高速道路(読み)コウソクドウロ

デジタル大辞泉 「高速道路」の意味・読み・例文・類語

こうそく‐どうろ〔カウソクダウロ〕【高速道路】

自動車が高速度で走るための専用道路。ハイウエー。高速。
[類語]ハイウエードライブウエースカイラインバイパス

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精選版 日本国語大辞典 「高速道路」の意味・読み・例文・類語

こうそく‐どうろカウソクダウロ【高速道路】

  1. 〘 名詞 〙 自動車が高速度で走るための専用道路。交差点は立体交差とし、路面に中央分離帯、車線分離線を設け、舗装は強固で耐久性をもたせるなどの考慮が払われ、一般道路とは分離して建設される。高速。
    1. [初出の実例]「日本国中を高速道路が貫通し」(出典:中間文化(1957)〈加藤秀俊〉二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高速道路」の意味・わかりやすい解説

高速道路
こうそくどうろ

大都市、産業都市、重要港湾、空港など、政治、経済、文化上、とくに重要な地域を連絡する幹線道路のうちで、自動車が高速かつ安全快適に走行できるよう、法律的および構造的に措置された道路。このため基本的には、(1)自動車専用道路であること、(2)出入制限があること、すなわち交差部を立体にし、出入はインターチェンジだけによること、(3)中央帯により往復交通を方面別に分離すること、の各条件が満足されなければならない(道路構造令)。

 アメリカでは完全な出入制限を行ったものをフリーウェーfreewayと称して、一般的な高速道路のエクスプレスウェーexpresswayと区別し、また公園あるいは帯状公園地域に設けて乗用車だけを通す高速道路をとくにパークウェーparkwayと称している。ドイツのアウトバーンAutobahn、イギリスのモーターウェーmotorway、イタリアのアウトストラーダautostrada、フランスのオートルートautorouteなどはすべてこの高速道路の概念に入る幹線道路である。

[吉川和広・小林潔司]

高規格幹線道路網計画

日本の高速道路網構想は1966年(昭和41)7月に国土開発幹線自動車道建設法で策定され、2009年(平成21)までに、高速自動車国道7641.8キロメートルが供用されている。1987年(昭和62)には、社会・経済の新たな動向や国土開発上の諸課題に適切に対応し、日本の経済力に見合う国民生活の実現と国土の均衡ある発展を支えることを目的とし、高速自動車国道、本州四国連絡道路、これらに接続する新たな路線を合わせた総延長1万4000キロメートルに及ぶ高規格幹線道路網計画が策定された。高規格幹線道路は、自動車の高速交通の確保を図るため必要な道路で、全国的な自動車交通網を構成する自動車専用道路である。第四次全国総合開発計画(1987年6月30日閣議決定)では、21世紀に向け多極分散型の国土を形成するため、「全国的な自動車交通網を構成する高規格幹線道路網については、高速交通サービスの全国的な普及、主要拠点間の連絡強化を目標とし、地方中枢・中核都市・地域の発展の核となる地方都市及び周辺地域等からおおむね1時間程度で利用が可能となるよう、およそ1万4000キロメートルで形成する」と記載されている。

 その後、東名高速道路名神高速道路、中央自動車道、東北縦貫自動車道山陽自動車道中国縦貫自動車道九州縦貫自動車道北海道縦貫自動車道などの縦貫道に加えて、関越自動車道、常磐(じょうばん)自動車道、近畿自動車道などの整備が進められ、高規格幹線道路網1万4000キロメートルのうち、2001年(平成13)には半分強の約7300キロメートルが完成し供用された(2012年2月の時点では9945.7キロメートル供用)。1999年の国土開発幹線自動車道建設審議会を経て、高規格幹線道路網計画のうち9342キロメートルが高速自動車国道として整備計画に盛り込まれた。しかし、高速自動車国道の整備にあたっては、しだいに採算性の低い区間の整備が必要となり、道路整備の効率性が低下する。料金の全国プール制や、出資金・利子補給金による公的助成を導入した道路整備に対して、高速道路の整備により便益を受ける者とその費用を負担する者が異なるという不公平性が指摘され、高速道路整備の意義や道路整備の財源の負担方法、さらには、道路公団等、特殊法人のあり方に関しても、さまざまな批判が投げかけられるようになった。

