の低い,しかも病気の有無に鋭敏な検査が選択され,尿タンパク,糖質その他の定性反応とか赤血球沈降速度測定,C反応性タンパク試験(CRP試験),末梢白血球数,血色素測定など,検査にさほど労力を要しないものが選ばれる。

 精密検査となると,スクリーニング成績と患者の診察所見から推定された罹患臓器機能検査を可能な限りすべて実施することになる。

この多種多様な臨床検査はどのように検査室で行われ,臨床医師にとってどれほど役立っているのだろうか。患者を扱う検査は病棟または外来検査室で医師,臨床検査技師の手で行われ,結果は医師が解読している。検体検査は,医師,看護婦,臨床検査技師が採取し,それを検査室または市中検査センターに送り,それぞれ検査分析された結果が医師に返却される。検査室における検査作業の多くはマイクロコンピューター内蔵の自動化機器によって大量,高速処理が可能となった。とくに化学成分の分析部門にその傾向が著しく,最近では血液細胞の形態分析部門にも自動化機器の普及が目立っている。医師は,これらの検査機器の打ち出す大量のデータを,医師自身の頭脳で整理分析し,患者の病態を総合的に解釈し,病状に適した処置治療を選択する。患者の既往歴,現病歴と医師の精細な診察所見だけでは,正しい診断が下される確率は50~60%といわれるが,臨床検査成績は,その正しさの確率をさらに10~20%引き上げることができる。このことが現在の臨床検査の普及をみた最大の理由であり,今後とも疾患特異性の高い臨床検査の出現をめざして研究が続けられよう。疾患特異性の高い検査とは,ある病気では必ず異常結果を示し,他の病気や健康人では必ず正常結果しか示さない検査をいうが,現在ではこのような便利な検査はきわめて少なく,データの総合判断がどうしても必要となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨床検査」の意味・わかりやすい解説

臨床検査
りんしょうけんさ
laboratory test

治療目的で医療機関を受診した患者について、受診時の健康状態を把握するために行われる検査の総称。多くの場合、診察前に行われる採血、すなわち血液検査が臨床検査の第一歩となる。これ以外では、健康診断で行われる検査の大部分が臨床検査に関係したものである。

 臨床検査は、ときに「臨床衛生検査」や「医学検査」などとよばれることがある。また派生することばとして、自施設内に臨床検査部門をもたない医療機関から集められた血液等の検査を行う施設を「衛生検査所」とよんでいる。検査の実施には許認可が必要なので、正しくは「登録衛生検査所」であり、俗にいうコマーシャルラボのことである。

 なお、医療法の改正に伴って、医療機関は2008年(平成20)から臨床検査を専門的に行う診療部門を「臨床検査科」として(診療科の一つとして)掲示(標榜(ひょうぼう))することが可能となった。

[桑尾定仁 2021年12月14日]

検査の種類

臨床検査は病気の有無や診断をおもな目的として行われるが、健康診断時には異常値を把握し、病気への移行を類推するためのデータ提供も行っている。一般的には「検体検査」と「生体検査」に大別される。なお、以下に述べる検査項目の表記は診療報酬請求業務で公的に受け入れられているものを使用している(現行の検体検査の分類については「臨床検査技師等に関する法律」(昭和33年法律第76号)に詳しく解説されている)。

〔a〕検体検査
検体検査に含まれる項目としては、尿・糞便(ふんべん)検査、血液学的検査(血液型を含む輸血検査)、血液・生化学的検査、免疫血清学的検査、微生物学的検査などがある。尿・糞便検査のうち、尿検査では尿タンパクや血尿の有無を取り扱い、腎臓(じんぞう)や膀胱(ぼうこう)を含む尿路に異常があれば、これらが陽性となることがある。糞便検査は消化管の異常をみつけるために行われる。便潜血が陽性ならば、消化器腫瘍(しゅよう)や潰瘍(かいよう)の存在が示唆される。また、受診時に採血された検体には血液・生化学的検査が行われ、きわめて多種の検査項目が調べられる。臨床検査といえばまさにこのことをさす。赤血球数、白血球数、血小板数、肝酵素、尿素窒素、クレアチニン、グルコース、中性脂肪、総コレステロールなどの値が含まれる。免疫血清学的検査では肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、C反応性タンパク、甲状腺(せん)ホルモン、がんに伴って上昇する腫瘍マーカーなどがチェックされる。その他、微生物学的検査は痰(たん)や便内の細菌やカビを調べることにより、感染症の有無を調べるものである。

〔b〕生体検査
生体検査は「生理機能検査」とよばれることが多いが、呼吸機能検査、循環機能検査、超音波検査、脳波検査、筋電図および神経・筋伝達速度検査、耳鼻咽喉(いんこう)科学的検査、眼科学的検査などが行われている。

