日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
イリ(中国、新疆ウイグル自治区)
いり / 伊犂
中国、新疆(しんきょう)ウイグル自治区北西部に位置する副省級自治州(省と同程度の自主権を与えられた自治州)。正称はイリ・カザフ族自治州で、タルバガタイ、アルタイの2地区、クルジャ、クイトゥンなど3県級市、7県、1自治県を管轄する(2017年時点)。人口281万4980(2010)。
遊牧国家ジュンガルとの戦いでこの地の支配権を手に入れた清(しん)朝は、1762年にイリ将軍を置いた。1944年ソ連の援助を受け、イリ、タルバガタイ、アルタイの三区革命が起こり、「東トルキスタン共和国」の独立が宣言されたが、1946年に鎮静化された。中華人民共和国成立後の1949年にイリ専区が設置され、1954年に自治州となった。州内を精伊霍(せいいかく)線(精河(せいが)―クルジャ―コルガス)が通り、コルガス駅からトルキスタン・シベリア鉄道の支線に接続する。ワタ、野菜を産し、地下資源として金、銅、セシウムを豊富に埋蔵する。採掘業と金属加工業が盛んである。
州東部キュネス県のナラティ草原は気候が温暖かつ湿潤で、遊牧文化が息づいている。州中南部トックズタラ県にあるクエルデニン自然保護区は豊富な森林資源を有し、2013年にはユネスコ(国連教育科学文化機関)により「新疆天山(てんざん)」の構成資産として、世界遺産の自然遺産に登録された(世界自然遺産)。
[周 俊 2018年1月19日]