 2001年12月19日に小泉純一郎内閣により「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定され、道路関係四公団は2004年6月に成立した道路関係四公団民営化関連法によって、2005年10月に分割民営化された。2005年10月1日の日本道路公団分割民営化に伴い、同公団の業務のうち、施設の管理運営や建設については、東日本高速道路(NEXCO東日本)・中日本高速道路(NEXCO中日本)・西日本高速道路(NEXCO西日本)に、保有施設および債務は道路関係四公団とともに独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に分割・譲渡された。これら会社・機構の発足とともに日本道路公団は解散した。2006年2月の国土開発幹線自動車道建設会議において、民営化会社が整備済み分を含め、8520キロメートルを整備し、整備計画で設定された9342キロメートルの残りの区間に関しては、国と地方の負担により整備するという新直轄方式が導入された。2007年の政府与党合意「道路特定財源の見直しについて」に基づいた道路の中期計画において、1万4000キロメートルの高規格幹線道路網の整備に向けた道程が示された。

 建設開始当初、高速自動車国道は原則として建設時の借入金が返済されるまで無料開放をしない有料道路との位置付けであった。このため各路線の借入金がそれぞれの路線の収益により返済された後は、無料開放される予定であった。その後、料金プール制が導入され全国の高速道路の収支を合算することとなったため、東名高速道路をはじめとする利用者の多い路線の収益で他の赤字路線の借入金を返却する状態となった。赤字国債によって建設費を賄ったこともあり、無料化はたびたび先送りされた。道路公団民営化の方針で2005年の民営化後45年以内に借入金を返済し、日本高速道路保有・債務返済機構を解散することが日本高速道路保有・債務返済機構法で義務化されている。また返済完了時点で、道路資産を道路管理者に移管して、高速道路を無料開放するとしている。民営化時の借入金は、約40兆円に相当するといわれている。

 民主党は、地方を活性化するとともに、流通コストの削減を図ることを目的として、2003年以降、高速道路無料化をマニフェストに掲げている。2009年の衆議院総選挙マニフェストでは「高速道路を原則無料化して、地域経済の活性化を図る」ことを政策目的として掲げ、民主党政権は割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら、高速道路を無料化していくとした。しかし、社会保障費の増加や2011年3月に発生した東日本大震災の復興に多額の財源を要することから、高速道路の無料化政策の行く末は不透明である(2011年末現在)。

[小林潔司]

構造

高速道路には、自動車が高速で安全に走行するために特別の構造が必要である。

〔1〕設計速度 道路の幾何構造(幅員、曲線、勾配(こうばい)など)を定める基礎となる設計速度は、高速道路では一般の道路より高いのは当然である。アメリカでは毎時75マイル(120キロメートル)、ドイツでは毎時160キロメートル(最近では実際は120キロメートル)を用いている。日本では毎時120キロメートルを設計速度の最高としている。ただし首都高速道路のように都市内高速道路の場合は、毎時60~80キロメートル程度の低い設計速度をとることがある。

