サバル(読み)さばる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サバル」の意味・わかりやすい解説

サバル
さばる
[学] Sabal

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)サバル属の総称。属名のサバルは本属の現地語名。幹は最小形は2メートル、最大形は16メートル、径は0.25~1.5メートルで、ほとんど幹のないものもある。幹は単一で幹肌に浅い波紋の葉痕(ようこん)が残る。葉は鮮緑色または青緑色、平滑な掌状葉で直径1~3メートル、裂片の先端は2裂する。葉柄は刺(とげ)がなく、葉鞘(ようしょう)は厚くて堅く、叉状に裂けるが自然落下する。花は両性花で肉穂花序をなし、花弁は3枚、白色で舟形雄しべは6本、雌しべは円柱状で柱頭は肥大する。果実は黒褐色または黒色球形、扁心球(へんしんきゅう)形、扁球形など。種子は濃褐色で光沢があり、扁球形で、上面が球面、下面は凹面になり錠剤に似る。1果に1~3個の種子がある。胚乳(はいにゅう)には下底部に錯道質がある。胚は横、横斜め上、横斜め下などに側在する。葉は籠(かご)、帽子、紡績用の繊維材にする。

 北アメリカ西・南部、中央アメリカ、西インド諸島に22種あり、おもなものは次の3種。

(1)アメリカパルミットAmerican palmetto/S. palmetto Lodd. et Schultes 種名のパルミットは小形ヤシの意味。北アメリカのフロリダ、カロライナ原産。幹は高さ2メートル、野生では10~20メートルにもなり、径は40センチメートル。葉は鮮緑色で光沢があり、長さ1.5~3メートル、中軸が長く伸び羽状葉に似た掌状葉で、強く外巻する。花は長さ4~5ミリメートル、雄しべは長さ3ミリメートル、雌しべは長さ2~7ミリメートル。果実は径12ミリメートル、種子は高さ3ミリメートル、径5ミリメートル。栽培温度は最低5℃。

(2)オニサバルpuertorican palmetto/S. causiarum Becc. 中央アメリカ原産。幹は直立し、灰色を帯びた円柱状、高さ15~16メートル、径70~90センチメートルで、サバル属中最大種。葉は径2メートルで、小葉は50~60枚で長さ1.5~2メートル、幅2~5センチメートル。花は長さ0.4センチメートル、果実は球形で径1.3センチメートル、種子は扁平(へんぺい)な球形で径1センチメートル。胚は斜め上にある。庭園樹、並木によい。栽培温度は最低零下3℃。

(3)チャボサバルdwarf palmetto/S. minor Pers. 幹はなく、葉は平面状で長さ0.3~1メートル。実生(みしょう)後5年で開花結実する。長年月に低い幹になる。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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