デジタル大辞泉
「高脂血症」の意味・読み・例文・類語
こうしけつ‐しょう〔カウシケツシヤウ〕【高脂血症】
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こうしけつ‐しょうカウシケツシャウ【高脂血症】
- 〘 名詞 〙 血中に含まれるコレステロールまたは中性脂肪が異常に高い症状。動脈硬化を促進する。血清総コレステロールが一デシリットル当たり二二〇ミリグラム以上、または中性脂肪が一デシリットル当たり一五〇ミリグラム以上のいずれか、または両者をいう。
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こうしけっしょうこうりぽたんぱくけっしょう【高脂血症(高リポたんぱく血症) Hyperlipemia (Hyperlipoproteinemia)】
◎血中の脂質(ししつ)の量が異常に多い
[どんな病気か]
[症状]
[原因]
[検査と診断]
◎食事療法と運動が治療の大前提
[治療]
[どんな病気か]
血液中には、コレステロール(遊離型(ゆうりがた)、エステル型)、トリグリセリド(中性脂肪(ちゅうせいしぼう))、リン脂質などの脂質(脂肪。リポイドともいう)があり、まとめて血清脂質(けっせいししつ)といいます。血液中に、これら脂質の量が多い状態を高脂血症といいます。そのうち、コレステロールが多い状態が高コレステロール血症(Hypercholesterolemia)、トリグリセリドが多い状態が高トリグリセリド血症(Hypertriglyceridemia)です。
血清脂質は、アポたんぱくというたんぱく質と結合してリポたんぱくという粒子になっているため、高脂血症は高リポたんぱく血症ともいいます。
いろいろなリポたんぱくは、その比重によって、おもにVLDL(超低比重(ちょうていひじゅう)リポたんぱく)、LDL(低比重リポたんぱく)、HDL(高比重(こうひじゅう)リポたんぱく)の3つに分類されます。
リポたんぱくの測定は、ほとんどは、HDLコレステロールの値を測定し、ほかの値は、それから計算して出すのがふつうですが、近年、LDLコレステロールを直接測定する方法も開発されています(コラム「各種リポたんぱくの計算方法」)。
LDLが過剰になると、動脈の内側に付着して、動脈硬化症(どうみゃくこうかしょう)の原因となるので、LDLコレステロールを悪玉(あくだま)コレステロールということがあります。
一方、HDLは、コレステロールの代謝や排泄(はいせつ)にはたらくこと、動脈硬化症ではHDLコレステロールが低いことから、HDLコレステロールを善玉(ぜんだま)コレステロールということがあります。しかし、その量が血液1dℓ中100mg以上の場合には、HDLから肝臓にコレステロールを移すしくみに障害があると推定でき、善玉とばかり考えられないことがわかりました。最近では、アポたんぱく(a)とLDLが結合したリポたんぱく(a)が高いのも要注意とされています。
つぎに、血清脂質の基準値を示します。以下の基準値は一般に、男女差はありません。
総コレステロール 140~220mg。HDLコレステロールが増えると総コレステロールも増加してしまうことがあるため、最近では、重視されなくなりました。
トリグリセリド(中性脂肪) 50~150mg。これ以上なら高トリグリセリド血症と考え、生活習慣の改善を開始します。
LDLコレステロール 80~140mg。これ以上なら高LDLコレステロール血症と考えられます。
HDLコレステロール 40~100mg。これ未満なら低HDLコレステロール血症です。なお、女性のほうが10mgほど高い傾向があります。
●なぜ高脂血症は治療が必要か
長期間にわたって高脂血症があると、全身の動脈に付着して、血管の硬化などの変化をおこして、動脈を狭くしたり、閉塞(へいそく)したりします(動脈硬化)。これらは、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞(のうこうそく)、閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)など、動脈硬化性の病気の原因になります。
これらの合併症は、いったん発病すると、救命はできても、からだの機能低下を残し、不自由な生活をしいられます。ですから、発病前に高脂血症を治療して予防する必要があるのです。