〔2〕横断構成 高速道路は通常の場合、車道のほかに、中央帯(中央分離帯および側帯)、路肩(ろかた)からなっている。自動車1台が走る部分を車線といい、車線が集まって車道となるが、車線の数は段階施工の第1段階の場合は別として、完成断面では片側少なくとも2車線、往復では4車線以上なければならない。これは往復分離であるため、おのおの1方向ずつ独立した道路となっており、片側1車線では速度の遅い自動車の追い越しも不可能であり、当然2車線以上となる。一般に日本の高速道路では片側2車線のうち、左側を走行車線、右側を追い越し車線としている。以上のほか、特別の場合に付加する車線として、変速車線、登坂車線、停留車線がある。変速車線はインターチェンジなどの出入り口付近で流出するときは減速に、流入するときは加速に要する長さの車線であり、登坂車線は急な坂道あるいは長い坂道で、とくに速度の落ちる自動車(トラックなど)が他の高速車のじゃまにならないように設ける車線であり、また停留車線はバスが停車するための車線で、いずれも通常の車道のほかに設けるものである。

〔3〕幅員 車線の幅は3.50~3.75メートルで、日本では3.60メートルをとっている。中央帯の幅員は広いほうが望ましいが、少なくとも4.00メートル以上とっているのが普通である。イタリアと日本では国土が狭い関係もあって3.00メートルとしており、日本ではここに低木を植えることによって対向車のヘッドライトのまぶしさを防ぎ、幅員の狭さを補っている。また各国とも路肩を2.50メートル以上とっているが、これは故障など非常の場合に自動車が車道を避けて駐車するためで、いわゆる、駐車帯の役目をもっている。

〔4〕線形 真上から見た道路の形を平面線形という。平面線形は直線と曲線の組合せからなっているが、曲線部の半径があまり小さいと高速走行には適さない。たとえば設計速度毎時120キロメートルの場合には最小570メートルで、できるだけ1000メートル以上が望ましいとされている。現在は、運転者の視覚に滑らかな感じを与える曲線形が設計されるようになり、そのために平面線形は円曲線とクロソイド曲線とが連続するようになった。クロソイド曲線は、一定速度で自動車が走行しているとき、一定の角速度でハンドルを切ったときに生ずる自動車の走行軌跡である。直線部は一見問題がなさそうに思われるが、あまり長く続くと運転者の神経が弛緩(しかん)し眠気を誘うことがあるので、設計速度毎時100キロメートルの場合、2500~2800メートルを限界としてカーブを入れるように考慮されている。また真横から見た道路の形を縦断線形という。縦断線形は勾配と縦断曲線の大きさに支配される。設計速度毎時120キロメートルでは最急2%、特別の場合短区間に限り4%までというのが普通である。勾配の変わる地点で道路が折れるのを防ぐために入れるのが縦断曲線で、普通、放物線を使っている。ただ縦断線形と平面線形の組合せ方によっては、実際より急に曲がって見えたり、平らな所が膨らんで見えるなど錯覚をおこさせる場合があるので、そのようなことのないよう、組合せはもちろんのこと、周辺景観とのよりよき調和を求める修景技術などを取り入れて、十分調和のとれた線形とする努力が払われている。

[吉川和広・小林潔司]

施設

高速道路施設は、インターチェンジ、サービスエリア、パーキングエリアおよびバスストップである。インターチェンジは高速道路と一般道路とを連絡する施設であり、高速道路上の交通の流れを妨げることなしに交通を他の道路に流出させ、また他の道路から流入させる施設である。高速道路は自動車(125ccを超える自動二輪を含む)だけの通行に限られ、歩行者、軽車両、ミニカー、125cc以下の自動二輪、原付は通行できない。また、高速道路においては沿道の使用制限がなされ、駐車禁止となっているので、それに伴って新しい施設が必要となってくる。すなわち、サービスエリア、パーキングエリア、バスストップがそれである。食堂、ガソリンスタンド、小修理工場、便所などを設けた広場をサービスエリアといって、普通30~50キロメートルごとに設けられる。

 また、食堂などの施設はなにもなく、単に駐車して簡単な休憩を行うために駐車帯または広場を設けたものをパーキングエリアといって、普通5~10キロメートルごとに設けられる。一般道路のように路側(ろそく)に無秩序に食堂やガソリンスタンドがあるのと違って、一定のルールに従って高速道路の付帯施設として設けられる。諸外国の高速道路上にバスストップのある例は少ないが、日本では諸外国と比べてバスの利用が非常に高いこと、高速道路沿線に多くの住居地域が発達していることなどから、高速道路上にバスストップが設けられている。

