遠心分離機(読み)エンシンブンリキ(英語表記)centrifuge
centrifugal separator

デジタル大辞泉 「遠心分離機」の意味・読み・例文・類語

えんしん‐ぶんりき〔ヱンシン‐〕【遠心分離機/遠心分離器】

遠心力を利用して、密度の異なる2種の液体、または液体と固体などの混合物を分離する装置。遠心機

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共同通信ニュース用語解説 「遠心分離機」の解説

遠心分離機

回転による遠心力を用いて、比重が異なる物質を分離させる装置。ウラン濃縮では、天然ウラン鉱石にわずかに含まれ、核分裂を起こすウラン235を濃縮するために使う。3~5%の低濃縮ウランは原発燃料に、90%以上の高濃縮ウラン核兵器に用いられる。イランは核兵器開発、保有の意思はないと繰り返し表明しているが、濃縮能力を高めるためとして次世代の遠心分離機の開発に取り組んでいる。(テヘラン共同)

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精選版 日本国語大辞典 「遠心分離機」の意味・読み・例文・類語

えんしん‐ぶんりきヱンシン‥【遠心分離機】

  1. 〘 名詞 〙 回転による遠心力を利用して、固体と液体、または比重の異なる液体などを分離する装置。分離、分析、定量、濾過、脱水、濃縮、精製などの目的に広く用いられる。遠心機。
    1. [初出の実例]「微研の部屋で遠心分離器をいじったり」(出典:春の城(1952)〈阿川弘之〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「遠心分離機」の意味・わかりやすい解説

遠心分離機 (えんしんぶんりき)
centrifuge
centrifugal separator

回転する遠心力を利用して,混合状態にある固体と液体,液体と液体などを分離する機械。基本的な構造は,家庭にある洗濯物用の脱水機と同じで,回転する容器(ボウルという)とこれを囲うケーシングとから成る。回転容器はふつう円筒形で,上述の脱水機のように筒壁部分に孔のあるものと,孔のないものの2種ある。前者は結晶や沈殿物を含む液体(懸濁液スラリー)の分離用,後者は懸濁液だけでなく,2相の状態で共存する液体混合物(乳濁液)の分離の両用がある。いずれも混合状態にある成分間に密度差がある場合,その分離に利用される機械である。

一般に重力の作用下でも,液体中に分散するこれより密度の小さい固体あるいは液体粒子は浮き,密度の大きい粒子は沈む。しかし,重力の大きさは変えられず,密度差や粒子の大きさが小さい場合には,分離が不十分であったり,長時間を要したりするうえ,大量処理には広い面積が必要となる。この問題の解決に,重力に代わる強い遠心力の場を回転容器で発生し,これに給液してそれぞれの成分液体あるいは固液に分ける操作を行う。遠心分離機は,小さい所要床面積で大量処理が可能のうえ,揮発性,引火性物質に対する密閉措置,分離した固体などの排出,洗浄などの自動化などによって,工業用はもちろん下水や排水の処理にも利用されるようになった。

 遠心分離機の性能の一つは遠心力の強さで,ふつう回転速度(工業用は数百~数万rpm)の代りに重力の倍数で表し,これを遠心効果という。処理液を連続的に供給して行う連続式と,一定量ごとに処理を行う回分式とがあり,また目的,型式によっても遠心効果の大きさは広い範囲で異なる。工業用のそれは,数百から2万~3万の範囲にある。分析,重合度測定用などでは数万程度の機械もある。

 遠心分離機は,回転容器内での分離の機構,内容によって遠心沈降機,遠心ろ過機,遠心脱水機および特殊型式に分類される。

主として液体中に存在する低濃度の固体粒子や乳濁液を処理する目的の機械で,いずれも回転容器は孔なし(ソリッド・ボウル)である。円筒(シャープレス)型,分離板(ド・ラバル)型がその代表的型式として有名である。いずれも回転軸が垂直で,主として液-液系混合物の処理用であるが,分離板型は泥漿(でいしよう),スラリーの固形分の濃縮を目的とした改良型式もある。

 最近ではスクリューデカンターという型式が流行していて,横型の回転円筒または円錐で,その中心にスクリューを配した機械である。スクリューと円筒,円錐とは回転速度に若干差があり,これによって固形物を液出口の反対の方向に運び,排出する。

 円筒型は潤滑油中に混じった海水の除去,分離板型は牛乳中のクリーム分の分離などでつとに有名,また広く工業用としても使われている。スクリューデカンターは,砂糖,塩,硫安などの結晶と母液との分離のほか,下水,排水中の固形分(スラッジ)などの分離にも利用される。

筒壁に多数の孔をもつ回転円筒にふつうろ(濾)布を内張りし,これにスラリーを供給して固液を分離する目的の遠心分離機である。この容器をバスケットと呼び,この型式をバスケット型と呼ぶ。固形物は円筒の内壁にケーキとして分離され,場合によっては水で洗浄した後,手動または自動化されたかきとり機で排出される。一般にろ過,洗浄,脱水,ケーキかきとりの一連の操作サイクルを繰り返す。これを作業者の手動で行う回分式と,自動的に行う自動回分式とがある。工業用として広く結晶類の分離に用いられるが,ろ過だけでなく,脱水まで可能な型式が多い。ただし,遠心効果が低く,1/10mm以下の粒子の脱水はやや無理である。

機械の主要部は遠心ろ過機と同じ構造で,処理対象も固液系混合物。ろ過に比べて比較的大きな固体粒子と液とを分離する目的に利用される。なお,ろ過と脱水との差異は,正確には堆積した粒子間の空隙に存在する液体を除去することを脱水(正確には脱液),粒子間の空隙が液体で満たされている状態までの過程,操作をろ過という。