高コレステロール血症の合併症としては、動脈硬化性の病気、胆石症(たんせきしょう)があります。このほか、目の周囲に眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)というコレステロールのつまった平らな皮疹(ひしん)ができることもあります。
高トリグリセリド血症の合併症としては、高コレステロール血症ほどではないものの、動脈硬化性の病気があります。トリグリセリドが2000mgを超えるほど高度になると急性膵炎(きゅうせいすいえん)をおこします。アルコールの多飲者や肥満症(「肥満症」)、糖尿病(「糖尿病」)、高尿酸血症(こうにょうさんけつしょう)や痛風(つうふう)(「高尿酸血症/痛風」)などにともなっておこることがほとんどです。
高コレステロール血症と高トリグリセリド血症がともにある場合の合併症としては、動脈硬化性の病気があります。一般的に、高コレステロール血症や高トリグリセリド血症だけの場合より、おこりやすいとされています。
低HDLコレステロール血症の合併症は、高コレステロール血症の合併症と同様です。
両下肢(りょうかし)の太い動脈に狭窄や閉塞をおこす閉塞性動脈硬化症ではリポたんぱく(a)が高い値を示すことが知られています。また、心筋梗塞(しんきんこうそく)をきたし、閉塞した冠状動脈(かんじょうどうみゃく)の自然再開通はリポたんぱく(a)の低値の場合に多いことが知られています。
[症状]
高脂血症は、自覚症状なく始まり、血液検査をしたときに偶然に見つかることがほとんどです。
しかし、家族性高コレステロール血症、Ⅲ型高脂血症、高カイロミクロン血症などでは、特有の症状がみられることがあります。
●一般的な高コレステロール血症、高トリグリセリド血症の症状
検査値以外に、症状はほとんどありません。ときに眼瞼黄色腫をともなうことがあります。また、動脈硬化性の病気がおこりやすいとされています。
●家族性高コレステロール血症の症状
遺伝性の高コレステロール血症で、乳幼児のころから、コレステロールが高い病気です。長年にわたる高コレステロール血症によって、動脈にコレステロールが付着し、動脈硬化をおこすほか、アキレス腱(けん)などに痛みや腫(は)れ(腱黄色腫(けんおうしょくしゅ))が生じます。眼球の白目(しろめ)と黒目(くろめ)の境界の内側に白色の輪(角膜輪(かくまくりん))がみられます。とくに、総コレステロールが1dℓの血液中に260mg以上、両親のいずれかが高コレステロール血症で以上の症状がみられればこの病気と考えられます。
また眼瞼黄色腫も高頻度にみられます。
●Ⅲ型高脂血症の症状
コレステロールとトリグリセリドがともに増加している場合に、この病気である可能性があります。手のひらのひだにそって、コレステロールをたくさんかかえこんだ細胞が集合して、黄色腫ができることがあります。また、動脈硬化性の病気がおこりやすいとされています。
●高カイロミクロン血症の症状
カイロミクロンとは大型のリポたんぱくのことで、血中量が2000mgを超えるほどの高トリグリセリド血症では、カイロミクロンがふえます。
まれな病気で、急性膵炎をおこすことがあります。ほとんどは乳幼児期に腹痛をおこして発病します。
[原因]
遺伝的な素因、食事内容、運動不足、その他の病気に伴ったり、治療薬剤などが原因となります。
●高コレステロール血症の原因
最大の原因は体質です。食事や運動の状況など生活の影響を受けても正常のままでいたり、高コレステロール血症となったりするのは体質の影響が大です。
遺伝素因 家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロールを細胞にとりこむ受容体が遺伝的に欠けていることがその原因の大きなものです。
優性遺伝しますから、同じ家族内に多発します。人口500人に1人の割合でみられるといわれています。
ほかの高コレステロール血症も、体質の影響が大きいと考えられますが、その詳しいしくみは不明です。
食事 脂肪、卵類のとりすぎも原因になります。牛乳やチーズなど酪農(らくのう)製品の過剰摂取も影響します。脂肪の摂取量が同じであれば、肉類やバターなど飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)を多く含んだものよりも、魚や植物性脂肪のほうがよいとされています。しかし、摂取量が多ければいずれも悪影響をおよぼします。
カロリーが少なく繊維質の多い、ゴボウ、セロリ、ダイコンなどは多めにとるとよいとされています。
運動不足 ふだんから、あまり動かない生活をしていると、コレステロール値が上昇します。
