コースの定理(読み)コースのていり(英語表記)Coase's theorem

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コースの定理」の意味・わかりやすい解説

コースの定理
コースのていり
Coase's theorem

外部不経済における資源の最適配分について R.コースが唱えた命題大気汚染などの外部不経済の発生に対し,これを内部化する方法として汚染者負担原則がある。しかし取引コストを無視しうるという前提の下では,外部性を内部化する方法として加害者被害者賠償金を払うことにしても,逆に被害者が加害者に補償金を払って汚染を抑制してもらうことにしても,両者が合意する汚染水準は同じになり,いずれの場合にも最適な資源配分を達成することができるというもの。ただしどちらの方法によっても効率性には影響を与えないが,もともとの権利,たとえばきれいな空気を吸う権利の所在は異なっており,所得配分に与える影響は正反対である点に注意を要する。

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知恵蔵 「コースの定理」の解説

コースの定理

所有権が確定されているならば政府介入がなくても市場の外部性の問題は解決される、という主張で、最初に提起したシカゴ大学のコースにちなんでこう呼ばれている。この定理は、普通、所得分配の問題をひとまずおくと、外部不経済()の発生者が被害者に補償金を支払っても、反対に被害者が外部不経済の発生者にお金を払って外部不経済をなくす処置をしてもらっても、パレート最適性を回復できるというように表現される。ただし、この定理が成り立つのは「取引費用」が存在しない世界のみである。しかも、環境問題を例に挙げるまでもなく、今日では、所有権を明確に規定することは極めて困難である場合が多い。その場合は、逆に政府が積極的に介入することが必要になるであろう。

(依田高典 京都大学大学院経済学研究科教授 / 2007年)

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