タンタル酸(塩)(読み)タンタルサンエン

化学辞典 第2版 「タンタル酸(塩)」の解説

タンタル酸(塩)
タンタルサンエン
tantalic acid(tantalate)

酸:HxTayOznH2Oと表されるタンタル化合物を,タンタルのオキソ酸とみなしてタンタル酸(塩)とよぶが,実際はTa2O5の水和物と考えられる.水溶性のタンタル酸塩の水溶液に酸を加えるか,TaCl5加水分解すると,白色ゲル状物質として得られる.HCl,H2SO4などに不溶,Na2CO3や酒石酸の水溶液に可溶.[CAS 75397-94-3].塩:タンタル酸塩とよばれるものは,実際はxM2O・yTa2O5nH2Oの組成をもち,多くの固体複酸化物構造をとるので,複酸化物としての命名が正しい.たとえば,タンタル酸ナトリウムNaTaO3は三酸化タンタル(Ⅴ)ナトリウム.【】M3TaO4:たとえば,M = Kは,テトラオキシドタンタル酸カリウム(通俗名,オルトタンタル酸カリウム.複酸化物としての名称は四酸化タンタル(Ⅴ)カリウム).アルカリ金属塩は,強アルカリ性水溶液中では独立した [TaO2(OH)4]3- として存在する.固体のうちランタノイドの塩は,ひずんだ正四面体型のTaO43-をもつが,ほかの金属の塩は複酸化物構造をとっている.【】MTaO3:トリオキシドタンタル酸ナトリウム(通俗名,メタタンタル酸ナトウリム.複酸化物としての名称は三酸化タンタル(Ⅴ)ナトウリム)NaTaO3(251.94)は,Ta2O5と,Na2CO3とを混合加熱溶融すると得られる.ひずんだペロブスカイト型構造で,無色の固体.水に不溶.強誘電体である.LiTaO3(235.89)はTa2O5とLi2OまたはLi2CO3との混合加熱で得られ,チタン鉄鉱型構造をもつ.無色の結晶で,熱に安定である.融点1650 ℃.強誘電体で,高調波発生用レーザー光学材,ピエゾ素子,表面波フィルターなど,電子工学材としての用途がある.[CAS 12034-15-0:NaTaO3][CAS 12031-66-2:LiTaO3]  【】イソポリ酸塩:六タンタル酸塩M8[Ta6O19]が代表的なものである.水溶液中では pH により,[HxTa6O19](8-x)(x = 0,1,2,3)として存在する.[Ta6O19]8- は,正八面体型のTaO6が稜共有でつながった形をしている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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