病気 糖尿病、肥満症、脂肪肝(しぼうかん)(「脂肪肝」)、ネフローゼ症候群(「ネフローゼ症候群」)、痛風(つうふう)、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)(「甲状腺機能低下症とは」)などの病気も原因となります。
食品や嗜好品(しこうひん) ケーキ、甘いフルーツ類、砂糖を多く含んだ食品はコレステロールが増える原因となります。
薬剤 治療に使われる薬も高コレステロール血症の原因になる場合があります。もっとも顕著な例は、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)薬ですが、ほかに、高血圧などに用いる降圧利尿薬やβ(ベータ)(交感神経)遮断薬も原因となります。
●高トリグリセリド血症の原因
これにも、体質が大きな役割をはたしています。
遺伝素因 トリグリセリドは、リポたんぱくリパーゼという酵素(こうそ)が、アポたんぱくC‐Ⅱとともに作用して、分解します。生まれつき、そのどちらかが欠けていると、著しい高トリグリセリド血症がおこってきます。これは、ごくまれな遺伝性の病気です。
ふつうの高トリグリセリド血症の体質的な原因は不明です。
エネルギーの過剰摂取 飽食の時代である現在、もっとも多い原因です。エネルギー源になる脂肪、炭水化物などの食物の過剰摂取が原因になります。
食品や嗜好品 アルコール、ケーキ、甘いフルーツ、砂糖を多く含んだものが原因となります。また、脂肪の多いもの、アルコール、果実の過剰な摂取は、摂取エネルギーが多くなくても、トリグリセリド値の上昇の原因となります。
運動不足 エネルギー源の過剰摂取と並んで、多い原因が運動不足です。
仕事に忙しい年代は、ほとんど例外なく運動不足です。また、老年期になると、腰や膝(ひざ)に故障がおこることでも運動不足におちいります。
病気 糖尿病、高尿酸血症、痛風、脂肪肝、甲状腺機能低下症などにともなうことがあります。肥満症は、これらの病気がおこる基礎となるもので、腹部に脂肪のたまった中心性肥満(ちゅうしんせいひまん)が問題です。なかでも、とくに内臓に脂肪が多くたまった、いわゆる内臓蓄積肥満(ないぞうちくせきひまん)が原因となるとされています。
薬剤 副腎皮質ホルモン薬、降圧利尿薬、β遮断薬などです。
●高コレステロール血症と高トリグリセリド血症が同時にある場合の原因
高コレステロール血症の原因と高トリグリセリド血症の原因が、ともにある場合に現われます。アポたんぱくEの異常によっておこるⅢ型高脂血症も、このタイプの高脂血症を示します。
●低HDLコレステロール血症の原因
体質がいちばん重要ですが、高コレステロール血症や高トリグリセリド血症があると、HDLが低下します。喫煙や運動不足も、HDLの低下を助長します。
●高リポたんぱく(a)血症の原因
大部分は遺伝によるとされています。
[検査と診断]
高脂血症の検査や治療を担当するのは内科です。近くの内科を朝食を食べずに受診してください。採血検査を受けます。治療しても改善しない場合、長期にわたって高脂血症がある場合、心電図の異常や狭心症などの病気の可能性がある場合は、精密検査のできる専門医のいる病院を受診しましょう。
経過をきく問診、からだの診察、尿や血液の検査、食事の調査などが行なわれます。
問診 高脂血症の原因となる病気の既往があるかどうかが重要です。いままでにかかった病気や、検診でいわれたこと、過去の体重の経過(20歳代の記録、最大だったときの体重など)をメモして受診すると役立ちます。
また、家族の病気のことも、遺伝や体質の診断に重要です。現在、服用している薬剤があれば、持参するといいでしょう。診断に役立ちます。
診察 身長、体重の測定のほか、各種の高脂血症に特徴的な所見がないかどうか、また、ともなう病気がないかどうか、全身の診察が行なわれます。
血液検査 高脂血症の有無は、一昼夜絶食した後に採血して、その検査結果で決定できます。
食後に著しく高い値を示す人がありますが、これは食後の高脂血症といい、動脈硬化が進みやすい傾向がありますから、注意が必要です。
食事指導 食事や嗜好品の摂取状況は、高脂血症の原因をはっきりさせるうえで、非常に重要な情報です。
問題があれば、栄養士から食事などの指導を受けることになります。
その他の検査 動脈硬化の有無を調べるため、心臓・血管系の検査のほかに、肝臓や膵臓(すいぞう)の機能なども詳しく検査されます。
[治療]
治療には、薬物を使わないものと使うものとがあります。
