ナベナ(英語表記)Dipsacus japonicus Miq.

改訂新版 世界大百科事典 「ナベナ」の意味・わかりやすい解説

ナベナ
Dipsacus japonicus Miq.

山地にはえるマツムシソウ科の大型越年草。茎は高さ1m以上となり,とげ状の硬い毛がある。葉は対生し,羽状に切れ込む。夏から秋にかけて茎の先に球形の頭状花序をつけ,直径1~2cm,基部に線形の苞がある。花序につく小苞は半円形で先は針状にとがる。各小苞の腋(わき)ごとに1個の小花がつく。花冠は筒状,先は4裂し,淡紫色。子房下位で1室,1胚珠がある。本州,四国,九州,朝鮮,中国東北部に分布する。

 ナベナ属Dipsacus(英名teasel,teazel)はヨーロッパ,地中海沿岸地域,さらにアフリカに15種が知られる。ヨーロッパ原産のオニナベナD.fullonum L.ssp.sativus (L.) Thell.(英名common teasel)は小苞の先が鉤(かぎ)状に曲がり,頭状果序をラシャをけばだてるのに使い,一名ラシャカキグサともよばれ,栽培される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナベナ」の意味・わかりやすい解説

ナベナ
なべな / 鍋菜
[学] Dipsacus japonicus Miq.

マツムシソウ科(APG分類:スイカズラ科)の越年草。茎は高さ1~1.5メートル。葉は対生し、羽状に裂け、頂裂片がもっとも大きい。茎、葉ともに刺(とげ)状の堅い毛がある。8~10月、長い花柄の先に楕円(だえん)形の頭花をつける。花冠は紅紫色、筒形で先は四裂する。丘陵から山地の道端野原に生え、本州から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。名は、頭花の形から鍋(なべ)を連想したもの。

 ナベナ属は、頭花は球形または楕円形、総包片および花床の鱗片(りんぺん)は堅い。世界に約15種、日本に本種のみが野生し、栽培種にオニナベナがある。

[高橋秀男 2021年12月14日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナベナ」の意味・わかりやすい解説

ナベナ
Dipsacus japonicus

マツムシソウ科の多年草。アジア東部の温帯に分布し,北海道を除く日本各地の山地の日当りのよいところに生える。茎は高さ1~2mにもなり,上部で分枝して,硬く小さいとげが多い。葉は対生し,羽状に5裂して柄に翼がある。秋頃小枝の先に楕円棒状の頭状花をつける。個々の花は多数あって小さく,先が4裂した筒状で赤紫色をしている。痩果は長さ約 6mmぐらいで上半にわずかに毛があり,8本の稜がある。

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