合議体としての内閣の会議。議院内閣制のもとでは国家行政の最高意思決定機関であり,総理大臣が主宰する。もっとも日本では明治10年代に天皇の閣議臨御の例が多く,内閣制の母国イギリスでも18世紀初頭までは国王の閣議出席が支配的だった。アメリカやフランス等の大統領主宰型閣議はこの伝統の延長にある。天皇の閣議臨御は明治憲法体制発足後まれになるが,1945年の敗戦まで宮中で開かれた御前会議は閣議臨御の一変種とみることができる。君主が閣議に出席しなくなる理由として,一般には,国家行政の膨張,議会制や国民意識の伸張,政党制の定着,君主個人の政治能力の不安定等が挙げられ,とくに日本の場合,臣下に統治実務をゆだねることを名君の条件とする儒教的伝統がヨーロッパの立憲王政論と習合したという事情もある。これらの結果,国政の効果的運営と世襲君主制の安定にとって,民意を代表する議会政治家に閣議をゆだねることが最も適切だとする考え方が広く受容されるに至った。現行の内閣法(1947公布)は内閣が職権を行うのは閣議によると規定するが(4条),議事手続の定めはなく慣行による。週2回の定例閣議のほかに臨時閣議もあり,ともに全閣僚の出席が原則。しかし緊急時や定例・定型的事務決裁等には,閣議書を持ち回って閣僚の署名をとる,持回り閣議も行われる。意思決定は第2次大戦以前から全会一致が慣例である。意思決定の方式には閣議決定と閣議了解の別があり,法律に閣議を経るべき定めのある事項は当然に閣議決定される。その他の事項の振分けは事の性質に応じて事務慣例に従い行われるが,実質効力に大差はない。閣議報告事項に関し閣議了承という俗称も用いられる。閣議は秘密会で事務的運営の中心は内閣官房長官(国務大臣)にある。公式には国家行政の最高意思決定体だが,政党や行政機構の肥大化の結果,与党内関係機関,各省庁間協議,事務次官会議,あるいは関係閣僚会議等で行われた実質決定の追認に終わる傾向が顕著である。
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執筆者:水谷 三公
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内閣が、その職務を行うにあたり、自らの意思を決定するために開く会議をいう。内閣総理大臣が主宰する。すべての大臣は、いかなる案件でも、内閣総理大臣に提出して閣議を求めることができる(内閣法4条)。
閣議の議事については、すべて慣習法で定まっており、そのうちとくに重要なのは、閣議の議事が全会一致で決せられること、および閣議の内容について高度の秘密が要求されていること、の2点である。閣議の秘密を守ることは、それに列席する各大臣の重大な義務であり、彼らが大臣を辞めても、その秘密は守らなければならないと考えられている。また公の合議における議事は過半数で決するのが通例であるが、閣議についてはとくに全会一致で決すべきものとされているのは、内閣が連帯して国会に責任を負い、統一的な行動をとる必要があるためである。全会一致主義は通常、少数者の発言に過当な重さを与え、閣内の統合力が弱くなるおそれがある。そこで、日本国憲法は、内閣総理大臣に国務大臣罷免権を与え、この弊害を防ぐことにしている。閣議には、毎週の定日に開かれる定例閣議と、必要に応じて招集される臨時閣議とがある。各大臣が現実に集会して行われるのを原則とするが、案件が緊急の決定を要し、かつ比較的軽微で、意見の一致が得られることが明確な場合、便法として書類回付による「持回り閣議」も認められている。なお、意思決定の方法には、憲法、法律に定められた職務権限事項や重要政策事項について行われる「閣議決定」と、比較的軽微な事項で行政各部の連絡・統一を図るうえで適当と考えられる場合に行われる「閣議了解」とがある。このほか各主任大臣がその所管行政について閣議に報告する「閣議報告」がある。
[池田政章]
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(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)
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…少数有力閣僚で構成され,全閣僚の閣議に代わり国政全般の方針決定や重要諸政策の調整にあたる内閣内の内閣。連立内閣や閣僚数膨張等の事態に戦争や社会危機の圧力が加わると,少数有力閣僚に決定権が集中する傾向が強まり,これが公式化されて成立する。…
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