●非薬物療法
高脂血症の人は、肥満であるか、肥満でなくとも脂肪組織の増加がみられることが多いので、減量を指示されたら、毎日一定の時間に体重計に乗ることから始めます。
体重がふえてくると、体重計に乗らなくなることが多いので、体重測定をしているかどうかで改善への意欲の程度が推測できます。
食事療法は、苦痛をともないますから、長期にわたって続けられるメニューにする必要があります。
こうした努力をしても正常化しない場合には、薬物療法を併用します。
食事療法 高コレステロール血症の食事は脂肪の摂取量を減らすことが第一です。フライや天ぷらは避けます。
脂肪のなかでは、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪を避けることが重要です。植物性脂肪や魚の脂肪には、不飽和脂肪酸が多く含まれ、よいとされていますが、摂取総量が多いと逆効果になります。不飽和脂肪酸は、加熱すると酸化が進み、体内でも酸化されて過酸化脂質(かさんかししつ)になり、動脈硬化を促進するので、加熱調理にはむきません。
また、卵、ウニ、イクラなどには、コレステロールが多く含まれていますので、避けるようにします。
高トリグリセリド血症の食事は総カロリーの制限が重要です。アルコール、砂糖、甘いフルーツは避けます。
低HDL血症の人では、コレステロールやトリグリセリド値の上昇をともなう場合は、その治療に専念します。それらの値が改善すれば、HDL値もよくなってきます。
運動療法 40分以上持続できる運動を行ないましょう。いちばんよいのは、歩くことです。からだがあたたまるような運動がよいでしょう。運動すると、血中のVLDLが筋肉のエネルギーとして使われ、コレステロールやトリグリセリドが低下し、HDLが増加します。
禁煙 喫煙は、HDLを減少させ、禁煙すると回復します。また、喫煙は過酸化脂質をつくりますので、高脂血症がなくとも、動脈硬化症となります。
●薬物療法
高コレステロール血症の治療薬の進歩はめざましく、HMG‐CoA還元酵素阻害薬(かんげんこうそそがいやく)がその代表です。プロブコールやイオン交換薬などのほか、従来から使われていたニコチン酸系、クロフィブラート系の薬剤などがあります。
高トリグリセリド血症の治療薬は、有効なものも出てきていますが、食事や運動療法が中心で、薬はその補助的な役割をはたすことになります。
肥満をはじめとする高脂血症の原因がなくなれば、薬を使用しなくてすむこともよくありますから、それまでは薬の内服を続けます。
出典 小学館家庭医学館について 情報
高脂血症【こうしけっしょう】
血液中に存在する,コレステロール,リン脂質,中性脂肪(トリグリセライド),遊離脂肪酸の4種の血清脂質が異常に多い状態。4種のうち,コレステロール値が高い高コレステロール血症と,中性脂肪値の高い高トリグリセライド血症が問題となる。高トリグリセライド血症は血清1dl中150mg以上のものをいい,糖尿病,高尿酸血症,痛風,脂肪過多症などのときに起こり,また,長期にわたると脂肪肝を誘発したり,膵臓炎を起こすことがある。治療は,食事療法,運動療法,生活習慣の改善を主とし,必要に応じて脂質代謝改善薬などの薬物を使用する。
→関連項目かくれ肥満
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
高脂血症 (こうしけつしょう)
hyperlipemia
血液中に脂肪が増加した病的状態をいう。脂肪としては通常コレステロールとトリグリセリドを指す。高脂質血症hyperlipidemiaもほぼ同義語として用いられる。脂肪は血液中でアポリポタンパク質と複合体を形成して存在しているので,近年その複合体の質的異常としてとらえ,高リポタンパク質血症hyperlipoproteinemiaの名称がよく使われている。高リポタンパク質血症は成因によって家族性と続発性とに大別される。家族性高リポタンパク質血症はⅠ型からⅤ型に分類され,Ⅰ型はリポタンパク質リパーゼの先天的欠損によるカイロミクロン血症を特徴とし,Ⅱ型はLDL(低比重リポタンパク質)受容体の欠損に基づく高コレステロール血症である。Ⅲ型ではアポEに異常があって,コレステロールもトリグリセリドも増加する。Ⅳ型は高トリグリセリド血症,Ⅴ型はカイロミクロンと超低比重リポタンパク質とがともに増加する。続発性高リポタンパク質血症は糖尿病のほか甲状腺,肝臓,腎臓などの臓器の疾患に合併して起こる。
