改訂新版 世界大百科事典 「ナラタケ」の意味・わかりやすい解説
ナラタケ
Armillariella mellea (Fr.) Karst.
担子菌類ハラタケ目キシメジ科の食用キノコ。全世界に分布する最もふつうのキノコの1種で,各地で食用にされるが,また林木,コーヒー,チャ,ゴム,果樹,庭木などの根を侵して木を枯らす病原菌としても広く知られる。この病気をナラタケ病という。キノコは立木,枯れた木の根もと,また切株や倒木などに束になって生え,多数群生する。個々のキノコは高さ5~15cm,かさは直径5~15cm,ほぼ平らに開く。表面はあめ色~淡黄褐色,中央部には細かいささくれがあり,周辺部には放射状のみぞ線がある。ひだは茎に垂生し,はじめは白でのち淡茶色のしみを生じる。茎は上半部はほとんど白,下半部は少しふくらみ黒みをおびることが多い。つばは膜質で白い。胞子紋は白。ナラタケ菌に侵された木の幹の地際部の皮をはぐと,扇形にひろがる白い菌糸膜が見られる。またナラタケは樹皮の下に黒い漆塗りのような光沢がある針金状の根状菌糸束をはわせる。ナラタケ独特の菌糸束で乾湿や熱に耐久力が強く,幾年も生きつづける。ナラタケは世界中で知られるキノコなので通俗名も多く,かさの色が黄色みをおびるのでhoney mushroom(はちみつきのこの意)といわれることが多いが,黒い根状菌糸束をつくるのでshoestring mushroom(くつのひもきのこの意)ともいわれる。ナラタケに似るが茎につばのないナラタケモドキA.tabescens (Fr.) Sing.というキノコがある。食用にもなり,病原菌でもある。
執筆者:今関 六也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報