エスニック料理とは、本来「民族料理」の意味であり、各民族独自の料理がこれに該当する。しかし一般には、特定の民族や国に伝わる料理を総称することばとして用いられている。具体的にはタイ、ベトナム、カンボジア、インドネシアなどの東南アジアや、アフリカ、さらにはブラジルなどの中南米の料理をさすことが多い。これらは1980年代中ごろからニューヨーク、東京、パリなどの都市のレストランで流行の先端を行く料理として紹介、提供されるようになり、脚光を浴びるようになった。
エスニック料理の代表ともいえる東南アジアの料理の特徴としては、使用される調味料があげられる。第一に、魚やエビを発酵させてうま味を引き出した魚醤(ぎょしょう)(魚醤油(うおじょうゆ))や蝦醤(かしょう)がある。魚醤はタイではナンプラー、べトナムではヌクマム(ニョクマン)、カンボジアではタクトレイとよばれている。日本料理でいえば、秋田の「しょっつる」、石川の「いしる」が魚醤に近く、タイではカピとよばれる蝦醤は塩辛に近い。第二にトウガラシがあげられる。乾燥したものを使用する日本とは異なり、生を使用する。第三にココナッツミルクがあげられる。これは料理にもデザートにも使用される。
またハーブやスパイスも特徴的で、ほとんど生のまま使用する。ショウガやニンニク、香菜(シャンツァイ、パクチー、コエンドロなどともいう)、レモングラス、バイ・マックルー(コブミカンの葉で柑橘(かんきつ)類特有の強い香りをもつ)などで独特の味、香りを加える。さらにこれらのうま味、辛味、甘味に加え、柑橘類の絞り汁やタマリンド(マメ科の植物)の熟した果肉に水を加えて絞った甘酸っぱい液を使って酸味を加える。
代表的な料理に、タイのトムヤムクン(エビを使った酸味と辛味のきいたスープ)、ベトナムのゴイクン(生春巻)、インドネシアのナシ・ゴレン(炒飯(チャーハン))などがある。
[田中伶子]
『繁盛店メニュー戦略編集部編『エスニック料理』(1988・同朋舎出版)』▽『梁超華著『アジア エスニック料理』(1992・柴田書店)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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