東京都および埼玉県に179.8km(2004)の営業路線を有する民営鉄道。池袋~吾野(あがの)~西武秩父間の池袋線,西武秩父線と西武新宿~本川越間の新宿線が主体で,ほかに両線から分岐する西武有楽町線,国分寺線,多摩湖線,拝島線などの支線や武蔵境~是政(これまさ)間の多摩川線などから成る。新宿線の前身は1892年創立の川越鉄道(のちの西武鉄道),池袋線の前身は1912年創立の武蔵野鉄道である。両社は45年に合併して西武農業鉄道となり,46年に現社名となった。多摩湖線は多摩湖鉄道が,多摩川線は多摩鉄道が建設したものである。この鉄道は東京の北西郊に住宅地を開発し,とくに第2次大戦後,沿線はめざましい発展をとげ,首都圏でも有数の通勤路線となっている。また,西武秩父への延長により中距離の都市間電車としての役割もあり,指定席制の特急を走らせている。セメントなど貨物輸送も活発である。資本金217億円(2004年3月),売上高4147億円(2004年3月期)。長年にわたる有価証券報告書虚偽記載が表面化し,2004年12月上場廃止。プリンスホテルやコクドなどとともにグループ企業の再建・再編を進めている。
執筆者:和久田 康雄
一般に西武グループないし西武系と呼ばれる企業群には〈西武鉄道グループ〉と〈セゾングループ〉(1985年までは西武流通グループと称した)の2系列がある。両グループは完全に独立して経営され,相互交流はほとんどない。
西武鉄道グループは国土計画(株)を中核に,西武鉄道(株),プリンスホテル(株),西武不動産(株),西武ライオンズ(株)など70社以上から成る。西武鉄道,伊豆箱根鉄道(株)の2社を除き,すべて非上場企業で,経営権は主要企業の社長を兼ねる堤義明が一手に掌握する。経営の実態はほとんど公開されていないが,事業の主体は全国のホテル,ゴルフ場,スキー場などのレジャー施設の総合的運営で,総売上高は1兆円と推定される(1996年度)。全国に保有する約1億5000万m2の土地が事業の基盤となっているが,その大半は義明の実父,堤康次郎(元衆議院議長。1889-1964)が大正半ば以来,買い集めたものである。康次郎の死後,義明が後継者となり,事業を発展させたが,これらの土地は第2次大戦後のインフレによって価格が高騰し,含み価値は,10兆円を上回るともいわれる。なお2006年グループの持株会社として西武ホールディングスが設立された。
これに対し,義明の異母兄,堤清二に率いられるセゾングループは(株)西武百貨店,(株)西友,(株)パルコ,(株)クレディセゾン(旧,(株)緑屋)など約100社から成るが,その内容の大部分は清二の代になってから形成された。グループの連結売上高は約1兆3000億円(1996年度)。詩人,作家として辻井喬の名でも知られる清二の独特の消費文化論に基づいて,新しい実験的な事業と活発な宣伝政策を展開し,流通業界における有力グループとなったが,バブル経済の破綻にともない,91年堤清二は代表を退いた。
執筆者:福島 孝太郎
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東京都西部、埼玉県南部を走る民営鉄道。池袋―吾野(あがの)―西武秩父(ちちぶ)間(池袋線・西武秩父線)と西武新宿―本川越(ほんかわごえ)間(新宿線)を主体に179.8キロメートルの路線をもつ(2012)。
池袋線の前身は1915年(大正4)に開業した武蔵野(むさしの)鉄道(池袋―飯能(はんのう)間)で、1922年に電化されたものの、事業不振で悩んでいたところを堤康次郎(つつみやすじろう)が経営を引き受けた。新宿線は1894年(明治27)に開業した川越鉄道に源を発し、その後西武鉄道となって電化を行った。後者の経営権も堤が握ると1945年(昭和20)に両社を合併して西武農業鉄道と名づけ、1946年に現在の社名に改めた。東京の北西郊の住宅地域がしだいに埼玉県南部に広がるにつれ、重要な通勤路線となった。1969年に開通した西武秩父線は東京から秩父盆地への最短コース。このほか、豊島(としま)線、国分寺線、多摩湖線、拝島(はいじま)線、多摩川線、狭山(さやま)線、西武園線、西武有楽町線、新交通システムの山口線もあり、西武有楽町線は東京地下鉄の有楽町線・副都心線につながり、相互直通運転を行っている。西武園ゆうえんち、西武ドーム(球場)など旅客誘致施設の開設にも熱心である。西武グループの鉄道会社として、伊豆箱根(いずはこね)鉄道(株)などがある。親会社であるコクドの傘下で、西武鉄道は経営の不透明さがかねてより指摘されていたが、2004年(平成16)、有価証券報告書への虚偽記載が発覚、株式の上場が廃止された。その後西武グループの再編により、2006年設立された持株会社西武ホールディングスの子会社となった。
自動車事業は別会社となっており、不動産以外の事業の比重が比較的大きい。
[和久田康雄]
『由井常彦編著、前田和利・老川慶喜著『堤康次郎』(1996・リブロポート)』▽『『鉄道ピクトリアル4月臨時増刊号 西武鉄道』(2002・鉄道図書刊行会)』
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