 家庭で使っている洗濯用の脱水機はいわば回分式遠心脱水機で,工業用はこれを連続的に行えるよう改良した型式が用いられ,その代表的な型式に押出板(エッシャー=ウィス)型,自動排出(ハイン=レーマン)型がある。自動排出型は倒立円錐形のバスケットにスラリーを送り,その上縁から脱水した固体を飛び出させる最も簡単な型式で,最近広く利用されている。

高粘度液体中に分散浮遊した微小な泡は,重力場では抜けきらない。これを回転円筒(孔なし)中に入れ,超音波を印加して,微細な泡を除去する遠心分離機。

 濃縮ウラン用ガス遠心分離機では,常温で気体の六フッ化ウランUF6を高速回転円筒内に送り,中心付近から235UF6を,筒壁付近から238UF6をそれぞれわずかながら濃縮した状態でとり出す。これを繰り返し行って(多段化),原子炉用の濃縮ウランを濃縮,分離する。経済的には,2万以上の遠心効果,台数にして数万台以上が必要になる。なお,試験用,分析用には超遠心機が用いられる。
超遠心機
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遠心分離機」の意味・わかりやすい解説

遠心分離機
えんしんぶんりき

遠心力を利用して、混合している液体と固体を分離したり、または濾過(ろか)する機械。水分を含んでいる洗濯物から水分を取り除くために、電気洗濯機に付属している回転する円筒(脱水機)も遠心分離機の一種である。遠心分離機は回転する容器からできている。このうち回転円筒に穴のあいていないものは、微粒子、コロイドなどを比重の差を利用して分離するのに使用される。たとえば牛乳の脱脂、血漿(けっしょう)の分離などである。この際は毎分5000~1万回転の高速回転をする。脱水機のように円筒に穴のあいているものは、濾過用として使われ、遠心濾過機ともいう。砂糖の結晶分離、ジュースの液を清澄にするときなどに利用されている。

 遠心分離機は、重力の何倍の遠心力を生じるかによってその性能が表される。これを遠心効果とよんでいる。すなわち、
 遠心効果=(遠心加速度)/(重力の加速度)である。

 遠心力の大きさは、質量×半径×(角速度)2で表されるから、したがって遠心効果は、遠心分離機の半径と回転速度によって決まる。回転速度は毎分1000回転から数万回転のものまである。遠心効果100以下のものを低速遠心分離機、1万程度のものを高速遠心分離機、10万以上のものを超遠心分離機という。遠心分離機は、選鉱、製薬、食品など工業用に広く使用されている。

[中山秀太郎]


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百科事典マイペディア 「遠心分離機」の意味・わかりやすい解説

遠心分離機【えんしんぶんりき】

回転による遠心力を利用して液体中に懸濁している固体粒子や比重の異なる液体を分離する装置。使用目的により2種に大別される。(1)遠心沈降機。回転円筒に穴がなく,比重の差を利用して乳濁液やコロイド状物質の分離を行う。牛乳の脱脂,血液からの血漿(けっしょう)分離などに利用。(2)遠心ろ過機(用途によっては遠心脱水機とも)。回転円筒の側壁に多くの細孔があり,金網やろ布を張ってある。固体と液体の分離を目的とし,砂糖や硫安の結晶の母液からの分離などに利用。洗濯機用の脱水機もこの例。一般に遠心分離機では重力の数千〜数万倍の遠心力が働くため処理能力がきわめて大きく,床面積も少なくてすむ。→超遠心機
→関連項目養蜂

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遠心分離機」の意味・わかりやすい解説

遠心分離機
えんしんぶんりき
centrifuge

高速度で回転している遠心力場では,重力加速度よりはるかに大きい遠心加速度が作用する。この遠心力場で行う固-液 (固体と液体) ,液-液などの機械的分離を行う機械をいう。おもなものに遠心脱水機 centrifugal filterと,遠心沈降機 centrifugal settling machineがある。 (1) 遠心脱水機は適当なろ材をつけた有孔板でつくられた回転円筒の内部に,たとえば結晶粒を含んだ液体を入れて高速で回転すると,液体のみがろ材を通して筒の外部に放出される。 (2) 遠心沈降機は孔のない回転円筒を回転させると,比重の大きい結晶粒などは円周側に,液体は中心部に集る作用を利用して分離する。

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世界大百科事典(旧版)内の遠心分離機の言及

【未来派】より

…ロシア語ではfuturizm。D.D.ブルリューク,マヤコーフスキー,フレーブニコフ,A.E.クルチョーヌイフ,V.V.カーメンスキーらを中心とする〈立体未来派kubofuturizm〉(別名〈ギレヤGileya〉),I.セベリャーニンらの〈自我未来派egofuturizm〉,V.G.シェルシェネビチの〈詩の中二階mezonin poezii〉,パステルナーク,アセーエフに代表される〈遠心分離機tsentrifuga〉など,おもに四つのグループが活動した。なかでも立体未来派は,過去の文化的遺産の全面的な否定を旗印に,真に自立的な芸術の創造をめざし,M.F.ラリオーノフ,K.S.マレービチら同時代の前衛画家たちとも連帯しながら《裁判官の飼育場》(1910),《社会の趣味への平手打ち》(1912)など数多くの詩集を刊行した。…

【超遠心機】より

…限外遠心機ともいう。一般に,毎分回転数2万回以上,遠心力加速度が重力加速度の数万倍以上に達する遠心分離機をいう。T.スベドベリの創案によるもので,高分子物質などを溶液中で沈降させるのに使用される。…

※「遠心分離機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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