一般的には収入が支出を上回って剰余が生じた状態、または剰余そのものをさす。会計書類や帳簿上でこの剰余を黒インクで記すことから、この名称が生じた。黒字は、たとえば黒字財政とか黒字決算、黒字家計などというように、あらゆる組織体の収支決算に用いられる概念である。だが統計上常用されるのは、総務省統計局の家計調査においてである。この場合の黒字とは、いうまでもなく家計で実収入から実支出を差し引いた剰余をさす。なおこの場合の黒字には、貯金純増、保険純増、有価証券純購入などの金融資産の純増と、ローンなどの借入金の純減、財産の純増、繰越し純増(翌月への繰越金から前月よりの繰越金を差し引いたもの)などを含んでいる。また、可処分所得に対する黒字の割合を黒字率というが、これから金融資産純増率と土地、家屋の借金純減率を抜き出して、家計分析の手段とする手法がある。一方、赤字は黒字の逆概念であり、支出超過額を意味する。しかし、家計調査において赤字が出ることは事実上ない。これは、家計調査が多くの家計の平均であることと、個々の家計の多くが、赤字の可能性のある場合には事前に支出の削減などを行うという二つの理由による。
[青木 茂]
(上村協子 東京家政学院大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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