出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
アフリカ北東部、ナイル川のエジプト領南部からスーダン領北端部にかけて位置する人造湖。1971年、アスワン・ハイ・ダムの完成に伴い出現した。名称は当時のアラブ連合共和国(エジプト)大統領にちなむ。ブラーツク(ロシア連邦)、カリバ(ザンビア、ジンバブエ)、ボルタ(ガーナ)などと並ぶ世界最大級の人造湖の一つで、満水時には、水面の面積が約4000平方キロメートル、貯水量は、ナイル川のこの地点での最大年間流量にほぼ等しい1690億立方メートルに達する。しかし、著しい乾燥地帯にあるため、湖面からの蒸発が年間約100億立方メートルにも上り、湖底をつくる砂岩への浸透量も少なくない。季節変化の大きな流量を調節して、洪水防止や可航条件の改良を図る一方、その水を灌漑(かんがい)、発電に利用するほか、湖面での水産資源開発や観光開発も目的としている。しかし、著しい蒸発で灌漑用水の塩分濃度が高まることや、下流への土砂の流下が激減したことなどが新たな問題を引き起こしている。
[田村俊和]
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