 呼吸機能検査はスパイロメーターとよばれる検査機器を用いて肺活量を測定するもので、肺に器質的疾患が存在すれば低下を示す。また、近年話題となっている睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)の検査も呼吸機能検査で取り扱われる。循環機能検査で代表的なのは心電図検査であるが、必要に応じて負荷心電図検査やホルター心電図検査(24時間の持続的心電図検査)など、より詳細な検査が行われる。超音波検査は患者に負担の少ない非観血的検査(痛みや出血を伴わない検査)の代表格で、目覚ましい進歩を示す超音波検査機器の登場により、心臓、腹部臓器、婦人科領域、乳腺外科領域、末梢(まっしょう)血管外科領域、皮膚組織や体表領域などで、さまざまな臓器の異常を明瞭(めいりょう)な画像で映し出すことが可能となっている。脳波検査ではけいれんの原因が何なのかを調べたり、意識障害の有無、あるいは脳腫瘍の有無を調べたりすることが可能である。筋電図および神経・筋伝達速度検査のうち、筋電図は筋肉疾患の有無を検査するもので、神経・筋伝達速度検査は、同速度の低下が糖尿病に伴う末梢神経障害によるものか、神経自体の病気によるものか、あるいは神経の炎症によるものかを判断するものである。耳鼻咽喉科学的検査は聴力検査に、眼科学的検査は視力検査に代表される。その他、内視鏡検査を臨床検査技師がサポートする医療機関もある。

[桑尾定仁 2021年12月14日]

検査結果の解釈と精度管理

臨床検査には精度管理が欠かせない。臨床検査では正しい検査結果を得るため、検体の採取方法や保存条件が適切であったか、決められた方法で検査が行われたかなど、さまざまな条件をクリアしなければならない。それらを守らなければ、陽性となるべき検体が陰性と判定されたり(偽陰性)、陰性の検体が誤って陽性と判定されたりする(偽陽性)。精度管理の重要性が叫ばれるゆえんである。

 精度管理のためには、適切な基準を満たす検査施設、性能を保証された機器・試薬を使用し、専門職である臨床検査技師が検査を担わなければならない。同時に、患者から採取された検体はあらかじめ結果値が保証されているコントロール検体とともに分析することで、精度管理(検査感度と検査特異度の維持)が行われている。検査感度とはすなわち、有病者(疾患のある者)において、検査結果が陽性となる可能性(真の陽性率)であり、検査特異度とは、健常者(疾患のない者)において、検査結果が陰性となる可能性(真の陰性率)のことである。

[桑尾定仁 2021年12月14日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「臨床検査」の意味・わかりやすい解説

臨床検査
りんしょうけんさ
medical technology

病気の診断と治療を助けるため,各種の分析手技および機器による測定法を取扱う医学の一部門。対象としてはまず人体全般,次いで血液,髄液などの体液,胃液,胆汁のような各種分泌液,大小便,組織,臓器の切片 (組織診,細胞診など) 。方法としては臨床化学的方法 (たとえば尿,血液中の糖,蛋白の定性,定量) ,物理的方法 (たとえば心電図,脳波,超音波検査などの記録) ,形態学的方法 (たとえば喀痰中の菌検出や細胞診) ,免疫学的方法 (梅毒反応,リウマチ反応,AFP,CEAの定量など) ,ラジオイムノアッセイなどがある。

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百科事典マイペディア 「臨床検査」の意味・わかりやすい解説

臨床検査【りんしょうけんさ】

補助診断の一つ。尿,血液などの化学的検査,喀痰(かくたん)などの細菌学的検査,血液の免疫血清学的検査,内視鏡検査,バイオプシー,脳波,心電図,筋電図など広範な検査が行われ,診断の助けとなっている。技術・器械の開発・改良はめざましく,さらに自動化が進められている。
→関連項目標榜診療科

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栄養・生化学辞典 「臨床検査」の解説

臨床検査

 病気の診断や治療の目的で行う検査.血球の数など血液の分析,抗体の分析,血液や尿の生化学的分析,X線写真などの撮影,脳波や心電図など細菌やウイルスなどの検査,その他種々の検査がある.

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世界大百科事典(旧版)内の臨床検査の言及

【医療】より

…内科系の診療科目として,内科,小児科,精神科,消化器内科,循環器内科,呼吸器内科,神経内科などがあり,外科系の診療科目として,外科,眼科,耳鼻咽喉科,口腔外科,産婦人科,泌尿器科,皮膚科,整形外科,脳外科,胸部外科,放射線科などがある。
【診断】
 診断とは,患者が訴えるいろいろな病気の症状を,医師が以下のような問診,視診,触診,打診,聴診,および種々の臨床検査によって病気を見きわめることである。診断は,その病気が何病であるかをきめるだけでは完全ではない。…

※「臨床検査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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