日本にある有形文化財のうち、とくに重要とみなされたもの。「重文」と略称される。1950年(昭和25)に制定された「文化財保護法」に基づき、文部科学大臣が、絵画、彫刻、工芸品、考古資料、建造物などの遺品中、芸術上・学術上などの見地からとくに価値の高いものとして指定したものをいう。1949年の法隆寺金堂の火災を機に、かつての「国宝保存法」などにかわってこの制度が成立、同時に従来の国宝はすべて重要文化財と改められた。一方その後も、これ以外のものから新たに選考して重要文化財が追加指定されている。これら重文のうち、さらに重要と認められたものが今日の新国宝である(2019年7月時点で、重文は1万3232件、うち国宝は1116件)。重要文化財(国宝もその一部)はかならず管理の責任者が定められ、また所有者や現状を変更する際には許可を必要とするが、同時に国からその保存に関する補助を受けることができる。
[村重 寧]
『文化庁監修、毎日新聞社図書編集部編『国宝・重要文化財大全』1~12巻・別巻(1997~2000・毎日新聞社)』
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有形文化財のうち,歴史上または芸術・学術上に価値が高いものとして国が指定した文化財。略称は重文(じゅうぶん)。1950年(昭和25)制定の文化財保護法により,それ以前の古社寺保存法・国宝保存法で国宝に指定されたもの,および毎年新たに指定されたものからなる。建造物と美術工芸品からなり,とくに価値の高いものは国宝に指定。文部科学大臣が指定し,文化庁が所管。
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…美術,工芸,書跡・典籍,考古資料,歴史資料,建造物など国が指定する重要文化財のうち,とくに製作がすぐれ,学術的価値が高いもの,かけがえがなく歴史上きわめて意義が深いものを,文部大臣が国宝に指定する。その規準は1950年制定の文化財保護法および75年の文化財保護法施行令に定められており,その事務は,はじめ文化財保護委員会が担当したが,68年に文化庁が発足してからはそこが主務している。…
…指定には段階をとるものがある。美術工芸品,建造物は,国宝および重要文化財の2段階の指定を行い,史跡,名勝では,とくに重要なものを特別史跡,特別名勝に指定する。指定は単一に行うものも多いが,その性格によって,例えば高松塚古墳では壁画を重要文化財,古墳全体を史跡に,慈照寺(銀閣寺)庭園は特別名勝と特別史跡,高千穂峡谷は名勝と天然記念物というように,二重に指定することもままみられる。…
…この法律にいう文化財は,有形文化財,無形文化財,民俗文化財,記念物および伝統的建造物群に分かれる(2条)。文部大臣は,〈有形文化財のうち重要なもの〉を重要文化財に,〈重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので,たぐいない国民の宝たるもの〉を国宝に指定することができる(27条)。また,文部大臣は,〈無形文化財のうち重要なもの〉を重要無形文化財に,〈有形の民俗文化財のうち特に重要なもの〉を重要有形民俗文化財に,〈無形の民俗文化財のうち特に重要なもの〉を重要無形民俗文化財に,〈記念物のうち重要なもの〉を史跡,名勝または天然記念物(〈史跡名勝天然記念物〉と総称する)に,かつ,〈史跡名勝天然記念物のうち特に重要なもの〉を特別史跡,特別名勝または特別天然記念物に,それぞれ指定することができる(特別史跡名勝天然記念物。…
※「重要文化財」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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