読史方輿紀要(読み)とくしほうよきよう(その他表記)Dú shǐ fāng yú jì yào

改訂新版 世界大百科事典 「読史方輿紀要」の意味・わかりやすい解説

読史方輿紀要 (とくしほうよきよう)
Dú shǐ fāng yú jì yào

1678年(康煕17),顧祖禹(こそう)(1631-92,字は景範,無錫の人)が著した中国の歴史地理書。130巻。最初の9巻は太古から明代までの歴代州県形勢,10巻から123巻までは明代の全国15省の各府州県について,境域,行政沿革山川聚落,史跡,寺観などの歴史地理を叙述,終りの7巻は河川水系と分野論とする。付録として同じ著者の,全国と各省ならびに,北辺,黄河,漕運などの地図《輿図要覧》が付く。顧祖禹は最初は明朝に節を立て清に仕えず,明・清の交代と騒乱は,地理を知らず政治,兵備を行ったためと主張した。この書はしたがって,国都,山川険易,攻守などの論議も含み,全体が体系的,有機的に構成されており,旧中国の個人の歴史地理書としては最高位にある。資料は《資治通鑑》《春秋左氏伝》などの注釈書から集める。この書の欠は清の許鴻磐(きよこうばん)の《方輿考証》100巻が補う。日本の青山定雄に詳細な索引《支那歴代地名要覧》がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「読史方輿紀要」の意味・わかりやすい解説

読史方輿紀要
どくしほうよきよう

中国の明(みん)末・清(しん)初の地理学者の顧祖禹(こそう)(1631―92)がつくった歴史地理書。130巻。初めの歴代州域形勢九巻は、全中国の境域、行政区画の変遷を年代順に記した概論ともいうべき部分。あとは各論で、明代の行政区画別に自然、人文の各事項を記述し、終わりに河川、運河海道などを付説する。付録の「輿図(よず)要覧」四巻は明代の行政、軍事、地形などの諸図とその説明からなっている。中国の歴史地理書の最大傑作とされる。1678年に完成したが、著者は満州民族である清の支配に抗し、あくまで明の遺臣としての立場で本書をつくった。したがって、地理を基礎に歴代王朝の興亡を論ずるにあたっても、明の滅亡した原因を反省するとともに、清を野蛮な敵として扱っている。初め写本で伝えられたが、印刷されたものでは、清に不適当な字句が改削されているのに注意しなければならない。

日比野丈夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「読史方輿紀要」の意味・わかりやすい解説

読史方輿紀要
どくしほうよきよう
Du-shi fang-yu ji-yao; Tu-shih fang-yü chi-yao

中国,清初に完成した歴史地理書。顧祖禹の撰。本編 130巻,付録輿図要覧4巻,首1巻。康煕 17 (1678) 年完成。広く古今の史書を参考にして明代までの中国全土にわたる地理的形勢,歴代諸王朝の地方行政区画の沿革,山川,関津,古跡などについて詳述した名著。輿図要覧は総図,地方図などから成る。

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