改訂新版 世界大百科事典 「タマキビガイ」の意味・わかりやすい解説
タマキビガイ (玉黍貝)
タマキビガイ科の巻貝の総称,またはそのうちの1種を指す。タマキビガイLittorina brevicula(英名periwinkle)は殻の高さ1.4cm,径1.7cmに達する。殻は厚く堅固で螺塔(らとう)は円錐形,体層は大きく,通常各層に2本,体層に3本の強い螺肋があり,その間に細い螺肋もある。殻の色は変化が多いが,多くは灰黒色で肋上に黄白斑がある。殻口は卵円形,ふたは薄く卵形で褐色。北海道から九州,朝鮮半島,中国北部に分布し,潮間帯の岩れき底に多数集合してすむ。春にヘルメット型の浮遊性の透明な卵囊を海中に産み出す。水中にいる場合や干潮で露出中は運動しないが,波しぶきをかぶると活動して餌の岩上の微小藻類をあさる。餌をかきとる歯舌は殻の数倍の長さがある。乾燥に強く,また45℃の高温にも耐える。
タマキビガイ類Littorinidaeは日本産で約50種あり,多くは高潮帯の岩れき上にすむ。本州太平洋岸(紀伊半島など)では外洋に面するところでは最も高いところにイボタマキビガイNodilittorina pyramidalisが,次いで,アラレタマキビガイN.exiguaやタイワンタマキビガイN.millegranaが,またタマキビガイが下方へ順に配列して帯状分布をしている。沖縄では最上部にコンペイトウガイEchininus cumingii spinulosusがすむ。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報