改訂新版 世界大百科事典 「コトンラット」の意味・わかりやすい解説
コトンラット
hispid cotton rat
Sigmodon hispidus
マウスとラットの中間大の齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類。アラゲコトンラットともいう。アメリカ南部からペルーまでの草原,やぶ地にすむ。体長15~20cm,尾長8~14cm,体重70~200g。キヌゲネズミに近縁(アメリカネズミ亜科)で,吻(ふん)と脚が短く,ずんぐりしている。耳介は短く,半分だけ毛衣外に露出する。体の上面の毛は硬く,黒色で先が淡褐色のため,背は霜降り状,体下面は灰白色。尾は体より短く,毛深い。属名は臼歯(きゆうし)にシグモイド型の模様があるのに由来する。アメリカと中央アメリカでもっとも多いネズミで,丈の高い草やぶの地表に通路をつくってすむ。ところどころにかみ切った草の束が置いてある通路は浅いトンネルに続く。行動圏は直径30m以下,昼夜とも活動する。雑食性で,植物のほか,昆虫,ザリガニ,カニ,ウズラの雛と卵なども食べ,しばしばサトウキビ,サツマイモなどを食害する。年中繁殖し,通路上や倒木の下につくった巣に2~12子(ふつう5~6子)を生む。妊娠期間約27日。子は1週間で巣を離れ,約6週間で繁殖を開始する。野生下の寿命は1年以下。日本でも医学用などの実験動物として飼われる。同属の近似種がアメリカに1種(アリゾナコトンラットS.arizonae),中央アメリカと南アメリカ北部に約6種ある。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報