政府が特定の事業者や産業に対して行っている規制を撤廃、あるいは縮小することをさす。行政改革推進本部の下に置かれた規制緩和委員会が、1999年(平成11)4月にその名称を規制改革委員会に変更して以降、規制手法の変革やそれに伴う新たなルールの創設などを含むものとして、規制改革とよばれることが多い。
一般に政府による規制は、経済的規制と社会的規制に分類される。前者は特定産業への参入者資格・設備基準や、生産物の質・価格の基準などを定めて事業の公正を期するものであり、後者は消費者・労働者などの安全・健康維持、環境保護、災害防止などのための基準を定めてこれを保護するものである。
アメリカのレーガン政権は、1980年代にさまざまな規制緩和(de-regulation)を行い、より自由な競争を実現しようとした。とくに激しかったのが、通信・放送業界、運輸(とくに航空)業界、金融業界であり、電話料金や航空運賃が年ごとに安くなり、銀行にも自由金利とともにさまざまな新商品・サービスが出現するようになった。同時に競争の激化によって多くの企業倒産・失業が発生する弊害も現れた。
日本では、1980年代まで官僚主導で経済秩序が維持されてきたため、実に細かな許認可権限に基づく公的規制(とくに経済的規制)の網が設けられていた。1995年3月末の総務庁調べによる許認可権限は1万0760件、内訳は通産1780件、運輸1607件、農水1400件、大蔵1374件、厚生1221件の順である(省庁名はいずれも当時)。
これら規制が企業活動の自由を制約し消費者の利益にも反するとして、第二次臨時行政調査会(1981~83)以来、規制緩和が再三提言されてきた。同臨調によって国鉄・電々・専売が民営化されたことはよく知られている。ついで第三次行革審は、中期的・総合的な行動計画の策定を求め、1000件を超える規制緩和項目を提示した。これを受けて1995年4月、政府は1995年度から5年間(後に3年間に短縮実施)の規制緩和推進計画(アクションプログラム)を決定、11分野1091項目について緩和実施時期を明示、新設する規制には一定期間後に見直す「サンセット条項」を導入し、さらに計画を毎年度末に見直すこととした。これに基づいて1996年3月に569項目を追加。このなかにはNTT分割があげられ、持株会社を解禁する独占禁止法改正を待って、1999年東西2分割された。さらに1997年3月890項目を加え、同計画は計2823項目となった。うち1287項目(約46%)が1996年10月までに措置済みといわれる。この追加では、外為法の改正(1998年4月施行)による同業務への参入・離脱および内外資本取引の完全自由化が日本版金融ビッグバンの先駆的役割を担うことになった。
こうして規制緩和計画は一段落し、1997年度は各省庁がそこに盛られた緩和策を最終的に検討・実施する仕上げの年となったが、政府・実業界では、まだ不十分で、1998年度以降も緩和を行うべきという声もあった。1998年3月には規制緩和推進三か年計画が閣議決定され、医療・福祉や法務を含む15分野624項目(うち新規の項目327)が盛り込まれた。規制緩和推進三か年計画終了後も規制改革を強力に推進するために、2001年3月に規制改革推進三か年計画が閣議決定された。そこでは、規制改革における基本方針と中長期的な改革課題が示されていた。続いて、規制改革・民間開放推進三か年計画が2004年3月に閣議決定された。この計画では、行政サービスの外部委託など「民間開放」を強調する観点から名称が変更されており、構造改革特区制度(実情にあわなくなった国の規制を特定の地域に限定して改革することによって構造改革を進め、地域を活性化することを目的とする制度)の活用による規制改革の加速化が意図されていた。
こうして、4次にわたる規制改革推進のための政府計画の策定とその推進により、おおよそ7000項目の規制改革が実施されてきた。しかしながら、依然として多くの取り組むべき課題が残っているとして、経済社会の構造改革を進める観点から規制改革のいっそうの推進を図るため、2007年1月に内閣に規制改革推進本部が設置され、同年2月に規制改革推進のための基本方針が策定された。同年6月には規制改革推進のための三か年計画が閣議決定された。この計画の特徴の一つとして、構造改革特区制度および市場化テスト(官民競争入札ともよばれ、さまざまな公共サービスについて官と民がコストやサービスの品質両面で競い、優れたほうが落札するという制度)の活用による、規制改革の加速化が意図されていた。
[一杉哲也・羽田 亨]
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(本庄真 大和総研監査役 / 2007年)
(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)
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