セレン酸(読み)セレンさん(その他表記)selenic acid

改訂新版 世界大百科事典 「セレン酸」の意味・わかりやすい解説

セレン酸 (セレンさん)
selenic acid

化学式H2SeO4二酸化セレンSeO2水溶液に過酸化水素水を加えて酸素を通じながら加熱するとセレン酸の水溶液が得られる。この水溶液を加熱濃縮し1~2mmHgの真空下で160℃以下で蒸留し,五酸化二リンで脱水して結晶化する。溶液の一部をドライアイスで冷却し結晶種をつくって溶液に入れると結晶化は速い。無色,六方晶系,吸湿性結晶で,H2SeO4・H2O,H2SeO4・4H2Oの水和物がある。融点60℃,沸点260℃,比重2.95(15℃),水にきわめてよく溶ける。溶解度1300g/100ml H2O(30℃),∞(60℃)。硫酸と同様に強い二塩基酸であり,水溶液中にはHSeO4⁻,SeO42⁻のイオンが存在する。酸解離指数pKaz=1.95(30℃)。酸化作用ももつ。SO3-H2O系と同様にポリセレン酸(H2Se2O7,H2Se3O10など)を形成する。260℃以上で二酸化セレン,酸素および水に分解する。縮合反応の触媒として用いられ,ナトリウム塩はクロムめっきの耐食性向上のために添加剤とされる。

硫酸塩と同形で,よく似た性質のものが多い。Na2SeO4,K2SeO4,(NH42SeO4など,いずれも無色の結晶で,水によく溶ける。ただし硫酸塩と違ってセレンによる毒性が強い。
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化学辞典 第2版 「セレン酸」の解説

セレン酸
セレンサン
selenic acid

H2SeO4(144.98).セレン酸はIUPAC命名法の許容する慣用名.付加方式命名法による体系名は,構造[SeO2(OH)2]に従ってジヒドロキシドジオキシドセレン(dihydroxidodioxidoselenium).SeO2の水溶液をH2O2で酸化後,濃縮すると得られる.PbSeO4とH2Sとの反応などでも得られる.斜方晶系の結晶.正四面体型構造のSeO4が存在する.Oは互いにO-H…O結合をしている.Se-O1.61 Å.O-H…O 2.61,2.68 Å.融点58 ℃.260 ℃ で分解して,SeO2,H2O,O2になる.水に易溶.二,四,六水和物もつくる.硫酸に似てpK2 1.75(25 ℃)の強い酸で,脱水,有機物を炭化するなどの作用がある.硫酸より強い酸化剤で,HX(X = Cl,Br,I),H2S,ギ酸,シュウ酸,S,Pなどを酸化する.Ag,Au,Pdなども溶解する.「セレン及びその化合物」は毒物及び劇物取締法・毒物,化学物質排出把握管理促進法・第一種指定化学物質,労働安全衛生法・名称等を通知すべき危険物及び有害物.[CAS 7783-08-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「セレン酸」の解説

セレン酸

 H2SeO4 (mw144.97).H2SeO4.セレンの最も酸化状態の高い化合物の一つで,同族硫黄の場合の硫酸に相当する.セレン源としては利用率は低いが利用可能な形態である.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のセレン酸の言及

【セレン】より


[性質]
 おもな同素体として,無定形セレン,単斜晶系セレン,灰色(金属)セレンがある。無定形セレンには,融解セレンの急冷による黒色(薄層では赤色)のガラス状セレンと,亜セレン酸塩の還元による赤色の粉末セレンがある。粉末セレンは二硫化炭素に可溶で,この溶液を72℃以下で蒸発結晶化すると深紅色のα形およびβ形の単斜晶系セレンが生成する。…

※「セレン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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