改訂新版 世界大百科事典 「訴額」の意味・わかりやすい解説
訴額 (そがく)
民事訴訟において,原告によって主張され,被告によって争われている権利関係のことを訴訟物というが,この権利関係が原告の主張どおりに判決によって認められた場合に,原告にもたらされる利益を,金銭的に評価した額を訴額という。つまり,訴訟物の価額,または訴訟の目的の価額のことである。
訴額は,訴え提起などのとき手数料として納付すべき額の定算の基礎となる(民事訴訟費用等に関する法律4条1項)。また訴額は第一審の裁判所が,簡易裁判所か地方裁判所かを決める標準にもなる(裁判所法33条1項1号)。ただし,訴額の算定ができるのは財産権上の請求についてだけであり,たとえば幼児引渡しなどの非財産権上の請求についてはそれができないので,その訴額を90万円を超えるものとみなし(民事訴訟法8条2項),手数料については95万円とみなしている(民事訴訟費用等に関する法律4条2項)。もっとも財産権上のものでも,訴額の算定がきわめて困難な場合が少なくない。
執筆者:坂口 裕英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報