デフレギャップ(英語表記)deflationary gap

翻訳|deflationary gap

デジタル大辞泉 「デフレギャップ」の意味・読み・例文・類語

デフレ‐ギャップ

deflationary gapから》完全雇用状態で実現される生産水準(総供給)を基準にして、現実有効需要(総需要)が総供給よりも低い場合の差。⇔インフレギャップ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「デフレギャップ」の意味・読み・例文・類語

デフレ‐ギャップ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] deflationary gap から ) デフレ要因インフレ要因を超過した分をいう。所得中からの貯蓄は有効需要を削減する要因(デフレ的要因)となり、投資財政赤字輸出超過は有効需要を増加させる要因(インフレ的要因)となるが、前者後者に対する超過分をいう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「デフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

デフレ・ギャップ
deflationary gap

完全雇用達成するのに必要な有効需要水準に比し現実のそれが低いときの両者の差。正しくはデフレーショナリー・ギャップ。企業倒産や失業増大,所得のマイナスの伸び等の経済不況の原因を,ケインズは《一般理論》(1936)において有効需要の不足に求めた。すなわち,経済の生産技術と資本ストック量を所与として,すべての労働者を完全に雇用したときに得られる財貨の生産額を完全雇用産出高Yfと定義する。しかし市場経済で実際にどれだけの財が生産されるかは,総需要のレベルにかかっている。総需要のレベルは,単純化のために貿易を無視するとすれば,消費C,投資Iおよび政府支出Gの和として決まる。ここでは消費だけが国民所得Y(=財の生産額)の増加関数であり,他の2項目は一定と考えると,総生産額(=国民所得)=総需要が成立するように国民所得の水準が決まる,というのがケインズの〈有効需要の原理〉である。しかしこうして決まる国民所得のレベルが,完全雇用産出高に等しいか,あるいはつねにその近傍にあるという保証は存在しない。もし投資や政府支出のレベルが極端に低ければ,均衡生産額Yuも完全雇用レベルを大きく下回るであろう。このような状況では,かりに国民所得のレベルを完全雇用産出高まで引き上げても,消費の増加は所得の増加より小さいので,総需要は完全雇用産出高を下回るであろう(図参照)。両者のこの乖離(かいり)がデフレ・ギャップと呼ばれ,完全雇用を維持するのに不足している総需要の額と考えられる。

 こうした低い均衡所得から脱出して完全雇用に近づくためには,これまで一定と考えてきた投資や政府支出を増やせばよい。投資は資本の限界収益率を利子率と等しくするように決まるから,利子率が下がれば投資も増加する。そこで金融政策により利子率を引き下げれば投資は増加しよう。また国債の発行により政府支出を増加すれば,それはデフレ・ギャップを縮小することにきわめて有効である,とされた。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

デフレ・ギャップ
deflationary gap

実際の有効需要の大きさが十分ではなく,完全雇用が達成されていない状態,すなわち潜在生産量を有効需要が下回っているときに,その差をデフレ・ギャップと呼ぶ。完全雇用水準の所得を Yf とすると,現実の有効需要水準の Y (消費 C +投資 I ) と Yf (消費 C +貯蓄 S ) の差である。デフレ・ギャップが存在する場合,経済は投資 I =貯蓄 S となる点 E まで縮小し,資本の稼働率は低下し,失業が増大して不況となる。これを避けるためにはデフレ・ギャップを埋めるに相当する有効需要の増加をはかる政策がとられなければならない。たとえば公定歩合の引下げ,通貨供給の拡大などの金融緩和政策や公共投資政策などがそれである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「デフレギャップ」の解説

デフレ・ギャップ

「インフレ・ギャップ」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「デフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

デフレ・ギャップ

インフレ・ギャップ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デフレギャップ」の意味・わかりやすい解説

デフレ・ギャップ
でふれぎゃっぷ

ギャップ分析

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のデフレギャップの言及

【インフレ・ギャップ】より

…そこでインフレ・ギャップは投資と完全雇用時の貯蓄(すなわち,完全雇用産出高-消費)の差額に等しいことになる(図参照)。つまり現在の家計の消費行動を前提として,現在企業が予定している投資を実行すると,完全雇用所得レベルで起こる投資超過額がインフレ・ギャップということになる(インフレ・ギャップがマイナスの値の場合はデフレ・ギャップという)。実際にインフレ・ギャップの存在や,その大きさを知るためには,完全雇用産出高を知ることが前提になる。…

※「デフレギャップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android