[吉川和広・小林潔司]

海外の高速道路

アメリカ合衆国では、1916年に公共事業局が設置され、1921年に連邦高速道路法が通過し、連邦補助による高速道路整備が開始された。1956年の連邦補助高速道路法整備により全長約6万5000キロメートルの州間高速道路網が計画された。高速道路収入法により、自動車の利用に関連する税、たとえばガソリン税などによる収入が高速道路信託基金に託され、基金の収入が高速道路の建設と維持管理にのみ充当され、残りの費用はアメリカ合衆国の連邦予算から拠出された。2009年10月の時点で、アメリカ合衆国の高速道路総延長は、州間道路の7万5658キロメートル、フリーウェー等の1万8346キロメートルをあわせて、9万4004キロメートルとなっている。

 ヨーロッパ(EU加盟15か国)では、2007年の時点で約5万3000キロメートルの高速道路網が整備されており、欧州自動車道路(国際E-ロードネットワーク)とよばれる。このうち、約6割の区間が有料区間として運営されている。ドイツでは1913年に高速道路建設が開始され、ヒトラーによりアウトバーン網整備が進められた。アウトバーンは総延長がおよそ1万3000キロメートルであり、自動車燃料や自動車保有への税金で建設と維持が行われていたが、1995年より12トン以上の大型トラックについて有料となった。オーストリア、スイス、チェコ、スロバキアではビニエットとよばれる一定期間の通行料金の支払いを示したステッカーシールをフロントガラスに貼る。フランスの高速道路・オートルートやイタリアの高速道路アウストラーダは有料である区間が多い。イギリスのモータウェー、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマークの高速道路は原則無料である。

 中華人民共和国の高速道路網は中国国家高速公路網とよばれる。1988年に上海市で最初の高速道路(滬嘉Hujia高速道路)が建設された。その後、2010年までに3万5000キロメートルの中国国家高速公路網を構築するという計画(五縦七横)が1992年に立案された。計画より早く高速道路整備が進展し、2009年末には総延長6万5000キロメートルが完成した。2005年には、今後30年間で人口20万以上のすべての地方中核都市を相互に連絡する8万5000キロメートルの高速道路のネットワーク(7918構想)を建設する計画が発表された。中国の高速道路の総延長は、2010年末現在、約7万4000キロメートルで、アメリカに次いで世界第2位である。近年は年平均で約6000キロメートル以上の高速道路が建設されている。

[小林潔司]

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改訂新版 世界大百科事典 「高速道路」の意味・わかりやすい解説

高速道路 (こうそくどうろ)

今日,一般的に呼ばれている高速道路は,アメリカ英語のエキスプレスウェーexpresswayの訳語であるが,全面的または部分的に出入制限を行い,鉄道,道路などとの交差点を立体交差とし,往復交通を分離した通過交通のための自動車幹線道路である。なお,日本では高速道路を俗にハイウェーと称するが,ハイウェーhighwayとは本来は公道の意である。アメリカでは完全な出入制限を行った道路をフリーウェーfreewayとも称している。日本の高速道路は1963年7月に開通した名神高速道路の一部区間(栗東~尼崎)が最初であるが,その後に完成した東名高速道路,中央自動車道,東北自動車道なども,一般道路との接続施設であるインターチェンジ以外からは出入りできない,アメリカのフリーウェーに相当する自動車幹線道路である。また首都高速道路や阪神高速道路などもこの概念に入る高速道路である。なお,ドイツのアウトバーンAutobahn,イギリスのモーターウェーmotorway,イタリアのアウトストラーダautostrada,フランスのオートルートautorouteなども同じ概念に入る。

