ある番組を放送区域内の人々または世帯の何%が視聴したかを、統計的に推計する数字。通常、テレビ番組の場合をいい、ラジオ番組は聴取率という。放送番組の人気度、CM効果を測定する際の主要な尺度として利用されている。
視聴率には、個人単位のものと世帯単位のものの2種がある。
(1)個人視聴率調査 調査には、日記式調査とPM(ピープル・メーター)による機械式調査の二つがある。日記式調査は、放送区域内に住む一定年齢範囲の個人を住民台帳からランダム・サンプリング(無作為抽出)で一定数選んで視聴記録を記入してもらう。NHKの放送世論調査所が毎年2回実施している全国調査(サンプル数3600)が代表的で、ある1週間につき、その地区のテレビ番組表を配布して日記式に記入してもらい、1週間後に回収する留置(とめおき)調査の方法を採用している。民放テレビの場合は、ビデオ・リサーチ社など市場調査会社が行う調査の結果を利用している。
PMによる機械式個人視聴率調査は、1997年4月1日から関東地区で、それまでの、後述する機械式世帯視聴率調査にかわる主要調査として正式に導入された。ビデオ・リサーチ社とニールセン・ジャパン社の両社が実施している(ニールセン・ジャパン社はAPM=アドバンスドPM方式を採用)。サンプル世帯(ビデオ・リサーチ社の場合600世帯)の家族ひとりひとりに指定されたボタン操作(オンとオフ)を行うことにより、個人の視聴状況を記録している。なお、この機械式個人視聴率調査はボタン操作を必要とするため、まだ完全な信頼を確保しているとはいえない。そのため、テレビ広告取引の現場では個人視聴率データはあくまで参考データとして利用され、媒体力を測る主要尺度は、同調査の集計から算出される世帯視聴率が適用されている。
(2)世帯視聴率調査 ビデオ・リサーチ社が関西、名古屋、札幌、その他大都市地域でそれぞれ実施している機械式調査が代表的である。この機械式調査には、オンライン方式とメーター方式の二つの方式がある。オンライン方式は、サンプル世帯のテレビ受像機に記憶機能をもつ測定メーターを設置し、その装置内に蓄積された30秒ごとの視聴データをコンピュータにより電話回線を通じて、自動的に回収して集計するシステムであり、ビデオ・リサーチ社は1997年(平成9)4月現在、関西など7地区で実施している。またメーター方式は、受像機に設置した測定機(ビデオ・メーター)に内蔵されたテープに自動的に視聴行動が記憶され、1週間に一度、担当者が訪問してテープを回収、集計する方式で、オンライン方式採用地区以外の基幹都市でビデオ・リサーチ、ニールセン両社が実施している。
ある一定時間帯にどれだけの人がテレビを視聴しているかをみるときに、セッツ・イン・ユース(SIU)が用いられる。これは、その時間帯における世帯視聴率を合計したもので、テレビ媒体の広告価値を示す指標として用いられ、電波料の料金額設定などの基準となる。ただ、2台以上の受像機を所有する家庭が増加したのに伴い、複数所有世帯の受像機が1台でも受信されていれば受信世帯とみなすHUT(home using television)が、SIUにかわって使われるケースが多くなっている。
現時点において視聴者の番組視聴行動を客観的に判断・推定するデータが、この視聴率しかないところから、各局とも視聴率獲得に走るあまり、大衆受けをねらった娯楽番組の氾濫(はんらん)という弊害を生み出している、といった批判も多く、番組の質的な評価を計る尺度の開発が、テレビ界の課題とされている。
[伊豫田康弘]
『日本民間放送連盟放送研究所編・刊『視聴率の見かた』(1967)』▽『藤平芳紀著『視聴率'98』(1998・大空社)』▽『平島康久著『検証 視聴率』(1993・日本能率協会マネージメントセンター)』
どのテレビ局のどの番組をどれほどの人々が見たかについての推測値。ラジオは聴取率とよび,テレビの視聴率と合わせて聴視率という。ラジオはいまではパーソナル化が進行していて,調査はほとんどなされていない。ある番組の放送エリア(関東地区,関西地区などの調査地域に分ける)のテレビ受像機保有世帯を母集団(=100%)とし,その番組視聴世帯数をパーセントで表示する。視聴率1%はほぼ100万人が視聴していることに相当する,といわれている。標本世帯数は1地区当り300件前後。主要地区においては,受像機のスイッチが入っているチャンネルを電気的に計測記録するオーディオメーターによって,全日・全番組のデータが収集されている。このほか機械式メーターや日記調査が行われている地区もある。視聴率調査を専門としている会社として,ビデオリサーチ社(本社東京。1962年に電通,TBSほかの出資で設立)とニールセン日本支社(東京。1961年設立。本社シカゴ)がある。もともとこの視聴率調査はアメリカ最大の市場調査会社ニールセン社(1923年創立)が1942年に始めたものである。広告効果の数値として広告主は受け取ったのである。またNHKも年数回個人単位の視聴率を調査し,発表している。ただ世帯視聴率と個人視聴率は測り方が違うので,同列のものとして扱うことはできない。
商業放送では,広告料金が視聴率実績(週間,土日,月間,通季などのプライムタイムの番組の視聴率平均,および全日平均など)に連動して決まる傾向があるため,高い平均視聴率を獲得することがテレビ局間の競争の最大目標となっている(視聴率戦争)。このような視聴率重視の風潮に対しては,番組の継続,打切りが番組の質よりも視聴率を指標として決められる点や,視聴率調査の標本数が少なくて信用できないという点で,視聴率批判,視聴率至上主義批判が繰り返されてきた。しかし,日本のみならず海外でも,視聴率調査を補完するための質的調査システムが何種類も開発・提案されてきたが,まだ定着するにいたっていない。
執筆者:野崎 茂
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(隈元信一 朝日新聞記者 / 2007年)
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…夜間(一般的に午後7時以降)の視聴好適時間を重視するアメリカの放送型式が,第2次大戦後日本に導入され,また民間放送の開始によって一般的となり,この言葉を生んだ。ゴールデンアワーは,第1に,視聴者の視聴好適時間(一般的には夜間)であり,視聴率も一日で最も高い。第2に,主要なニュース,報道番組,人気娯楽番組など,放送局が重要番組を編成している時間帯である。…
※「視聴率」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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