対外的にはAir Self Defense Forceと称し,略称ASDF。1954年,自衛隊法により陸上自衛隊,海上自衛隊と並んで創設され,政府の公式見解では憲法上の制約により軍隊ではないとされているが,各国空軍と同じ任務をもち,同じような編成,装備になっており,国際法上は軍隊として取り扱われている。
航空自衛隊は,防衛庁長官(現,防衛省の防衛大臣)の指揮を受け,陸上自衛隊,海上自衛隊と協力し,侵略に対して日本を防衛することをおもな任務とする。なお,日本が侵略を受けた場合,日米安保条約に基づきアメリカの航空戦力の支援を受けることが想定されている。1978年に策定されて以後1997年9月に改定された〈日米防衛協力のための指針〉では次のように定めている。〈自衛隊及び米軍は,日本に対する航空侵攻に対処するための航空作戦を共同して実施する。自衛隊は,防空のための作戦を主体的に実施する。米軍は,自衛隊の行う作戦を支援するとともに,打撃力の使用を伴うような作戦を含め,自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する〉。
航空自衛隊の行うおもな作戦は次のとおりである。(1)航空優勢の確保 来攻する敵航空戦力に対し,航空警戒管制組織をもって警戒・識別し,その管制によって要撃戦闘機,地対空ミサイルなどをもって要撃し撃破する(この作戦を防空作戦という)。(2)航空阻止作戦 来攻する敵陸海戦力に対し,主として支援戦闘機(空対艦ミサイルまたは爆弾搭載)により,努めて洋上において艦船攻撃を行って侵攻兵力を撃破し,また着上陸した部隊に対しては敵の後方連絡線の遮断などによって,侵攻部隊の作戦遂行能力の減殺を図る。(3)支援のための航空作戦等 3自衛隊のために,航空偵察や作戦輸送および後方補給輸送などの航空輸送を行うほか,航空救難等の作戦支援活動を実施する。なお,航空優勢を確保し,国土を直接防衛するためには,一般に敵国の軍事基地,港湾など侵略の策源地を攻撃しこれを封殺するよう努めるが,日本は自衛のため必要な場合このような行動が自衛権の範囲に含まれると解釈しながらも,日本は原則としてこれを行わないとしている。
また平時においては次の活動を行う。(1)平時の領空侵犯に対し,侵犯機を退去,着陸させるなどの措置を行う。(2)大災害に際し,陸上自衛隊,海上自衛隊と協力して航空偵察,航空輸送などを行う。(3)航空救難部隊をもって,民間機についても災害派遣活動として全国的な航空救難に当たるほか,山,海などにおける遭難者(船)の捜索や救出,重症患者の緊急空輸など民生協力を行う。(4)政府専用機などをもって,国賓,内閣総理大臣などの要人輸送,在外邦人等の救出のための輸送を行う。在外邦人等の輸送ではC-130Hが使用される場合がある。
航空自衛隊は航空幕僚監部および航空総隊などの部隊,機関から成る。(1)航空幕僚監部 航空自衛隊に関する防衛庁長官の幕僚機関(長官の指揮命令の執行を含む)である。(2)航空総隊 航空自衛隊の作戦部隊で,航空総隊司令部および北部,中部,西部の3航空方面隊と南西航空混成団および偵察航空隊,警戒航空隊などから成る。航空方面隊,航空混成団は,司令部,航空団(隊),高射群,航空警戒管制団(群)などから成る。航空団はジェット戦闘機部隊,高射群は地対空ミサイル・ペトリオット部隊,航空警戒管制団はレーダーサイトと自動警戒管制組織バッジ・システムを運用する部隊から成り,協力し合って侵入機の発見とその迎撃に任ずる。偵察航空隊は3自衛隊のため航空偵察を担任する。警戒航空隊はE-2Cにより早期警戒監視を担任する。(3)その他の部隊 (a)航空支援集団は司令部,航空救難団,輸送航空隊,航空保安管制群,航空気象群などから成る。航空救難団は自衛隊機民間機を問わず事故に際してはその航空救難を担任する。輸送航空隊は3自衛隊のため航空輸送(空挺輸送を含む)を担任する。航空保安管制群は航空自衛隊の飛行場にかかわる航空交通管制に関する業務を行う。航空気象群は航空気象に関する業務を行う。(b)航空教育集団は司令部,飛行教育(航空機の操縦に関する技術教育)を行う航空団,飛行教育団ならびに航空教育隊などから成る。(c)航空開発実験集団は司令部,飛行開発実験団,電子開発実験群,航空医学実験隊から成る。飛行開発実験団は航空機,飛翔体,航空装備品などの実用試験や評価などを行う。(d)その他の防衛庁長官直轄部隊がある。(4)機関 (a)航空教育集団司令官は術科学校長および幹部候補生学校長も指揮監督する。術科学校は飛行教育以外の各種術科の教育,研究を行う五つの術科学校がある。幹部候補生学校は初級幹部として必要な教育などを行う。(b)幹部学校は上級部隊指揮官,上級幕僚として必要な教育および大部隊運用などの研究を行う。(c)補給本部長は補給処長を指揮監督する。(d)補給処は,自衛隊の各種装備品の調達,保管,補給,整備などを行う四つの補給処がある。
装備品は科学技術の進歩にしたがって逐次進歩発達を遂げている。
(1)要撃戦闘機 1960年代初期まではF-86Fなど亜音速ジェット戦闘機を使用していたが,その後航空兵器の高性能化に伴い,F-104J,F-4EJを経て,1982年には2.5マッハの超音速ジェット戦闘機F-15Jを配備した。日本は国土が狭く,敵の侵攻を探知してから短時間で要撃に移る必要があり,このため空中給油による要撃戦闘機の滞空時間の延伸の必要性が主張されてきた。(2)地対空ミサイル 防空能力強化のため,1960年代初期,地対空ミサイルの〈ナイキ・アジャックス〉(最初は陸上自衛隊所属)が導入され,のちに〈ナイキJ〉に更新されたが,ナイキJの老朽化に伴いその後継として〈ペトリオット〉が86年度から配備された。また80年代なかばからは基地防空機能強化のため国産の短SAMおよび携帯型SAM〈スティンガー〉が導入されている。(3)航空警戒管制組織 当初,敵航空機の発見,識別および要撃管制ならびに航空現況の表示などはすべて手動によって行われていたが,逐次作戦の要求に追いつかなくなり,1970年前後に警戒管制組織を自動化したバッジ・システムを建設した。83年度からはこのシステムの更新として新バッジ・システムの整備に着手し89年からこのシステムで運用している。また83年,主として地上レーダーで死角となる低空覆域カバーのため早期警戒機(捜索レーダーを積んだ航空機)E-2Cを配備した。また航空軍事技術の進歩を踏まえ,かつ警戒管制機能の抗堪性向上のため早期警戒管制機(AWACS)E-767が2000年から配備されている。
支援戦闘機は,従来専用機をもたずF-86Fを転用していたが,1975年前後に専用機としてF-1を国内開発,77年から配備した。90年代後半からのF-1の減勢に対処するため,88年に日米共同でFS-Ⅹの開発に着手,1997年現在F-2として生産中である。
(1)偵察機 従来,F-86Fを偵察機用に改修して使用していたが,1975年戦術偵察機RF-4Eを配備,現在に至っている。(2)輸送機 当初アメリカ製C-46の供与,購入,次いで国産民間航空機YS-11との併用によっていたが,1970年代初期,作戦上の要求に基づいてジェット中型輸送機C-1を国内開発,さらに輸送能力を向上させるためC-130Hの配備を84年に開始した。
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(田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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