精神医学用語。感染症,膠原(こうげん)病,内分泌疾患,代謝疾患などに際してみられる意識変容の一型で,錯乱と困惑をおもな特徴とする。せん妄の前段階や回復期にみられ,意識混濁の程度は軽いが思考がまとまらず,自己の置かれている立場と周囲の状況を理解することができず,一方では,このような障害と思考散乱が意識されるために困惑し,情動的にも不安定となる状態。ときには夢幻様の意識や若干の幻覚を伴うこともある。Amentiaという言葉(ラテン語に由来し,aは否定を,mensは知性,理性を意味する)は,ウィーンの精神科医マイネルトT.H.Meynertによって用いられたため(1890),英語でMeynert's incoherence syndromeともいわれる。最初は,急性精神障害の際にみられる了解の障害と錯乱を意味した。その後,ボネファーK.Bonhoefferが脳疾患と中毒性疾患を除くからだの病気のときに,原因疾患にかかわらず共通の精神症状がみられることに注目し,アメンチアを含むこれらの症状を外因反応型として記載した(1912)。以来アメンチアは,外因反応型を呈する疾患,すなわち症状精神病の特徴的な意識障害の一型とされた。なおイギリスでは,amentiaは精神遅滞を意味し,かわってconfusionという言葉が用いられる。
執筆者:石黒 健夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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