要人警護(読み)ようじんけいご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「要人警護」の意味・わかりやすい解説

要人警護
ようじんけいご

政治的目的を背景とする暴力行為等の不法行為(いわゆるテロ行為)や交通事故等の人為的な危害、地震・崖崩(がけくず)れ等の自然発生的な危害などから、要人身辺を守ることにより、要人の安全を確保することを目的とする警察活動をいう。このように、要人を国民一般と区別して特別に保護する理由は、国内要人については、その人の身辺に危害が及んだ場合、国政に重大な障害が生じたり、国民生活に深刻な影響を及ぼしたりするからであり、また、外国の要人については、その身辺の安全が害されるような事案が起こると、わが国の国際的な信用が失墜するとともに、外交上ゆゆしい事態に発展する可能性があるからである。

 現在警護を行っている要人としては、内閣総理大臣、衆・参両院議長、最高裁判所長官、国務大臣等の国内要人のほか、外国要人として、国賓(政府が儀礼を尽くして公式に接遇し、皇室の接遇にもあずかる、外国の国王、大統領等の賓客で、閣議で決定するもの)、公賓(国際礼譲に照らし、相当の接遇を供する外国の皇族、行政府の長等の賓客で、外務大臣が関係各大臣と協議のうえ閣議了解を経て決定するもの)、外交使節団の長等がある。

 警護にあたる警察官は警護員とよばれ、その担当する任務により、要人の直近または周辺に配置される「身辺警護員」、要人の行き先地に事前に配置される「行先地警護員」、要人の通過する沿道に配置される「沿道警護員」、要人の公私邸に配置される「宿舎警護員」等に区分される。このうち、身辺警護員は、要人とつねに行動をともにし、警護の最後の防波堤としての職務を果たすことから、強靭(きょうじん)な体力とともに、豊かな教養と礼儀正しい行動が要求されている。警視庁では、その身辺警護員をSP(セキュリティ・ポリス)とよんでいる。

[桝田好一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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