ソテツ地獄(読み)そてつじごく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソテツ地獄」の意味・わかりやすい解説

ソテツ地獄
そてつじごく

大正末期から昭和初期にかけての沖縄県の経済的窮状をさすことば。主食(サツマイモ・米)を確保することもできずソテツ猛毒を含み、調理法を誤ると中毒死する)を常食とせざるをえないほどの苦境下にあったことからその名が生まれた。第一次世界大戦後の戦後恐慌に端を発する長期不況は、全国の都市と農村に大きな打撃を与えたが、とりわけ生産基盤の脆弱(ぜいじゃく)な沖縄県では深刻な事態が発生した。県の基幹産業である糖業が糖価の暴落により不振に陥り、農業経営を大きく圧迫した。これに負担能力を超える高い租税が拍車をかけ、人身売買、移民・出稼ぎ者の急増を招いた。

 市町村財政も逼迫(ひっぱく)し、吏員教員への給料未払いや金融機関の倒産も相次いでおこった。こうしたなかで沖縄救済論議が活発となり、政府も沖縄振興計画の策定を余儀なくされたが、抜本的な経済振興の達成をみることなく窮状は慢性化し、やがて沖縄戦(1945)を迎えるに至った。

[高良倉吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のソテツ地獄の言及

【沖縄[県]】より

…今日の沖縄研究の基礎は,この時に構築されたものである。
[ソテツ地獄]
 明治・大正の沖縄で,唯一の換金作物は黒糖であり,その生産と価格は沖縄経済全体に大きな影響を与えていた。60万人ほどの人口のほとんどが農業生産に従事しており,農業経営の規模も1戸当り平均耕地面積が約7反,5反未満農家が全体の半数以上を占めていた。…

※「ソテツ地獄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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