改訂新版 世界大百科事典 「イノシット」の意味・わかりやすい解説
イノシット
inosit
イノシトールinositolとも呼ぶ。1871年にJ.F.vonリービヒにより,酵母などの発育促進因子としてその存在が予想され,20世紀に入り,その実体がシクロヘキサンヘキサオールであることがわかった。ビタミンB2群の一員で,欠乏によって脱毛などが起こる。また過コレステロール症に対する医薬品としても用いられる。9種の立体異性体が理論的に可能であるが,天然にはミオイノシット(ミオイノシトール)など4種が確認されているだけである。ミオイノシットはほとんどすべての生物に存在しており,遊離の形で,またリン酸エステルやリン脂質の構成分として見いだされる。サメでは貯蔵エネルギーとして蓄えられているらしい。イノシットは自然界に広く分布し,植物のリン酸貯蔵物質であるフィチンはミオイノシットの六リン酸エステルのカルシウム-マグネシ
ウム塩である。誘導体のフォスファチジルイノシットは特に動物の脳に多量に存在する。
執筆者:柳田 充弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報