改訂新版 世界大百科事典 「アセビ」の意味・わかりやすい解説
アセビ (馬酔木)
Japanese andromeda
Pieris japonica D.Don
山地の風当りの強い乾いた土地に好んで生育するツツジ科の常緑低木で,多くの小枝を分けて密に葉をつける。樹高1.5~4m。葉は互生し,短い柄があって倒披針形,先はとがり,縁に低い鋸歯があり,質が厚く光沢がある。春,細長い総状花序が垂れ,多数の白色の花がつく。花冠はつぼ形で中に10本のおしべがある。葯の背面にとげ状突起があり,蜜を吸いにくる昆虫の動きによって,花粉を散りやすくしている。蒴果(さくか)は平たい球形で径5~6mm,多数の小さな種子がある。本州,四国,九州の暖温帯に分布する。有毒植物で,牛馬が食べると中毒してしびれるので,馬酔木の名がある。有毒成分は主に,アセボトキシンasebotoxinと呼ばれる苦味物質である。昔は葉を煮出して殺虫薬とした。古くはアシビといい,万葉集などの歌に詠まれている。若芽や花を観賞するため,庭木として暖地で広く植えられ,園芸品種も作り出されている。材は堅密で,薪炭材や細工物に利用される。沖縄には花がやや大きい変種リュウキュウアセビvar.koidzumiana (Ohwi) Masamuneがある。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報