農林水産業の発展を目的に1923年に「産業組合中央金庫」として設立された金融機関。43年に農林中央金庫に改称した。全国各地の農業協同組合(JA)や漁業協同組合(JF)が出資している。JAやJFが地域で集めた貯金を原資に、債券や株式で運用したり、農林水産業の関連企業に融資したりしている。本店は東京都千代田区。
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農林水産業関係の組合金融の中央機関で、JA(農業協同組合)バンクシステムの中心機関でもある。農林中金と略称される。1923年(大正12)12月に政府および農業協同組合の前身である産業組合とその連合会の出資によって産業組合中央金庫として設立され、1938年(昭和13)に水産関係の協同組合系統を、1943年に森林組合系統を、それぞれ出資団体に加え、1943年9月に現制度に改組された。政府出資は1959年(昭和34)に償却され、以後は出資していないが、その業務内容は農林中央金庫法に規定されており、農林水産大臣および内閣総理大臣の監督下に置かれている。
農林中金は、債券発行と所属団体などからの預金を主たる原資とし、所属団体への貸付、手形割引、為替(かわせ)業務、証券業務、関連産業への融資、有価証券などの保護預り、コールローン、関連金融機関の委託業務などを行っている。その目的は、所属団体の地域的、時期的な資金構成の過不足を総合的に調整することにある。都市化の進展などによる土地の売却代金や兼業収入の増大に伴い農業協同組合の預金が急増し、農林中金の資金量は拡大している。そこで、2000年(平成12)10月のJA大会で、JAバンクシステムの構築が確認された。これは競争力の強化と信頼性の向上を図るため、JA・信用農業協同組合連合会(信農連)・農林中金が全体として一つの金融機関として機能する農協系統信用事業をつくることで、良質で高度な金融サービスを提供すること、実効性のある破綻(はたん)未然防止策を確立することがその目的である。系統内セーフティーネット(貯金保険制度、相互援助制度)の整備と自己資本比率が8%を下回ったときに改善措置をとる破綻未然防止システムからなる。農林中金は系統預金と農林債券により集めた資金を、系統貸出、地方公共団体への貸出、公団・事業団・電力会社等への貸出、有価証券運用・短期金融市場運用などで有数の取引者として機能している。2008年3月末現在、自己資本比率12.47%、資本金2兆0160億円、店舗数国内39、海外5、従業員数2944人、資産額は61兆0855億円。
[村本 孜]
『農林中央金庫編・刊『農林中央金庫70年の歩み』(1996)』
農林漁業者の団体を構成員とする農林系統金融の中央機関。略称,農林中金。1923年に政府および農業協同組合の前身である産業組合とその連合会の出資によって,産業組合中央金庫として設立され,43年に農林中央金庫と改称された。59年には政府出資は皆無となったが,その業務内容は農林中央金庫法に規定されており,農林水産大臣および大蔵大臣の監督のもとにおかれている。資金調達はおもに預金と農林債券の発行による。預金のほとんどは農業協同組合,漁業協同組合などの窓口から集まる系統預金である。資金運用は,系統団体,農林水産業者に対する貸出しのほか,農林水産業関連の一般企業への貸出しおよび国債などの有価証券保有である。公社債市場,短資市場のリーディング・バンクとなっている。総資産額70兆8188億円,預金残高40兆4753億円(2006年3月末現在)。
→農業金融
執筆者:荏開津 典生
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…これには組合系統金融(単に系統金融ともいう)とそれを補完する制度金融(〈政策金融〉の項参照)とがある。前者の頂点に立つのが農林中央金庫(農林中金),後者のそれが農林漁業金融公庫(農林公庫)であり,大手資本には一般金融機関が応ずる。戦前期からの歴史をもつ系統金融機関および農林公庫は,1950年代前半に制度的骨組みを整備し,高度成長期に躍進する。…
…都道府県段階の連合会は全国に510ある(1996年3月末現在)。全国連合会には各県の連合会の全国機関として,それぞれ全農(全国農業協同組合連合会),農林中央金庫,全共連(全国共済農業協同組合連合会),全中(全国農業協同組合中央会。〈農協中央会〉の項参照)がある。…
…23年には産業組合中央金庫が設立され,郡ないし県の信用組合連合会を含めて,組合系統金融組織が成立した。現在では,産業組合は農業協同組合,信用組合連合会は信用農業協同組合連合会,産業組合中央金庫は農林中央金庫となっており,市町村,都道府県,全国の3段階を結ぶ組合系統農業金融機関をなしている。 組合系統金融(農林漁業の協同組合組織の金融)は,農家間の相互金融を原則とし,全国の農村に事務所をもって農家の貯金を吸収しまた貸付けを行っている(組合金融,系統金融とも呼ばれる)。…
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