高速道路の歴史は,アメリカで帯状の公園の建設とともにつくられた道路で,トラックやバスなどの商業車の通行を禁止したパークウェーparkwayを始まりとするが,本格的な近代高速道路は,1933年にヒトラーが政権を握った以降のドイツのアウトバーンの建設からである。このアウトバーンは33年から第2次世界大戦中の42年までの9年間に約4800kmを着工し,3860kmを完成するという驚異的な実績を残した道路事業であったが,戦後の49年,約2110kmが西ドイツ領域分のアウトバーンとなり,戦災復興や産業興隆に多大な貢献をしている。イタリアのアウトストラーダは,56年に策定されたロミタ・プランと呼ばれる道路整備15ヵ年計画を契機として,本格的な建設事業を開始した。フランスのオートルートは1951年から道路整備特別基金などにより整備されてきたが,86年以降は特定財源制度はない。高速道路の延長はドイツ1万1190km,フランス9140km,イタリア6477km(1995年末)。だが何といっても,高速道路の整備が進んでいるのはアメリカである。これは56年に定められた連邦補助道路法に基づき,州際国防道路Interstate and Defense Highwaysと呼ばれる高速道路網の建設を促進したためであるが,その整備延長は95年末で8万8509kmに達している。これに対して日本の高速道路は,1940年から内務省で基礎調査を開始して建設計画を急いだが,第2次大戦の激化に伴い,中断せざるをえないはめとなった。戦後,再び高速道路の建設計画に必要な調査を行い,57年に入って,建設省から日本道路公団に対して日本初の高速道路事業の施行命令が出された。道路公団では翌年10月に京都市山科地区で名神高速道路の起工式を行い,65年に全線を完成させた。これに引き続き69年に東名高速道路を全通させ,日本の高速道路時代の基盤を築き上げた。すでに開通した高速道路(1997年3月末現在6114km)は,日本における陸上輸送構造を変革させると同時に,国民生活領域の拡大や産業の立地振興などの役割を果たしているが,今後,国土開発幹線自動車道として21世紀初頭に7600kmの高速道路網整備を目標に全国各地で建設事業が展開されている。
執筆者:

高速道路は自動車の専用道路であり,大量の自動車を高速で,安全,快適に走行させるためのもので,その目的にふさわしい機能と構造をもつように設計される。道路構造のうち,道路の機能面を決定づけるのは幾何構造で,そのうちのおもなものは横断構成と線形である。横断構成とは,道路を横に切った場合の断面の機能的な構成であり,車道,路肩,分離帯などから成り立っている。また線形とは,路線に沿った道路の形であり,空から見た場合の平面線形と側面から見た場合の縦断線形に分けられる。

(1)設計速度 幾何構造の設計の基礎となる自動車の速度であるが,高速道路では一般道路や街路に比べて高く定められる。東名高速道路や中央自動車道など,日本の都市間高速道路では,最高120km/h,最低60km/hの範囲で適用されるが,実際上大部分が100km/hまたは80km/hで,120km/hは10%程度,60km/hは急峻な山岳地などで例外的に採用されている。120km/hで設計された区間も,交通規制上は100km/hが最高限度とされている。首都高速道路など都市高速道路では60km/hが一般的で,郊外部で80km/h,都心部で50km/hまたは40km/hが用いられている。アメリカの都市間高速道路では50~70マイル/h(80~113km/h),ドイツのアウトバーンでは100~140km/h。

