電気通信事業法(読み)デンキツウシンジギョウホウ

デジタル大辞泉 「電気通信事業法」の意味・読み・例文・類語

でんきつうしんじぎょう‐ほう〔デンキツウシンジゲフハフ〕【電気通信事業法】

電気通信事業(電話・インターネットなど)について定めた法律。昭和59年(1984)制定。電気通信事業公共性を考慮して適正に運営されることを目的としている。
[補説]平成16年(2004)4月施行の法改正で、第一種・第二種の事業区分の廃止をはじめ、各種許認可制を登録・届出制にするなど、大幅な規制緩和が行われた。

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知恵蔵 「電気通信事業法」の解説

電気通信事業法

公共性の高い電気通信役務の円滑な提供を確保すると共にその利用者の利益を保護することなどを目的とする法律。旧来、日本電信電話公社(現NTTグループ)、国際電信電話株式会社(現KDDI)によって独占運営されてきた通信事業を自由化、民営化するものとして1985年に施行(公布84年)された。検閲の禁止や通信の秘密の保護などと共に、電気通信事業の登録や業務、電気通信設備その他について定めている。
電信・電話など電気通信事業は、太平洋戦争後しばらくは国有事業として郵政省(旧逓信省)が所管していたが、能率的な経営や設備の整備拡充などのために52年に日本電信電話公社がつくられた。国際電信電話業務は53年に特殊会社である国際電信電話株式会社に移された。この2社が、それぞれ国内、国際の電気通信事業を独占的に提供することを定めたのが、同年に公布・施行された公衆電気通信法である。70年代のオイルショックなどで高度経済成長が終焉(しゅうえん)すると、日本電信電話公社、日本専売公社(現日本たばこ産業株式会社)、日本国有鉄道(現JR)の三公社などの肥大化、硬直化した公企業では産業構造の転換に対応できず、企業性も発揮されずむしろ公共性を損なうと批判された。こうして、80年代には三公社はすべて民営化され、経営規模の適正化なども図られることになった。電気通信についても、独占を廃し、競争原理を導入して将来の通信の高度化に柔軟に対応した多様なサービスが提供されるような制度を導入するものとした。そのため、公衆電気通信法は廃止され、これに代わる電気通信事業法が85年に施行された。このとき、日本電信電話公社は株式会社に改組されNTTになった。90年代前後には携帯電話やインターネットのサービスが本格化し、90年代後半には早くも隆盛を迎える。2000年代後半からはスマートフォンが普及し、総務省によれば17年には20代、30代の人の保有率は90%を上回っている。スマートフォンの端末機器自体がかなり高価な商品であると共に、その利用には基本的に通信回線の契約が必要になる。こうしたなかで、NTTドコモソフトバンク、KDDIの通信大手3社は、ユーザーの獲得や囲い込みのために特異な契約モデルをとってきた。端末の代金を極端に安価に見せかけ、その値引き分を月々の通信料金で埋め合わせる「セット販売」である。またそのために、妥当とはいえない長期間の契約や解約を著しく困難にした「しばり契約」も行われた。このため、通信料金が高止まりし、端末を頻繁に買い換えない人が不利益を被り不公平であるとの批判が強かった。
政府は、こうしたことから携帯料金引き下げに向けた電気通信事業法改正案を19年3月閣議決定した。内容は、「セット販売」を禁止し、通信料金と端末代金の完全分離を図り、料金プランを利用者が正確に把握して比較できるようすること。また、長い契約期間や期間中の解約金の水準の見直しを行うこと。更に、販売代理店の業務の実態が把握できるよう、販売代理店に対して事前の届け出制を導入し、過剰な割引等の不適切な営業については業務改善命令の対象とすることなどである。なお、15年にも消費者保護の強化として、クーリングオフなどを盛り込んだ法改正がなされている。

(金谷俊秀 ライター/2019年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電気通信事業法」の意味・わかりやすい解説

電気通信事業法
でんきつうしんじぎょうほう

電気通信事業の基本的事項を定めた法律。昭和59年法律第86号。日本において電気通信事業を営むことができる者は、従来は、日本電信電話公社(民営化の後、1999年日本電信電話株式会社を持株会社とする3社体制に分割)と国際電信電話株式会社(KDD。現KDDI)に限られていた。しかし、社会の情報化に対応するためには、電気通信事業に競争を導入する必要があるとして1985年(昭和60)4月に本法が施行され、従来の公衆電気通信法は廃止された。

 本法は、(1)電気通信事業を営むことのできる者を特定しない、(2)電気通信事業者間での公正な競争を確保するための措置がある、(3)電気通信事業者への規制は、その設置する電気通信回線設備の有無や規模によって差がある、(4)電気通信事業の性格から要求される公共性を確保するための措置があるなどの特色をもっている。本法によって、電気通信事業者に対する規制は大幅に緩和され、公社から株式会社に衣替えした日本電信電話株式会社(NTT)、KDDは競争の場に置かれることとなった。その後、電気通信市場への新規参入の円滑化と事業者間の適正な競争を図るために必要な改正が行われている。

 なお、1999年(平成11)7月には、日本電信電話株式会社が分割・再編成され、新しい日本電信電話株式会社は純粋な持株会社として存続し、その下に東日本電信電話、西日本電信電話、NTTコミュニケーションズの三つの株式会社が新設されている。また、2000年(平成12)10月には第二電電(DDI)、KDD、日本移動通信の3社が合併し、ディーディーアイとなり、2001年4月社名をケイディーディーアイに、さらに2002年11月にはKDDIと変更した。情報通信技術の進歩を適時に活用するための電波法の見直しも進められている。

[笠井哲哉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電気通信事業法」の意味・わかりやすい解説

電気通信事業法
でんきつうしんじぎょうほう

昭和 59年法律 86号。 1984年に,それまで日本電信電話公社および国際電信電話株式会社によって独占的に運営されてきた電気通信事業を民間に全面的に開放し競争原理を導入するために,公衆電気通信法を廃止して制定された法律。電気通信事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,電気通信役務の円滑な提供を確保するとともに,利用者の利益を保護することを目的とする。電気通信事業の取り扱い中の通信の検閲の禁止,秘密の保護,第1種電気通信事業の許可制,第2種電気通信事業の届け出・登録制,電気通信事業の業務,電気通信設備などについて定める。 2001年には「基礎的電気通信役務の提供」 (ユニバーサルサービス) 確保のための支援機関の設置や電気事業者間の紛争処理委員会の創設などを盛り込んだ改正,さらに 2003年には一種,二種事業者の区分撤廃などインターネット時代に対応した抜本的改正が予定された。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「電気通信事業法」の解説

電気通信事業法

日本電信電話公社と国際電信電話(KDD)によって独占運営されてきた通信事業の自由競争化に向けて、1985年、新たに施行された事業法。これにより、電気通信サービスを提供する事業者は、第一種電気通信事業者と第二種電気通信事業者とに区分された。

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世界大百科事典(旧版)内の電気通信事業法の言及

【電話加入権】より

…一種の債権であるが使用料支払等の義務を伴うものであるから,当該事業者の承諾等を得ないで当然に自由に譲渡質入れができるものとはいえない。電気通信業務の自由化を目的として制定された電気通信事業法(1984公布)には,この権利について直接触れる規定はないが,同法の施行に伴い廃止された公衆電気通信法(旧公衆法。1953公布)においては,電話加入権は電電公社の承認がないとその譲渡の効力は生じないものとし,また質権の目的とすることはできないものとしていた(38条~38条の3。…

※「電気通信事業法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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