翻訳|colchicine
ユリ科の球根植物コルキカムColchiciumautumnaleの種子や鱗茎に含まれるアルカロイド。やや黄色みを帯びた白色の粉末で,アルコールやクロロホルムにはよく溶け,水にも溶ける。医薬としては急性の痛風発作の特効的治療薬として知られる。発作の起り始め,とくに数時間以内に治療を開始すれば大部分の患者は激烈な痛みから救われる。しかしこの薬物は痛風以外の関節炎,関節リウマチなどには無効であり,また鎮痛作用も認められない。使用上とくに強く留意すべきは,この薬物が細胞分裂を中途で停止させ,細胞の増殖を妨害する作用をもつということである。このための副作用として最初に現れるのは胃腸障害であり,副作用が現れたならば直ちに使用を停止することが肝心である。細胞分裂の停止は,有糸核分裂の際に染色体を両極に引き離すのに当たって働く微細管が,その構成タンパク質チューブリンの分子の凝集によって形成される過程を阻害するからである。コルヒチンはチューブリンの分子と結合することによってこのような作用を現す。コルヒチンが細胞分裂を停止させ,染色体の倍加を通じて二倍体をつくることは1930年代に発見され,以後その性質を利用して種なしスイカやブドウの育成に利用されている。
→痛風
執筆者:鶴藤 丞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アルカロイドの一種で、ユリ科のイヌサフラン(コルチカム)の種子や球茎に含まれる。淡黄色の棒状結晶で、水によく溶け、光にさらすと黒ずむ。分子式はC22H25NO6で、炭素の7員環をもった構造である。分裂中の植物細胞に作用して紡錘体の形成を阻害し、染色体の倍化をおこすので、細胞遺伝学の研究や育種に利用されている。種なしスイカなどの品種改良はその例である。医薬品としては、痛風の鎮痛剤として古くから用いられてきたが、長期連用により血液障害や脱毛、発疹(はっしん)、胃腸障害などの副作用がみられる。1錠中に0.5ミリグラム含有、1日3~4ミリグラムを6~8回に分けて服用する。
[幸保文治・星川清親]
C22H25NO6(399.44).ユリ科イヌサフランColchicum autumnaleの種子に多く含まれている(約0.8%),トロポロン核をもった中性アルカロイド.黄色の結晶.融点155 ℃.-121°(クロロホルム).低濃度で植物の染色体倍加作用を有し,4倍体を得ることができるので貴重な薬品である.痛風発作の緩解や予防に有効であるが,中枢神経の麻ひ作用を有し,大量では呼吸麻ひによって死に至る.LD50 1.7 mg/kg(マウス,静注).[CAS 64-86-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また机の上で咲かせたものは,花が終わったら植え付けてやるとよい。コルキカムはコルヒチンという有毒成分を含み,かつては痛風などの鎮静剤に利用されたこともあるが,この成分は細胞分裂の際に染色体を倍加させる作用があり,植物の育種に広く利用されている。【水野 嘉孝】。…
…次いで最もたいせつなのは,急性発作を繰り返さないために,基盤となっている高尿酸血症に対する治療である。激痛,発赤,腫張(はれ)の急性期の炎症にはコルヒチンが特効薬と考えられ,1回1~2mgを2時間おきに服用すれば,10時間以内に効果が現れる。しかし副作用があるため最近では他の優れた薬剤にとって代わられ,コルヒチンは用いられていない。…
※「コルヒチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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