シンクレティズム(英語表記)syncretism

翻訳|syncretism

デジタル大辞泉 「シンクレティズム」の意味・読み・例文・類語

シンクレティズム(syncretism)

起源の異なる複数宗教要素習合して信仰されていること。神道仏教の習合、道教と仏教の習合、ヒンズー教と仏教の習合など、さまざまな形態がある。諸教混淆こんこう

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精選版 日本国語大辞典 「シンクレティズム」の意味・読み・例文・類語

シンクレティズム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] syncretism ) 哲学や宗教で、さまざまな学派宗派がまじりあって統合されたもの。二世紀および四世紀のアレクサンドリア学派における新プラトン主義的学説、一五世紀のベッサリオンによる東西カトリック教会合同、一七世紀のルター派、プロテスタント諸派、カトリック教会の統合、日本における神仏習合などはその例。諸説混合主義。折衷主義。諸教混交。

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改訂新版 世界大百科事典 「シンクレティズム」の意味・わかりやすい解説

シンクレティズム
syncretism

ギリシア語シュンクレティスモスsygkrētismosに由来する語。本来は〈統合〉を意味し,のち相互に対立・相違する神学上・哲学上の見解を和解・融合させようとする試みを指すようになった。無節操,折衷などしばしば軽べつ的なニュアンスで用いられることもある。具体的にはルネサンス期における東方教会とローマ・カトリック教会の合同の試み,17世紀におけるルター派と他のプロテスタント諸派,ローマ・カトリック教会との合同の試みなどがあげられる。転じて心理学(混同心理)や言語学(融合)の用語としても使用された。日本の宗教では平安時代になって発達した神仏習合の試みがそれにあたる。外来の〈仏〉を本地(原型),土着の〈神〉をその垂迹(変型)とみて,神信仰と仏信仰の融合を説いたものである。またこのような現象は,成立宗教が異地域で大衆化する場合とか,一神教多神教と接触するような場合にも生ずる。たとえばキリスト教世界におけるマリア信仰や,仏教世界における密教やラマ教などにそのような傾向が見いだされ,一般的には信念体系の重層化,並列化の過程としてとらえることができる。
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百科事典マイペディア 「シンクレティズム」の意味・わかりやすい解説

シンクレティズム

異なる文化の相互接触により多様な要素が混淆・重層化した現象をさす。宗教について用いることが多い。例えば日本の神仏習合など。元来異質な神格や教義が混在・融合して一つの宗教体系をなしている場合や,同一社会に複数の宗教体系が併存し人々が状況に応じて関与する場合などがある。シンクレティズムは,人々が外来の要素を取捨選択し,社会的・文化的環境に適合するよう独自の意味づけを加えていくという,創造的営為の産物といえる。
→関連項目ブードゥー

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世界大百科事典(旧版)内のシンクレティズムの言及

【ラテン・アメリカ】より

…グアテマラのマヤ・インディオの居住するチチカステナンゴの町のサント・トマス教会では,公然とマヤ古来の宗教行事が教会の内外で行われている。こうした習合現象syncretismは,インカ帝国の版図であったペルー,ボリビア,エクアドルなどの高地住民の間にも顕著にみられ,人口集中地域でのキリスト教化が集団改宗の形をとらざるをえなかったことに,その原因の一端がうかがえる。強制と集団洗礼からは内実のある改宗を望むことは無理である。…

※「シンクレティズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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