(2)横断構成 高速道路の横断面は,中央分離帯をはさんで両側に車道と路肩がある。高速道路では,車道は追越しのため片側に少なくとも2車線を必要とするので,基本車線数は4車線である。計画交通量が多ければ車線数を増すが,6車線,8車線と,往復の車線数を等しくした偶数とするのが原則である。交通容量としては,1車線でおおむね1時間当り2500~3200台であり,1日当りの交通量としては,4車線の高速道路で4万8000台程度が計画上の適正限度である。開通当初の交通量が少ないと予想される場合,暫定的に片側車道のみを建設し,対面2車線交通として運用する段階建設の方法がとられることがある。往復の交通を分離する中央分離帯には,高速道路の場合原則として防護柵を設け,車両の対向車道への逸脱を防止し,また必要に応じ眩光防止のために植樹や金網などが設けられる。高速道路の路肩は,故障など非常の場合の駐車が可能な幅をもつのが原則であるが,地形や構造上の理由で狭くする場合には,適当な間隔で非常駐車帯が設けられる。全体の路面幅は,日本の都市間高速道路では4車線の標準で24~25m,都市高速道路で18~19m程度である。ドイツのアウトバーンでは日本よりやや広く,またアメリカでは中央分離帯を広くとるなど全般に余裕のある設計がなされている。以上のほか,本線の付加車線として,長い上り坂で交通量の多い場合に,容量の確保と安全のため,低速で走行する車両専用に登坂車線が設けられる。またインターチェンジや休憩施設など,本線から自動車が流出入する個所には,流出入車の速度調節のため,70~200mの長さの変速車線が設けられる。

(3)線形 高速道路の線形は,自動車の高速連続走行に適するように,連続的で流れるような形に設計される。平面線形は,一般に直線,円,クロソイドの3要素で構成され,曲率の徐々に変わるらせん形の一種であるクロソイドを,補助的にではなく,円,直線と並ぶ主要線形要素として用いることによって,視覚的にも滑らかで運転しやすく,また地形になじみ,経済的で自然環境を損なうことの少ない道路が作られている。円曲線の最小限度は設計速度によって定められ100km/hでは,特別の場合を除いて最小半径460mである。縦断線形は直線こう配と縦断曲線で構成され,それぞれ設計速度により限度が定められている。運転者の視覚に映ずるのは,平面線形と縦断線形とが別々でなく,それが合成された立体的線形であるから,平面と縦断の重ね合せ方も設計上の重要なポイントである。

(4)構造物 橋やトンネルは高速道路の一部として,できるだけ連続性を保つように線形の中に位置づけられる。

高速道路は他の道路とはすべて立体交差で出入制限されているので,一般の道路と異なった施設が必要である。

(1)インターチェンジ 高速道路の出入口,すなわち一般の道路と連絡する施設で,通常5~25kmの間隔で設けられる。その形式は地形や交通量に応じて各種のものが使われるが,日本の高速道路は有料制であるので,料金所を置くのに便利なトランペット型が多い。また高速道路相互を連絡するジャンクションでは,Y型など設計速度を高くできる形のものを用いるのが一般である。

(2)休憩施設 高速道路旅行者のためのサービス施設で,駐車場と休憩園地を基本とした小規模のものをパーキングエリアと呼び,10~15kmの間隔で設けられる。食堂や給油所などすべての施設をもつ大規模なものをサービスエリアといい,駐車場は片側100~200台の容量をもつ。50km程度間隔に配置されるが,しばしば景観の優れた場所が選定される。

(3)バスストップ 高速道路本線路側に置かれる路線バスの停車施設。インターチェンジや休憩施設に併設されることもある。日本の都市間高速道路には数多いが,欧米諸国には少ない。

高速道路は自動車専用道路であるため,歩行者,自転車などとの事故はなく,また立体交差,往復交通の分離,良好な線形などにより自動車どうしの事故も一般道路よりは少ない。走行台キロ当りの事故率で比較すると,高速道路は一般道路に比べて,事故発生率で1/2,死傷率で1/6,死者率で2/5程度である。高速道路の案内標識は,日本ではアメリカと同じく,緑地に白抜文字のものが用いられ,青地の一般道路標識と区別され,またインターチェンジの案内などとくに重要なものは,一連の情報を繰り返し表示するようにしている。これらの固定標識のほか,本線上や料金所などに可変情報板が置かれて,事故その他の情報を随時表示できるようになっており,また事故,故障などの通報のため,一般通行者が利用できる非常電話も本線路側に1kmおきに設けられる。路外逸脱防止のためのガードレール,ガードロープなどの防護柵は,一般道路用より強度の高いものが使用される。道路照明は,都市高速道路では本線に連続照明が設けられるが,都市間高速道路では,インターチェンジその他の施設付近以外は原則として設けられない。そのほかトンネル内も照明,防災施設が完備される。

