改訂新版 世界大百科事典 「キツネ狩り」の意味・わかりやすい解説
キツネ狩り (きつねがり)
fox hunting
イギリス,アメリカなどで行われる団体猟。イギリスではジェントルマンのスポーツとして知られる。起源は定かではないが,17世紀後半,ロウザー子爵やアランデル卿が,キツネ狩り専用の猟犬フォックスハウンドを飼育しはじめたといわれる。18世紀前半では,ヨークシャーの地主ウィリアム・ドレーパーの名が知られている。しかし,この世紀には,キツネ狩りはジェントルマン階級の特権を擁護した〈狩猟法game law〉の対象にはなっておらず,近代スポーツとしてのキツネ狩りが定着するのは19世紀のことである。その中心人物が,〈イギリス近代狩猟の父〉メーネルHugo Meynellであった。正式のキツネ狩りは,マスターmaster(ホスト)の指揮下に,お抱えのハンツマンhuntsman(猟犬係)と2,3人の助手,それにゲストたちが参加して行う。猟犬は15~20組が用いられ,猟犬係が声と角笛でまとめる。猟はまずミーティングからはじまり,ホストや猟犬係が先導する。獲物が見つかると,犬がうなり声をあげるか角笛で知らせる。仕止めると,尻尾か脚が記念としてトロフィーの代りに与えられ,胴体はその場で犬に食わせる。マスターは赤いコートと白ネクタイ,ベルベットの帽子,ゲストも紅色の上着にトップ・ハットが正装とされる。キツネ狩りの最盛期は第1次大戦前で,戦中からは批判が強まり,第2次大戦後には禁止法案さえ提出された(不成立)。アメリカなどにもキツネ狩りの習慣がひろがったが,イギリスのような特権階級のスポーツにはならず,したがって固苦しい形式もなかった。
執筆者:川北 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報