日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
サザランド(Graham Sutherland)
さざらんど
Graham Sutherland
(1903―1980)
イギリスの画家。ロンドンに生まれ、同地で没。現代イギリス絵画の先駆的地位を占める。ロンドンのゴールドスミス学校に学び、若いころは、ブレークやパーマーの初期の作風の影響を受け、幻想的な作品が多い。虫や木の葉など、無名のものの生命を掘り起こすような作風である。第二次世界大戦中、従軍画家としてイタリアからドイツまで行き、破壊された建物などを記録すると同時に、ボルゴ・サンセポルクロのピエロ・デッラ・フランチェスカの『キリストの復活』に感銘を受け、やがて、コルマールのイーゼンハイム祭壇画の磔刑(たっけい)に衝撃を受け、以後、「茨(いばら)」「荊冠(けいかん)」の連作が生まれ、キリストの磔刑図にとりかかる。1944年ノーサンプトンのセント・マシュー聖堂の『キリスト磔刑図』を代表作とみてよかろう。モームやチャーチルの肖像画も知られる。
[岡本謙次郎]