アルコン(その他表記)archōn

改訂新版 世界大百科事典 「アルコン」の意味・わかりやすい解説

アルコン
archōn

アテナイなど多くの古代ギリシア都市の最高級の役人。〈支配者〉という意味の語。アテナイでは王政廃止後に終身職として設置された。やがて3名(バシレウスポレマルコス,首席アルコン)となり,任期10年となる。前683年には任期1年,その後テスモテタイ(法務官)6名が加えられ,全部で9名となる。前594年ソロンの制度により4階級中の上層2階級から選出と規定された。バシレウスは王の後継者として祭儀を,ポレマルコスは軍務を担当。首席アルコンは一般政務をつかさどる最要職で,彼の名が年号とされた。9名のアルコン退任者は審査を経て,アレオパゴス会議終身議員となる。この体制はクレイステネス改革により動揺し,ペルシア戦争期以後10名のストラテゴス将軍)に実権が移る。前487年アルコン選出は抽選になり,前457年には第三階級(農民級)にも開放され実権を失ったが,名目的には国家の最高職であり続けた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルコン」の意味・わかりやすい解説

アルコン
archōn

「指導者」「支配者」を意味し,古代ギリシアの多数のポリスにみられた最高官。アテネではアルコンの制度が前 682年に始って,王政が終ったとされる。前5~4世紀には紀年の名に使われる筆頭アルコン,軍事指揮官たるポレマルコス,祭祀を扱うバシレウス (王) ,司法にあたる6人の法律記録官など9人のアルコンがいた。任期1年で再任できず,最初は名門から選ばれたが,ソロンのとき最富裕層に解放され,前 487/6年には第2の騎士級に広げられくじ引きになった。この頃から直接選挙で重任可能な将軍に実権が移り,アルコンは司法官になり,しかも陪審裁判前の予備審査を行うにすぎなくなった。前 458/7年に選出は第3の農民級まで広げられ,アリストテレスの頃は事実上第4の労働者級の人もなれた。2重くじ引きになり,資格審査が設けられたりしたが徹底民主政下では重要性は非常に低下した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルコン」の意味・わかりやすい解説

アルコン
あるこん
archōn

統治者」を意味するギリシア語で、広く役人一般をさすが、とくに貴族政成立以後のポリスの最高役人(団)の称号として用いられ、アテネのものがもっとも有名。アテネでは、ポリス(都市国家)を代表し、おもに行政をつかさどったアルコン・エポニモス、国家宗教を任としたバシレウス、軍事と非市民関係の司法を担当したポレマルコス、種々の裁判関係業務にあたった6名のテスモテテスの合計9名からなる。任期1年でポリス統治の重責を担ったが、紀元前487年に選任方法として抽選制が導入され、前457年に被選任資格が農民級の市民にまで拡大されてから、しだいに政治上、軍事上の重要性を失い、その地位を将軍に奪われた。

[清永昭次]

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百科事典マイペディア 「アルコン」の意味・わかりやすい解説

アルコン

古代ギリシア都市国家の最高官職。アテナイでは貴族政初期に出現。最初3名で終身職,前8世紀中ごろ任期10年となり,前683年には任期1年。のち定員は9名(筆頭者エポニュモス,祭祀者バシレウス,軍事担当ポレマルコス,および6名の法務官テスモテタイ)となり,民主政発展とともに勢力後退。前487年以後くじで選出するに至って,権能は無力化した。
→関連項目アレオパゴス会議ソロン

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旺文社世界史事典 三訂版 「アルコン」の解説

アルコン
archon

古代ギリシアのポリスの最高官。執政官。「第一人者」の意
ポリスの成立とともに生まれ,民主政時代まで存続した。民主政の最も典型的なアテネでは,初め3人で終身であったが,任期はのち10年から1年(前683年以後)となり,人数は9名に増加した。軍事・行政・司法などの権限を行使し,貴族政治を推進した。ソロンの改革で最上級の富裕者も就任できることになったが,その後民主政が発達し,前487年から“くじ”で選出されるに至って無力となった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アルコン」の解説

アルコン
archon

ギリシア語で「統治者」の意。人々を支配,統率する者。特に前7世紀以後のアテネでは,9人の任期1年の最も格の高い役人をさし,筆頭のアルコンの個人名で,その年の紀年を行った。

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世界大百科事典(旧版)内のアルコンの言及

【アカストス】より

…アテナイがポリス国家となったと推定される前8世紀中葉の人かと思われる。国制が王政から貴族政に移行する過程で王に代わって初めてアルコン(最高官)になった人物と考えられ,古典期の9人のアルコンが就任にあたって,〈アカストスの時のように誓約を行おう〉と誓うところから,歴史的存在の確かな最初のアテナイ人と考えられている。【太田 秀通】。…

【アテネ】より

…メドンの血統をひく人々すなわちメドン家が以後,暗黒時代のアテナイを指導するが,その初期にすでに王政のあり方に重大な変化が生じていたらしい。同じく伝承によれば,このころ王権は三分されて,軍事指揮者としてのポレマルコスpolemarchos,政治の実権を握るアルコンの二つの職が設けられ,王(バシレウスbasileus)には祭祀にかかわる権限が残された。のちのアルコン職の起源をなすこの三つの役職は,当初メドン家によって占められ,任期も終身だったと伝えられるが,このような制度上の変化が,王権の縮小と在地の豪族たちの地位の向上につながったことは想像に難くない。…

【アレオパゴス会議】より

…アイスキュロスの劇《エウメニデス》でも,ここでの神話的な裁判が扱われている。貴族制時代には任期10年,次いで任期1年のアルコン職を経た有力者が,審査を経て終身の議員となったから,貴族政治のとりでとして政治的にも重要な役割を果たしたものと考えられている。しかし政治的事件で活躍した具体的な実例は伝えられていない。…

【ストラテゴス】より

…〈将軍〉と訳されることが多い。クレイステネスの改革後のアテナイでは,10人が部族ごとに(後には全市民の間から)選ばれて,アルコン・ポレマルコスの司令のもとに部族成員の指揮にあたった。前487年の抽選制導入によりアルコン職の地位が低下すると,挙手による選出のうえに重任が許されていたため,この職の比重は増大した。…

※「アルコン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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