過労死等防止対策推進法(読み)カロウシトウボウシタイサクスイシンホウ

デジタル大辞泉 「過労死等防止対策推進法」の意味・読み・例文・類語

かろうしとうぼうしたいさくすいしん‐ほう〔クワラウトウバウシタイサクスイシンハフ〕【過労死等防止対策推進法】

過労死等の防止に向けた対策推進を国の責務とし、必要な調査研究・啓発・相談体制の整備民間団体への支援などを行うことを定めた法律。平成26年(2014)11月施行。過労死防止法

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共同通信ニュース用語解説 「過労死等防止対策推進法」の解説

過労死等防止対策推進法

過労死や過労自殺をなくすため防止対策を国の責務と定め、2014年11月に施行された。「過労死等」について、業務における過重な負担が引き起こした脳・心臓疾患が原因の死亡や精神障害による自殺などと定義。対策として国や自治体は/(1)/過労死や過重労働に関する調査研究/(2)/啓発/(3)/相談体制の整備/(4)/民間団体の活動支援―に取り組むとした。政府は法律に基づき15年、将来的な「過労死ゼロ」を目指すとした対策大綱を閣議決定。過労死をなくすという理念を示すのが主な目的で、規制罰則はない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「過労死等防止対策推進法」の意味・わかりやすい解説

過労死等防止対策推進法
かろうしとうぼうしたいさくすいしんほう

国に過労死の防止対策を進める責任があると明記し、過労死のない社会を目ざす法律。超党派議員立法として2014年(平成26)の通常国会に提案され、同年6月に成立し、同年11月に施行された。平成26年法律第100号。過労死という文言の入った日本初の法律である。略称は「過労死防止法」。本法は過労死を「業務における過重な負荷による脳血管疾患若(も)しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」と定義。防止対策として(1)過労死実態の調査研究、(2)相談体制の整備、(3)啓発活動、(4)民間団体の活動に対する支援、を規定した。

 調査研究では、過労死の実態や対策に関する過労死報告書(白書)を毎年まとめるよう政府に義務づけており、2014年11月に厚生労働省所管の独立行政法人労働者健康安全機構の労働安全衛生総合研究所内に「過労死等調査研究センター」が新設された。また政府や自治体に対し、相談窓口を整備し、民間の団体が行う過労死防止活動を支援することを求めている。加えて、民間の電話相談窓口「過労死・過労自殺110番」や、厚生労働省による「過重労働解消相談ダイヤル」なども実施されている。啓発活動としては毎年11月を過労死等防止啓発月間と定め、さらに防止策をまとめた大綱づくりを政府に義務づけた。ただし、本法は、長時間労働や不規則な勤務体制の規制などには触れておらず、過労死防止対策の実効性をどう高めるかが課題とされている。

 過労死は1980年代後半に社会問題化し、労災認定を求めて国を訴える遺族が相次いだ。2008年には過労死弁護団全国連絡会議が過労死防止に向けた基本法制定を目ざすと決議し、過労死等防止対策推進法の制定にこぎつけた。過労死の労災認定は2014年度まで13年連続で年間100件を超えており、過労などで精神疾患を発症したとして労災申請をした数は2015年度に1515件と過去最高を更新した。

[矢野 武 2015年4月17日]

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