 高速道路では,路傍修景など,植栽による景観造成にも努力が払われている。沿道の環境を守る対策に関しては,高速道路は出入制限されているので,連続的な遮音壁を設置するなど,一般道路に比してその対策が立てやすい面がある。とくに住居専用地域では,掘割構造にしたり,遮音築堤や植樹帯を設けることなどが行われている。
道路
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百科事典マイペディア 「高速道路」の意味・わかりやすい解説

高速道路【こうそくどうろ】

ハイウェーとも。自動車が安全快適に高速運転できるための自動車専用道路。中央分離を明確にし,交差は立体交差,出入はインターチェンジによる。駐車場,食堂,給油所,洗面所,修理施設などを備えたサービス・エリア,休憩用などのパーキング・エリアを適宜にもつ。高速に適した道路構造,線形(クロソイド),曲率などが配慮されている。ドイツのアウトバーン,イタリアのアウトストラーダ(太陽道路)などが代表的。日本では1965年に名神高速道路,1969年に東名高速道路が全線開通し,高速道路時代が始まった。日本では自動車専用道路を俗に高速道路と呼んでいるが,たとえば首都高速道路阪神高速道路などはスピード制限の点で厳密には高速道路に含まれず,現在は高速自動車国道,本州四国連絡道路などが供用中。→道路
→関連項目第二東名・第二名神高速道路

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「高速道路」の解説

高速道路
こうそくどうろ

自動車の高速交通に供する道路で,出入制限・立体交差・往復交通の分離を原則とした通過交通のための幹線道路。1940年(昭和15)から内務省土木局が重要道路整備事業調査を実施し,43年に全国自動車国道網計画を策定。東京―神戸間の調査が試みられたが,戦況悪化にともなって中断。51年に東京―神戸間の有料道路調査として再開され,57年には国土開発縦貫自動車道建設法が制定され,65年に名神高速道路,69年に東名高速道路が全線開通。同法は87年に第4次全国総合開発計画による約1万4000kmの高規格幹線道路の整備という提唱をうけて改正され,約3920kmの予定路線が追加された。現在供用中の高速道路は,関越・常磐・中央・中国縦貫・東北縦貫・東関東・北陸・北海道縦貫など。2014年(平成26)4月現在約9268kmを供用。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高速道路」の意味・わかりやすい解説

高速道路
こうそくどうろ
expressway

自動車の高速運転を安全に維持するために造られる道路。高速自動車道路。立体交差,中央分離帯の設備,自動車の出入り専用のインターチェンジの設置など,特殊な構造をもつ。 1930年代に造られたドイツのアウトバーンがその先駆である。日本では,高速自動車国道法によって定められた自動車専用道路をさすが,単なる自動車専用道路をも含めていう。

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世界大百科事典(旧版)内の高速道路の言及

【道路】より


【外国の道路】
 1908年のフォードT型自動車の登場や第1次大戦での自動車の活躍を契機に,自動車時代が始まった。ドイツではヒトラーが政権につくや,高速道路(アウトバーン)建設計画を発表し,42年までに3859kmを完成させた。第2次大戦後の東西分割によって西ドイツには2110kmが残されたが,連邦長距離道路法,鉱油税等の一部を特定財源化した交通財政法などに基づいてその整備が進み,高速道路は7500kmにまで達して,戦後の西ドイツ経済の成長を支えた。…

※「高速道路」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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