執筆者:村勢 敏郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
高脂血症
こうしけつしょう
hyperlipidemia; hyperlipemia
血液中のコレステロールや中性脂肪など,1つまたはそれ以上の脂質分画が増加し,正常値をこえた状態をいう。特に血清が白濁して,トリグリセリド濃度の増加している場合をさすこともあるが,現在では高脂質血症,高リポ蛋白血症と同義語として使われることが多い。高脂血症のうち,脂質各成分の増加を表現するときは,それぞれ高コレステロール血症,高グリセリド (中性脂肪) 血症,高リン脂質血症というように呼ぶ。これらは動脈硬化,ことに冠状動脈硬化症の進展に関係が深いので,注目されている。高コレステロール血症は,主として動物性脂質の摂取過剰とその処理不全によることが多いが,ネフローゼ,糖尿病,閉塞性黄疸に伴うものや,家族性のものなどがある。高リン脂質血症は各種の脂質代謝異常で起るが,高コレステロール血症と合併することが多い。家族性の高リポ蛋白血症,閉塞性黄疸,甲状腺機能低下症,糖尿病,ネフローゼなどが原因となる。また,細胞における脂質代謝障害を総称してリピドーシスと呼ぶが,脂質は血液中では蛋白質と結合してリポ蛋白として存在しているので,臨床的には,血中リポ蛋白濃度が異常に増加または減少するリポ蛋白異常症をさす。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
高脂血症
こうしけつしょう
hyperlipemia
従来、中性脂肪(トリグリセライド、トリグリセリド)数値、コレステロール数値、あるいはHDLコレステロール(高比重リポタンパクコレステロール)数値の異常を高脂血症と総称していたが、HDLコレステロール数値は分けて考えるべきという指摘と、欧米の慣習を取り入れて脂質異常症とされた。
[中村治雄・編集部]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
知恵蔵
「高脂血症」の解説
高脂血症
血清脂質にはコレステロール(遊離型、エステル型)、トリグリセリド(中性脂肪)、リン脂質、遊離脂肪酸などがあり、いずれもたんぱく質と結合している。たんぱく質と脂質の結合した物質をリポたんぱく質という。高脂血症は、これらの脂質やリポたんぱく質が血中で増加する。リポたんぱく質にはカイロミクロン、低比重リポたんぱく質(LDL : low density lipoprotein)、高比重リポたんぱく質(HDL : high density lipoprotein)などがある。食事の影響が大きく、動脈硬化症と深い関係がある。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
高脂血症
血液中にコレステロールや中性脂肪などの脂肪分が異常に増える状態のことで、自覚症状はほとんどありません。脂肪分 (脂質) は生きていく上で必要な成分ですが、多すぎると動脈硬化が進行し、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす原因となります。
出典 あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)生活習慣病用語辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の高脂血症の言及
【動脈硬化】より
…ところが,脳卒中の内容をみると,脳梗塞による死亡が3.9人から59.8人と約15倍に増えてきており,70年に脳出血と脳梗塞の比がついに逆転した。(94年の虚血性心疾患の対10万年死亡率は74人,脳卒中は97人,うち脳梗塞は54.4人である)このように,近年日本においても虚血性心疾患や脳梗塞,いいかえれば動脈硬化性疾患が増加の一途をたどっているという事実は,大都市の一部において食餌性の高脂血症に伴った虚血性心疾患がみられ,しかも30歳代の心筋梗塞をしばしば経験するようになったことからも十分うなずける。
[動脈硬化の危険因子]
動脈硬化症の成因は多元的なものとみなされており,高脂血症などの体液因子,血管壁の代謝異常や高血圧による局所的因子,食事組成やストレスなどの社会文化的条件,それにこれら多元的な因子の根底に遺伝的因子が存在している。…
※「高脂血症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」