主として艦艇または商船の対潜・対空護衛および対潜掃討を任務とする、駆逐艦、フリゲート、コルベットなど、基準排水量700~5000トン程度の軽快な水上艦艇の総称。戦闘の局面に応じて、水上打撃戦、上陸支援、陸地攻撃、哨戒(しょうかい)・監視なども行う。
海上自衛隊は、750トン以上の対潜・対空・水上打撃戦のすべて、またはそのいずれかを行い、速力25~32ノットで航洋性を有する水上艦艇を、護衛艦に分類しており、2009年(平成21)に完成したヘリコプター空母型の「ひゅうが」級(基準排水量1万3950トン)までもこれに含めている。
第一次世界大戦でイギリスが建造した対潜兼掃海用のスループが、最初の護衛艦である。その後イギリスは、1920年代末期から海洋警備兼船団護衛用に改良設計型スループの建造を始めた。第二次世界大戦直前より、航空機の発達に対応して対空護衛が必要となり、対潜・対空両護衛任務、またはそのいずれかを重視した艦がつくられるようになった。イギリスは1937年に、洋上で両護衛任務にあたるエスコート(護衛)スループを建造、引き続き大戦直前から戦中にかけて、より高性能・強兵装の護衛駆逐艦、小型低速簡易構造の船団護衛艦のコルベット、これより大型高速で兵装を強化したフリゲートを多数建造し、アメリカ、カナダも同艦種を量産して、主として大西洋での船団護衛に使用した。戦前より戦中にかけて同目的の艦を、日本は海防艦、フランスはアビソ(通報艦)、イタリアは護衛水雷艇、駆潜コルベットの名称で建造し、対潜・護衛作戦に用いた。
従来の海軍戦略では、護衛艦はきわめて微力な補助的性格の存在とみなされていたが、第二次世界大戦での戦闘様式の変化により、戦争遂行上欠くことのできない重要な艦種となった。第二次世界大戦後、潜水艦と航空機の性能向上、威力の増大により、さらに重要な海上兵力となり、進歩・発展を続けるフリゲートと、水上魚雷戦の機会がなくなり対潜・対空戦用が主任務となった駆逐艦が、その主体をなしている。
アメリカは護衛駆逐艦を護衛艦と改称し、船団護衛用の艦を建造したが、1975年にフリゲートに艦種変更した。1970年代から近海での商船護衛、沿岸哨戒用などに1000トン前後のコルベットがふたたび建造されだした。
最近の護衛艦には、主として空母機動部隊に随伴する大型高速艦と、より低速の艦隊や船団を護衛する比較的小型の中速艦とがある。海上自衛隊が1993年から2008年に完成させた「こんごう」級、「あたご」級6隻は、高性能レーダー、コンピュータ、対空ミサイルなどにより、多数の空中目標に対する捜索・探知・情報処理・攻撃を瞬時に同時自動処理するイージス・システムAegis Systemを備えた艦防防空中枢艦で、前者の範疇(はんちゅう)に属する。後者も対空・対艦ミサイルやヘリコプターの採用による汎用(はんよう)戦闘艦になりつつある。
[阿部安雄]
『『現代の軍艦』(1970・原書房)』▽『『世界の艦船第181号 特集 今日の護衛艦』(1972・海人社)』▽『『世界の艦船第192号 特集 海上護衛戦』(1973・海人社)』▽『『世界の艦船第380号 特集 護衛艦建造史』(1987・海人社)』▽『堀元美・江畑謙介著『新・現代の軍艦』(1987・原書房)』▽『『世界の艦船第503号 特集 護衛艦の戦闘情報処理システム』(1995・海人社)』▽『『世界の艦船第537号 特集 新鋭護衛艦のメカニズム』(1998・海人社)』▽『『世界の艦船第599号 特集 現代護衛艦論』(2002・海人社)』▽『Stephen SaundersJane's Fighting Ships 2010-2011(2010, Jane's Information Group)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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