精選版 日本国語大辞典 「ドロステヒュルスホフ」の意味・読み・例文・類語
ドロステ‐ヒュルスホフ
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ドイツの詩人。ウェストファーレンの古い男爵家の娘として生まれ,ボーデン湖畔の館で世を終えるまで,外面的には格別の波乱を経験することもなしに,独身のままほぼ平穏な生涯を送った。しかし外部生活が静かだっただけ,内向した思念の奥行きは一層深められ,そこから数々の精妙な作品が生み出された。敬虔なカトリック信者として宗教詩の類も多く書いたが,何よりも,自然の形象をその細部にいたるまで丹念に確かめながら,細密画の風景のように表現する手法が特徴的である。しかも確かめられ定着された風景は,表面の静けさの下に,世界と生の深みの暗い不気味な消息をうかがわせている。その意味で,時代に先んじて象徴主義的な詩風を予告しているといえる。小説《ユダヤ人のブナの木》(1842)も一見自然主義風な悲惨物語だが,厳しく引き締まった描写の底に人生への深遠な観想を秘めた傑作である。
執筆者:川村 二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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