虫干し(読み)ムシボシ

デジタル大辞泉 「虫干し」の意味・読み・例文・類語

むし‐ぼし【虫干し】

[名](スル)夏の土用や秋の晴天の日などに、書画衣類調度品などを陰干しして風を通し、虫の害やかびを防ぐこと。虫払い土用干し曝涼ばくりょう 夏》「―や父の結城の我似合ふ/茅舎
[類語]陰干し日干し素干し土用干し

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「虫干し」の意味・わかりやすい解説

虫干し
むしぼし

衣服書物掛軸、諸道具などの湿気を除き、カビ虫害を防ぐために保管場所から取り出して風を通すことをいう。土用干し、夏干しともいい、夏の土用(立秋の前の18日間)に行う。古くは曝涼(ばくりょう)といい、現在でも正倉院宝物の曝涼、各寺院蔵物の曝涼などがそれぞれ行われる。衣服につく虫は梅雨期の湿気の多いとき活動し、またカビも生えやすいので、梅雨期を過ぎた夏の土用ころに、風を通して湿気を除去することが虫害やカビを防ぐこととなる。衣服の布地や色を損傷させないで長く保つためにも有用である。方法は、窓を開け放って風がよく入るようにし、風の向きに綱を張ってこれに衣服をかける。午前9時ごろから午後3時ごろまでがよい。衣服はちりを払い、正しく畳んで帖紙(じょうし)や鬱金(うこん)の風呂敷(ふろしき)に包み、防虫剤を入れて保管する。近年、土用干しは熱気を含むからよくないとして、空気の乾燥してくる秋の、晴天が2日以上続いた日のあとを選んで行うようになってきた。

[藤本やす]


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改訂新版 世界大百科事典 「虫干し」の意味・わかりやすい解説

虫干し (むしぼし)

夏の土用のころ書籍や衣類,調度などを箱から取り出し,これに風を通してカビや虫の害を防ぎ,かつその害のあるときはこれを補修すること。〈虫払い〉ともいうが,古くは〈曝涼(ばくりよう)〉といっていた。中国で古くから行われていたが,日本でも古くから正倉院やその他の寺社で蔵物の曝涼が行われた。現に正倉院の平安時代初期の曝涼帳の記載が今に伝えられている。《延喜式》には,書籍および図絵は6年に1度曝涼し,仏像・経典は7月上旬から8月上旬に行うことを定めてある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「虫干し」の意味・わかりやすい解説

虫干し
むしぼし

衣類,書籍,調度などを箱から取出し,日光に当て,風を通して湿りけやかび,虫の害を防ぐこと。日本で古くから行われている作業で,6~7月のつゆ明けの天気のよい日に行うが,11月~2月頃の乾燥期にもう一度虫干しをするのがよいとされている。地方によっては土用干しともいう。虫干しの一般的な注意事項は,(1) 数日間天気の続いたあとの乾燥した日を選ぶ,(2) 衣類は広げて十分に風を入れる,(3) かび,しみを発見したらすぐ処置をする,(4) 防虫剤を補う,など。

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百科事典マイペディア 「虫干し」の意味・わかりやすい解説

虫干し【むしぼし】

夏,土用のころ,書籍や衣類,調度などに風を通してカビや虫害を防ぐこと。土用干しとも。中国の曝涼(ばくりょう)にならって,平安時代初期正倉院などで行われるようになった。寺院では虫干しを兼ねて,本尊や秘仏の開扉や宝物類の拝観を許すところが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の虫干しの言及

【七夕】より

…7月7日を特別の祭日とする観念は,おそらく古い農耕儀礼に起源をもつのであろうが,文献資料にのこるものとしては後漢時代の崔寔(さいしよく)《四民月令》が最も古いものの一つである。そこには,この日に書物の虫干しをするほか,河鼓(かこ)(牽牛)と織女の二星が会合するのにあわせて,人々は願いごとをするという(牽牛・織女)。虫干しにされるのは衣服だともされ,衣服に祖霊が依り付くという古くからの信仰と考えあわせ,7月7日が元来,農耕儀礼に結びついた祖霊祭の日であったことが推定される。…

※「虫干し」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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