音楽配信サービス(読み)オンガクハイシンサービス

デジタル大辞泉 「音楽配信サービス」の意味・読み・例文・類語

おんがくはいしん‐サービス【音楽配信サービス】

インターネットを通じて配信される音楽のデジタルデータを、パソコン携帯電話などにダウンロードして楽しめるサービス

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「音楽配信サービス」の意味・わかりやすい解説

音楽配信サービス
おんがくはいしんさーびす

インターネットを通じて楽曲や音楽番組などの音声デジタル情報を配信し、スマートフォンや携帯音楽プレーヤーなどの再生機器で聴けるようにするサービスの総称。1990年代末から、インターネット上で音声デジタル情報を、大容量、圧縮、高速、高音質でやりとりする技術が相次いで開発され、可能となった。とくに2000年代初頭に、アップル社が携帯型プレーヤーのiPod(アイポッド)を発売し、音楽配信サービスを始めたことで急速に普及した。

 音楽配信サービスは、デジタル音声をスマートフォンなどで受信しながらほぼ同時に再生するストリーミング(逐次再生)方式と、情報をいったんパソコンやスマートフォンなどに取り込んだうえで再生するダウンロード方式に大きく分けられる。ストリーミング方式のうち、定額料金を支払えば一定期間登録楽曲を無制限に聴くことができるサブスクリプション通称サブスク)型サービスの利用が伸びている。音楽配信サービスは当初、ダウンロード方式が中心であったが、2016年以降、サブスク型を中心にストリーミング方式が世界の主流となった。ストリーミング方式は、海賊版などに複製されにくいが、通信料がかさむ欠点がある。ダウンロード方式はいったん取り込めば、ネットがつながっていない環境でも利用できるが、取得・再生までに時間がかかり、海賊版などに複製されやすい難点がある。

 国際レコード産業連盟(IFPI:International Federation of the Phonographic Industry)によると、世界の音楽配信サービスの売上高は2014年にCD・レコードなどの販売額を上回り、2023年に202億ドル(ストリーミング方式193億ドル、ダウンロード方式9億ドル)に達し、レコード産業全体(著作権料などを含む)の約7割を占め、毎年10%前後の伸びを続けている。日本では、音楽事業者の権利許諾などの遅れで音楽配信サービスの普及が遅れていたが、一般社団法人日本レコード協会によると、2023年(令和5)の売上高は前年比11%増の1164億円(うちストリーミング方式1056億円、ダウンロード方式102億円)となった。音楽配信サービスの世界的な普及で、CDなどの音楽ソフトの売上げは大きく落ち込んだ。

 主流のサブスク型音楽配信サービスの利用料は、1か月当り1000円前後。学生割引き、家族割引き、無料試聴期間などを設けるサービスが多い。ほとんどのサービスが、楽曲の検索機能、好みの曲を再生順などで集めるプレイリスト作成機能のほか、嗜好(しこう)や視聴履歴などを分析して自動的に音楽配信する機能などを提供している。ダウンロード方式の料金は、シングル1曲数百円、アルバムで2000円前後。サービス提供会社は世界最大手のスポティファイSpotify)のほか、アップル社のアップルミュージック、グーグル社のユーチューブ・ミュージック、アマゾン・ドット・コム社のアマゾン・ミュージックなどがある。日本では、レコード会社とNTTドコモ共同運営するレコチョク、エイベックス・ファンマーケティング社とサイバーエージェント社などが共同出資したAWA(アワ)、LINE(ライン)社のLINEミュージック、USEN(ユーセン)-NEXTホールディングス社のUSEN MUSICなどがある。大半のサービスの登録楽曲数は、それぞれ1億曲を超える。

 音楽配信サービスの普及で、世界的に海賊版の横行や、音楽番組内でのフェイクニュース(虚偽情報)などの発信が問題となった。日本の著作権法では、違法と知りながら海賊版を繰り返し利用すると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科される。ユネスコ国連教育科学文化機関)はサービス提供者に、虚偽情報などには警告を発したり、警告ラベルを張ったりするよう指針で促している。

[矢野 武 2024年5月17日]

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知恵蔵 「音楽配信サービス」の解説

音楽配信サービス

インターネットなどを介し、音楽をデジタルデータとして配信・販売するサービスのこと。ブロードバンド回線の普及に伴い、1曲数MB(メガバイト)から数十MB程度の音楽であれば数分以内にダウンロードができるようになったことから、普及し始めている。もともとは、2000年頃、インターネットを介して音楽データの海賊版を違法に流通させる行為が一般化したことに端を発し、「無料でコピーがやりとりされるなら、安く有料販売した方が理にかなう」との目的からスタートした。海外では、03年10月に米アップルコンピュータが開始した「iTunes Music Store」(iTMS、06年9月よりiTunes Store)が、1曲当たり99セントという価格から人気となり、一気に一般化した。日本では、00年4月に、ソニー・ミュージックエンタテインメントを中心に、複数の音楽出版社が共同出資したレーベルゲート社がサービスを開始したものの、1曲当たり300円以上と高価な上に、ダウンロードなどの手続きが煩雑であることから、ほとんど普及しなかった。iTMSがサービスを開始する際にも、音楽著作権者との交渉が長引き、米国でのサービス開始から2年後の05年8月にようやくサービスが開始され、普及に弾みがついた。日本の場合は、パソコン向けのサービスよりも、むしろ携帯電話向けの着信音声(通称「着うた」「着メロ」)販売が先行して大きなビジネスになっているのが実情。ただし、パソコン用の配信サービスに比べ、1曲当たり50円から100円程度高く、音質も良くないこと、また一部の例外を除き、購入した楽曲を携帯電話でしか聴けないという閉鎖性から、利用者側には不満の声も少なくない。

(斎藤幾郎 ライター / 西田宗千佳 フリージャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

IT用語がわかる辞典 「音楽配信サービス」の解説

おんがくはいしんサービス【音楽配信サービス】

インターネットを通じて、デジタル化された楽曲データを販売するサービス。一般的に楽曲データはパソコンやデジタルオーディオプレーヤーで再生可能なAACWMAATRACなどの圧縮方式を採用し、 複製を制限するDRMが施されている。携帯電話向けのサービスもある。◇「音楽ダウンロードサービス」「デジタル音楽販売」「オンライン音楽配信」ともいう。

出典 講談社IT用語がわかる辞典について 情報

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